引退馬ネット
馬と人、人と人をつなぐネットワーク。
イグレット軽種馬フォスターペアレントの会が運営しています。
 



このカテゴリーでは、馬の引き取り・繋養に関して知っておいていただきたい情報を掲載していきます。

思いつくままに書いて行きますので、ある程度記事が増えたら引退馬ネットのHPにも整理して転記したいと思っております。

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最近では礼金0円、敷金0円をアピールしている大手の賃貸アパートもありますが、かつては礼金、敷金2ヶ月分というのは当たり前の時代がありました。

礼金は返却されることはありませんが、敷金というのは賃貸物件を出るときに、修繕費などを差し引いて返金される性質のものです。借り主の過失によるものではなく、経年による劣化であれば満額返金されることも少なくないと思います。

この敷金に相当するものが、馬の預託に際して求められることがある「保証金」というものです。

今回は、この保証金について考えたいと思います。

 

乗馬クラブでは、馬がひとたび入厩したら、長期間の預託になるのが一般的なため預託の際に数十万円単位の保証金を求められることは少なくありません。

大都市近郊の乗馬クラブならば月々の預託料だけで10万円以上、調教料や、装蹄代などもろもろの経費がかかり、月の請求が20万円を超えるという場合もあるから、2ヶ月分と考えても妥当な金額でしょう。

乗馬のオーナーは、馬がとても身近で、何かの理由で支払いが滞ってもその間にも馬はエサを食べ、馬房を日々汚し、管理を必要としていることや、馬にお金がかかることもよく知っているので、保証金の必要性を容易に理解できるでしょう。

おそらく、競走馬の世界にはそうした制度が浸透していないと思われます。なぜなら、短期間で移動をすることも多く、馬主となるための資格審査があるということで支払い能力がある程度判断できるからです。

では、引退馬はどうでしょうか?

引退馬の馬主には現役競走馬のように資格審査がないので、誰でも引き取ろうと思えば馬を引き取ることができてしまいます。

多くの場合は、終の棲家として牧場に預けられることが多いはず。しかも、ほとんどの馬主は預かる側にとっては一見さんなのです。

ある日突然電話がかかってきて、

「馬を預かっていただけますか?」

と来る場合が多いのです。当然、預ける人の職業も、年収も、背景も、預貯金がいくらあるかなんて、まったくわからないのですが、たぶん、仕事や年齢くらいは聞かれても、

「貯蓄の残高証明を出してください」

「家は持ち家ですか?」

「住宅ローン残高証明のコピーを下さい。その他のローンは?」

「退職金はいくら出る予定ですか?」

「生命保険には入っていますか?」

なんてことは聞かれないでしょう。だいたいは、

「馬は牡ですか、牝ですか?」

「馬の年齢は?」

「どこから来るの?」

と、聞かれるのは馬のことが中心で

「はい、いいですよ」

ということになっている…と思います。一頭でも多く預かりたいという心理も働くので判断も甘くなります。世間の一般常識からすると、恐るべし引退馬業界。当然、預託料の取りっぱぐれの話を耳にします。

それに耐え、馬の面倒を看るのが愛馬精神と考える人がいたら、間違いです。いえ、牧場に余裕があるならいいんです。でも多くの場合、そのしわ寄せは、他の馬たちに行くのです。栄養失調などの虐待につながりうるし、引退馬の馬主は信用できない…と思われ、結果として引退馬の繋養促進を妨げるのですから。

誤解のないように書きますが、引退馬の繋養に水をさすつもりは毛頭ありません。引退馬の繋養によって人と馬が不幸になることを避けたいだけです。そのための引退馬ネットです。

もし、「預託料2ヶ月分の保証金が必要です」と言われ、それがポンと出せる余裕がないのであれば、最初から一人で馬の預託するのは無理です。

単純に考えて下さい。

馬が8才だとしましょう。馬の寿命が30才で、余命22年として…
預託料月6万円だけでも、年間の負担額にしたら

6万円×12ヶ月×22年=1588万円

かかるんです。いや、そのほかに、消費税だって、削蹄代だって、獣医費代だってかかってくるのです。最初から自転車操業で払っていける金額ではないことが明白です。

現役ばりばりで仕事をしているうちはいいですが、リストラにあったら?定年になったら?

そうなったときに、責任を持って馬を手放す(安楽死を含めて)決断ができる馬主ならいいのですが、引退馬を引き取る人は往々にして、動物に対してそのような決断ができません。そして結果、ずるずると滞納が続く…

(ちょっと話はそれますが、そういう意味で、マイネルスティングの前馬主さんの引き際は見事でした。心から敬意を払いたいと思います。だからこそ、その思いをみんなが引き継げたのかと…興味のある方はこちらを読んで下さい。)

もとは、なんとかして命を助けたいという熱い想いも、結局は預託先の善意と犠牲の上に成り立っていたら、きっと馬主の人生も幸せではないでしょう。

滞納が始まったら、まずは保証金があれば2ヶ月の猶予があります。その間に預かる側は契約内容に記載されたことを、粛々と行う(処分が不憫なら、譲渡先を探すということを含めて…)ことができます。

牧場さんの希望により、引退馬ネットを通して預託料を支払う場合や、「○○の会」という形で会費をとりまとめ、預託料の支払いの代行をする場合は、引退馬ネットでは預託料2ヶ月分の保証金をお預かりしています。

個人で預託する場合でも、牧場によっては保証金が必要となります。

たとえば、鹿児島のホーストラストさんでは、預託料が3万円と安いので、保証金は6ヶ月分18万円です。(預託を考えている人は、月々の預託料だけでなく保証金を準備して下さい。)

引退馬の預託にこそ、保証金制度が普及してほしいと思っています。養老馬を預かる牧場さんにはぜひ、考えていただきたいことです。もちろん、契約書とセットで…

最後に、もう一度確認します。保証金というのは、預託契約を終了するときに戻るお金です。それは馬主の必要最低限の身元の保証をするものであるということをご理解下さい。それだけ、預託先は大きなリスクを背負っているのですから…

<文責:引退馬ネット・加藤>

保証金は、獣医費の精算や未払いの預託料や経費、ご遺体の処理等、馬主が本来負担するべきものに充当され、全額払戻しになるとは限りません。いずれにしても、これらの経費は別途請求され支払わなければならないわけですから、結果的には全額戻るのと同じになります。

次回は、馬を引き取る人のための生命保険についてです。



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