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博多陥没事故~ふたたびナトム工法で

2017-11-11 15:54:18 | 博多駅前陥没

先日、あの衝撃的な映像がふたたび流れていた。博多駅前道路が陥没した日は、ちょうど山口で母の介護をしていたが、あれから早1年。高島市長は事故原因を解明するため、事故直後、国に第三者委員会(検討委員会)の設置を依頼(というか丸投げ)。検討委員会は、今年3月の最終報告会で、事故原因について、高い地下水圧やトンネル上部の岩盤が想定より薄かったことなど複合的に作用し、陥没に至ったと結論付けた。安全性に対する認識の甘さを指摘しつつも、予見は困難だったとして、福岡市や大成建設JVへの責任は言及しなかった。結局、誰も責任を取らないまま、ふたたび工事は再開されることになる。

福岡市は、今月7日、「福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会」を開催し、トンネル再掘削について、委員会が提言した「人工岩盤掘削工法」を採用すると発表した。NHKは例の映像を流しながら、再掘削は「人工岩盤掘削工法」と報じた。だが、これはおかしい。というのも「人工岩盤掘削工法」は、トンネル上部の軟弱な地盤を強化して掘削することを意味するもので、トンネル本体の掘削工法ではない。怪訝に思い、市が公表した資料を見ると再掘削工法については、非開削工法を前提として討議したとある。つまり、これは「ナトム工法」で再掘削するといっているようなものだが、「ナトム」という文字はひとつもない。

人工岩盤は、地表から機材を地中に差し込み、埋め戻しに使った流動化処理土とトンネル上部の岩盤層の間にある砂層の周辺にセメント系固化剤を高圧で噴射してつくる。トンネル内部に溜まった地下水や土砂も含めて一体的に地盤改良することで、地盤強化と止水効果を確保する。その上で、トンネル本体は、事故前と同様「ナトム工法」で掘削すると、地元紙(西日本新聞)は伝えている。(下図参照)

陥没事故は「ナトム工法」で掘削中に起きた。それで福岡市は意図的に「人工岩盤掘削工法」とだけ明記し、「ナトム」を封印したのではないだろうか。”都合の悪いことは隠す”が常習化している高島市政だから、あり得ない話ではない。谷本大阪大名誉教授(トンネル工学)は「市民の不安は当然。再開にあたっては、専門家を交えた市民目線で分かりやすい公聴会のようなものを開くべきだ」とコメントされている。まさに仰せの通りで、福岡市は再掘削の前にきちんと説明すべきだろう。市民の命がかかっているのだから。

 

《追記 2017.11.14》

本日(14日)、土木専門誌「日経コンストラクション」に、「博多再掘削、なお残る“風化岩”への不安」記事が掲載されている。福岡市が再掘削工法に事故前と同じNATMを採用したことについて、「事故から1年を目前に控えたタイミングで決定した計画は、事故で浮かび上がったトンネル崩落のリスクを潰せているかのように見える」とある。(まさに的を得たご意見だ)さらに、不均質な地層の地盤改良には不安が残ると指摘している。福岡市は強気だが、やはりリスクはあるようだ。中身については、後日、詳しく報告したい。

 

 

陥没は一番奥、重機のあるところで起きた 現在、ここは地下水で満たされている(写真は事故前日、調市議が撮影したもの) 

 

 

 

 

 

建設技術専門委員会、樗木委員長(九大名誉教授)の記者会見 (11月7日 NHKニュースウオッチ9より)   

 

 

 

 

 

西日本新聞が作成したイメージ図 コンクリート吹付部分が「ナトム工法」

 

 

 

 《関連記事》

陥没事故前の工法維持 福岡市地下鉄延伸、地下に人工岩盤 市専門委が結論(西日本新聞 2017.11.8)

追跡:博多陥没1年 再掘削「事故前と同法」 早期工法決定に異論も(毎日新聞 2017.11.7) 

 

《関連資料》

福岡市交通局HP。福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会開催結果について(29.11.7)