一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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今日のことば(21) ― 柳田國男

2005-11-08 00:11:05 | Quotation
「今度といふ今度は十分に確実な、又しても反動の犠牲となつてしまはぬやうな、民族の自然と最もよく調和した、新たな社会組織が考へ出されなければならぬ。」
(『先祖の話』)

柳田國男(やなぎた・くにお。1875 - 1962)
ご存知のように「日本民俗学の父」とでも言うべき人物。
近年、天皇制に関して触れなかったとか、常民のみを扱ってきたとかの批判もあるが、限界はあるにしろ、この人と折口信夫(おりくち・しのぶ。1887 - 1953)を抜きにして、日本民俗に関して語ることは難しい。

上記の引用は、柳田が、敗戦の年、昭和20(1945)年の秋に発表した『先祖の話』の自序にあることば。
それでは、「民族の自然と最も調和した、新たな社会組織」とは、どのような社会組織を彼は念頭に置いていたのであろうか。

少なくとも、このことばは、戦前の中央集権的国家組織を否定していることに間違いはない。「日本の近代化の方向は正しかったか」という疑問まで持っていたと考えることもできるのである。

参考資料 『柳田国男全集(13)』(筑摩書房)
     『定本柳田國男集』第10巻(筑摩書房)