チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

ブックハンター「HAIKU Vol.2」

2017-01-07 15:37:04 | 独学

 122. HAIKU  Vol.2  Spring (俳句 第2巻) (R.H.Blyth著 1990年1月)

 本書は、71.HAIKU Vol.1 (俳句 第1巻)で紹介しレジナルド・ホーラス・ブライスの(俳句 第2巻)です。

 俳句の初心者で、英語の劣等生である私が、なぜ、再度、英語の俳句の本を紹介するかというと、最近の俳句ブームに乗って、何冊かの俳句の本を読んで見ましたが、私はよく理解できませんでした。

 なぜ、俳句が理解できないかが、最近解かりました。それは以下の4つの理由によるものでした。

 ① 一句の中に正しく読めない漢字がある。

 ② 一句の中の上句、中句、下句の区切りが見えない。

 ③ 季語がどれであるかを理解できない。

 ④ 一句の中に、わからない言葉がある。

 著者のブライスは、英語は無論のこと、日本語、漢文、日本文学、禅についても、超一級の学者です。

 改めて本書を読んでみますと、日本語で俳句を記述し、つぎにローマ字で、読みを記述してますが、このとき、上句、中句、下句に分かち書きし、さらに、単語に分かち書きされてます。

 次に翻訳した英語を記述し、さらに英文で説明されています。今回の第2巻は、新年と春の俳句が紹介されてます。

 俳句は、17文字の中に季語を一つもって、情景を表現し、そこにかもちだされる心情を表現する、世界最小の文学です。さらに、ブライスの尽力によって、俳句は現在日本だけでなく、世界の俳句です。


 本書で紹介されている、芭蕉、蕪村、一茶、子規です。松尾芭蕉は、1644年、三重県に生まれ、「奥の細道」を残して、1694年に50歳で没しました。

 芭蕉の没後、22年の後に、蕪村が大阪にうまれ、江戸に出て絵を修行するかたわら俳諧を学び、京都に住んで、画家として成功する。1783年に67歳で没しました。

 一茶は、1763年、長野県の農家に生まれ、14歳のとき江戸に出て、働きながら俳諧を学ぶ、多くのすぐれた俳句を作りながら、生活が成り立たず、50歳のとき故郷に帰る。1827年64歳で没す。

 一茶没後、40年後の1867年に子規が愛媛県に生まれる。東京の一橋大学予備門でに入り、夏目漱石と友達になる。日清戦争の従軍記者として中国に渡り、帰国し、30歳で結核性カリエスで寝たきりとなり、1902年35歳で没す。

 子規が俳句を学んだ時は、江戸時代から明治時代に変わり、西洋の文化、文明を学ぶことが主力で、江戸時代の古めかしい俳諧は、忘れ去られようとしていた。

 この俳句を私たちの前に甦らせたのは、子規の功績である。年代をたどると、芭蕉は、蕪村も、一茶も、無論、子規を知る由もない。

 蕪村と一茶は、年代的には重なり合うが、蕪村が没したとき、一茶は20歳になっていたが、その時、一茶は俳句と出会ていたかとうかは不明であり、京都と江戸では、出会うことはなかつた。

 蕪村は、一茶を知ることはなかった、ましてや子規など知る由もない。この4人の俳句を並べて読んでいると、お互いに知り合いだったような錯覚に陥ます。


 本書は、大きく新年(The new year)と春(Spring)の二つから構成され、Spring は、さらに、The Season (季節)、Sky and Elements (空と(構成)要素)、Fields and Mountains (野山)、Gods and Buddhas (神と仏)、Human Affairs (行事)、Birds and Beasts (鳥と昆虫)、Trees and Flowers (樹木と花)によって、構成されてます。

 

  それでは、新年の句から、読んでいきましょう。

『 ◎  日の光 今朝や鰯の かしらより    蕪村

   ( Hi no hikari   kesa ya iwashi no   kashira yori )

  A day of light   Begins to shine   From on the heads of the pilchards.          Buson


  ◎  元日や 思えば淋し 秋の暮    芭蕉

   ( Ganjitsu ya   omoeba sabishi   aki no kure )

  The First Day of the Year:   I remember    A lonely autumn evening.            Basho


  ◎  目出度さも 中位なり おらが春    一茶

   ( Medetasamo   chugurai nari   ora ga haru )

   A time of congratulation,—   But my spring   Is about average     Issa


  ◎  元日や 上々吉の 浅黄空       一茶

   ( Ganjitsu ya   jojokichi no   asagi-zora )

   New Year's Day:   What luck!  What luck!   A pale blue sky!     Issa


  ◎  正月の 子供になって 見たきかな     一茶

   ( Shougatsu no   kodomo ni natte   mitaki kana )

   Ah!  to be   A child,—   On New Year's Day!     Issa


  ◎  梅提げて 新年の御慶 申しけり    子規

   ( Ume sagete   shinnen no gyokei   moushikeri )

   In my hand a branch of plum-blossoms,   I spoke the greetings   Of the New Year.    Shiki


  ◎  初芝居 見て来て晴着 未だ脱がず    子規

   ( Hatsu shibai   mite kite haregi   mada nugazu )

   The first theatre of the year;   Coming back, and not yet taking off   Her gala dress.    Shiki


  ◎  初空を 今こしらへる 煙かな    一茶

   ( Hatsuzora wo   ima koshiraeru   kemuri kana )

   The smoke   Is now making   The first sky of the year.    Issa 』


 次に春の中の The Season (時候) より、紹介いたします。

 『 ◎  門々の 下駄の泥より 春立ちぬ     一茶

   ( Kado-gado no   geta no doro yori   haru tachinu )

   At every gate,   Spring has begun   From the mud on the clogs.    Issa

 

  ◎  大佛の うつらうつらと 春日かな     子規

   ( Daibutu no   utsura-utura to   haruhi kana )

   The Great Buddha,   Dozing, dozing   All the spring day.    Shiki  

 

  ◎  あっさりと 春は来にけり 浅黄空     一茶

   ( Assari to   haru wa ki ni keri   asagi-zora )

   Spring has come   In all simplilicity:   A light yellow sky.     Issa


  ◎  あたゝかに 白壁並ぶ 入江哉     子規

   ( Atataka ni   shirakabe narabu   irie kana )

   In the warmth,   The white house-walls   Ranged along the creek.     Shiki


  ◎  のどかさや 浅間のけむり 晝の月     一茶

   ( Nodokasa ya   asama no kemuri   hiru no tsuki )

   Peacefulness:   The smoke from Mount Asama;   The midday moon.    Issas


  ◎  遅き日の つもりて遠き 昔かな     蕪村

   ( Osoki hi no   tsumorite toki   mukashi kana )

   Slow days passing, accumulating,—   How distant they are,   The thing of the past!    Buson


  ◎  等閑に 香たく春の 夕かな     蕪村

   ( Naozari ni   ko taku haru   yube kana )

   Indifferent and languid,   I burned some incense:   An evening of spring.    Buson


  ◎  春の夜や 妻なき男 何を読む    子規

   ( Haru no yo ya    tsuma naki otoko   nani wo yomu )

   A spring evening;   What is the bachelor   Reading?    Shiki


  ◎  草臥れて 寝し間に春は 暮れにけり    几董

   ( Kutabirete   neshi ma ni haru wa   kure ni keri )

   While I shumbered,   O'er-wearied,   Spring drew to its close.    Kito


  ◎  ゆく春や おもたき琵琶の 抱きごゝろ        蕪村

   ( Yuku haru ya   omotaki biwa no   dakigokoro )

   As spring departs,   How heavy   This biwa feels!     Buson 


  ◎  ゆく春や 逡巡として 遅桜     蕪村

   ( Yuku haru ya   shunjun to shite   osozakura )

   Departing spring   Hesitates   In the late cherry-blossoms     Buson   』


  今度は、春の中の Sky and Elements (天文) より、紹介いたします。

 『 ◎  是きりと 見えてどつさり 春の雪    一茶

    ( Krekiri to   miete dossari   haru no yuki )

    As though this were the lot,   A geat deal fell,—   Spring snow.    Issa


  ◎  梅が香の 立ちのぼりてや 月の暈     蕪村

   ( Ume ga ka no   tachinoborite ya   tsuki no kasa )

   The halo of the moon,—   Is it not the scent of plum-blossoms   Rising up to heaven?     Buson


  ◎  草霞み 水に聲なき 日暮かな     蕪村

   ( Kusa kasumi   mizu ni koe nake   higure kana )

   The grasses are misty,   The waters now silent;   It is evening.    Buson


  ◎  春風や 牛に惹かれて 善光寺     一茶

   ( Harukaze ya   ushi ni hikarete   Zenkoji )

   A spring breeze!   Led by  cow   To zenkoji.     Issa


  ◎  春風や 堤長うして 家遠し    蕪村

   ( Harukaze ya   tsutsumi nagoshite   ie toshi )

   The spring wind is blowing:   The embankment is long,   Houses far away.     Buson


  ◎  春雨に 濡れつゝ屋根の 手鞠かな     蕪村

   ( Harusame ni   nuretsutsu yane no   temari kana )

   A hand-ball,   Wet with the spring rain falling   On the roof.     Buson


  ◎  小芝居の 幟ねれけり 春の雨     子規

   ( Koshibai no   nobori nurekeri   haru no ame )

   A travelling show;   The banner is wet   In the spring rain.     Shiki


  ◎  春雨や 暮れなんとして けふもあり     蕪村

   ( Harusame ya   kurenan to shite   kyo mo ari )

   Spring rain;   It begins to grow dark;   Today also is over.     Buson 

 

  ◎  春雨や ものがたり行く 蓑と傘     蕪村

   ( Harusame ya   monogatari yuku   mino to kasa )

   Spring rain:   An umbrella and straw-coat   Go chatting together.     Buson  』


 今回、英訳の句と日本語の句を比較してみますと、以下の三つの点で異なっていることを感じました。

 ① 英語には、"The" や ”A” の冠詞があることです。日本語にはないのですが、ある意味で英語のすぐれた面です。

 ② 英語には、パンクチュエーション(punctuation ,句読点)を、配置して ”や” を ” : ”で詠嘆したり、” ; ”を使って段落を表しています。

 ③ 英語にない言葉を、例えば、蓑を straw-coat という風に、二つの単語を” - ”で組合せて、作っています。

 英語ができる日本人も増えてきたましたが、日本文化を理解していて、日本の文化を世界に発信できる人は、まだ少数のように感じます。 (第121回)

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