虚言回し

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オルビス 後2日 夢から覚めて

2005-08-24 | ジャクム討伐。
 病院を訪れた嵐太郎と支馬は風夏が目を覚ましたと聞いてまずはホッと安堵し、それからその足ですぐに病室に向かった。
 病室では、朝もやに霞むオルビスの町並みを、ベッドに半身を起こした状態でぼんやりと眺めている風夏がいた。良牙の姿は無い。
 聞くと状態はひとまずは良いらしい。意識が覚醒した後は、オルビス特製の魔法薬で一気に回復したそうだ。まだ本調子ではないようだが、風夏の顔には無理の無い明るさがちゃんとあった。
 支馬は「突然倒れたりなんかして本当に大変だった」とか「痙攣するお前にグーで殴られた」とかあれこれ文句を言いながら友人の回復を喜んだ。二人は久しぶりに会った旧友のように言葉を交わした。
 嵐太郎はそんな二人を微笑ましげに眺めていたが、漫才のような会話から、いつの間に口喧嘩へと変化するに至り、慌てて二人の間に割って入ることになった。
 しかし、一応の回復を見せた風夏ではあるが、オルビスの空気は風夏の体には悪く、できればすぐにでもエリニアに帰るべきらしい。支馬はその事実に驚きと不満をあらわにしたが、命に関わる事であるし、引き止めるわけにもいかないと理解した。
 ただ、意外だったのは風夏である。
 あれだけ奪還作戦についていこうと頑張っていたのである。もっと落ち込んだり、どうしても残りたいとごねるかと嵐太郎は思ったが、良牙からその事実を伝えられた風夏は、意外にも素直に帰るつもりであるらしかった。
 支馬はそれでいいのかと問い詰めたが、風夏はいいんだと言うばかりである。
 支馬はどうも釈然としなかったが風夏が納得しているなら反対する理由も無い。
 
 船の手配は良牙が済ませてくれるらしい。
 出港は今日の昼である。支馬はすぐに部屋に帰り、風夏の分も荷物をまとめ始めた。

 
 間もなく日が中天に差し掛かろうとしていた。
 白く真新しいオルビス港の桟橋には、この2日間の夜を徹しての作業により修理を終えた飛空船が浮かんでいた。
 よく見れば食堂やラウンジのガラスは無く。代わりに他の部屋と同じ様に木製の壁に丸窓と言う装いになっていた。オルビスでは完璧な修復は不可能だったのだ。もっとも、エリニアのドックでだって2日間で修理は出来ないだろうが。
 飛空船にはオルビスからビクトリア島に運ばれる貨物が既に運び込まれ、後は乗客を待つのみである。

「じゃ、もうそろそろ行くね兄ちゃん」
「稽古つけてくれてありがとうな」
 港のロビーで、麦藁帽とカウボーイハットの二人の少年が船に向かうのを、嵐太郎と良牙が見送りに着ていた。
「トレーニングサボっちゃだめだぞ」
「分かってる分かってる。次に会うときにはびっくりする位強くなってるから覚悟しといてよ」
 拳を突き上げて支馬が嵐太郎の言葉に答える。嵐太郎は軽く笑う。
「風夏。もう無茶はするなよ」
 良牙が若干心配そうに風夏に声をかける。風夏は頷いて、
「うん。無茶はしない。だから、あれ約束だからね」
「ああ」
 良牙がやや苦笑気味に頷くのを見届けると、風夏は「じゃ!」と言って搭乗ゲートに向けて走り出した。うわバカ走るなと良牙がはらはらした様子で叫ぶ。支馬はよし競争だとこちらも一息に駆け出して風夏の後を追う。すぐに二人の姿は見えなくなった。
「だ、大丈夫かな。あんな事があって昨日の今日じゃ、また発作とか…」
 嵐太郎が一筋の汗をかきながらつぶやく。
「まぁ、いきなりどうこうってことも無いだろけども…」
 本当、2年前くらいなら全く想像できなかった姿だ。あの細っこい弟があんなに元気に走り回るなど。しかし、あれが今の風夏なのだ。
 やれやれと頭をかく良牙に嵐太郎が質問した。
「ところで、なんて言って説得したんです?支馬の話じゃそうそう諦めそうに思いませんでしたけど」
 それが今朝からずっと不思議だった。帰れと言われて素直に帰るようなら、昨日の事件は無かったはずなのに。
 良牙は別になんでもないという風に答える。
「あいつの横顔を眺めながら、一晩中考えたんだよ。風夏が何を考えてるか。で、分かった。あいつは焦ってるんだろうと思ったんだ。だから、一つ約束をした」
 嵐太郎がオウム返しに聞く。
「約束?」

「――ってなんだったんだ?」
 桟橋へと続く長い通路で支馬が質問した。
「ん、ちょっとね」
 すまして答える風夏に支馬が唇を尖がらせる。風夏の顔を覗き込んで更に聞く。
「だからちょっとってなにさ。あの約束って何のことだよー」
 強い日差しと柱の影が交互に二人の姿を照らす。
 支馬から顔を逸らすと、風夏は足を速めて支馬の少し前を歩くようにした。
「別になんでもないけどね。…いつか僕の病気が完治したらさ、一緒に冒険しよう、って。それだけ」
 そう言って背負った荷物を軽く背負いなおす。そして、かぶった麦藁帽の麦の飛び出した渕の部分を弄る。その手の陰からからチラと見える顔は嬉しそうに微笑している。支馬の位置からはその顔は見えない。
「それが…約束?」
「そう」
「まさかそれで納得して帰る気になったとか?」
「別に」
「別にって」
「だってここにいたら心臓によくないもん。仕方ないじゃん」
「そりゃそうだけど」
「さあ!船が見えた!あそこまで競争!!」
「あ、おい!」
 また突然駆け出した風夏を支馬が慌てて追いかける。
 そうだ、今はまだ早い。いつかちゃんと一人前の冒険者になって、その時には並んで兄ちゃんと冒険をするんだ。僕が病気を完治して一人前になる頃にはエルナスは冒険の一大スポットだろう。広い大陸に散らばるオシリス文明の遺跡を、天然の洞窟を、お宝や貴重な好物などを求めて探索するんだ。
 それは心躍る想像だった。
 兄と一緒に冒険するのはさぞ楽しいだろう。しっかり勉強して、兄も知らないようなオシリス文明の知識を披露したら、兄は驚くだろうか。ああ、もちろんその時には、隣にこのいつも元気で頑丈な親友がいて…。
 と、
「あれ?」
 風夏が突然ブレーキをかける。
 支馬が背中に衝突しかけた。
「は、走ったり止まったり意味わかんないって…」
 支馬の文句を無視して、風夏は支馬の顔をまじまじと見つめ、言った。
「なんで支馬も帰るのさ」
「は?」


 港から庁舎方面に向かう大通りを良牙と嵐太郎は歩いていた。すると、 
「おーい!」
 聞こえるはずの無い声に呼び止められて、二人は慌てて振り向いた。
「支馬!何で戻ってきてるの!?」
「まさか!また風夏に何か!?」
 嵐太郎と良牙が口々に言う。
 支馬は慌てて両手を振って否定する。
「いや、違う違う。風夏はちゃんと船に乗ったよ」
「じゃあ何で…」
 嵐太郎の支馬は元気よく答えた。
「俺、残る事にしたから!」
 え、と二人が驚く。
「だってほら。俺別に健康体だし。稽古つけてもらったおかげですげぇ強くなったし。ってか、あのクリムゾンバルログみたいに雷飛ばしてくるようなモンスターとも戦って無事だったし。元々エルナスの雪踏むまでは帰らないつもりでいたし」
 一気にまくし立てる支馬に、嵐太郎も良牙も口をポカンと開けているしか出来ない。
「だから、奪還隊には一緒についていくから!よろしく!風夏の兄貴と」
 嵐太郎に真っ直ぐ向き直り、
「師匠!」

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ばtn (やってはくれないと分かってても)
2005-08-28 01:47:47
Love BatonLove Baton



●初恋はいつでしたか?



●今まで付き合った人数を教えてください



●今好きな人はいますか?(いる人は)好きなところは?



●好きな人とデートで行きたい場所はどこですか?



●好きな人と一緒に観たい映画は?



●こんな人は絶対無理!っていうのありますか?



●恋愛対象年齢は何歳~何歳ですか?



●浮気は許せますか?許せる人は、どこまで?



●同棲ってしてみたいですか?



●あなたが愛情を感じた行動は?



●愛と恋の違いはなんだと思いますか?



●一番長く続いた恋愛は?



●付き合ってみたい芸能人は?



●究極の選択です。 一生、人を愛することしかできなくなるのと、人から愛されることしかできなくなるのと、どちらかを選ばなければならないとしたら、どちらを選びますか?



●バトンを渡す人

Unknown (シルヒト)
2005-08-28 02:15:36
よく分かっていらっしゃる。
livephonechat@gmail.com (Phone Sex )
2010-12-15 21:15:43
Thanks first for providing with this information. God bless you my dear…
willisbruce.willis@gmail.com (Phone Sex)
2011-01-20 13:43:10
Thanks for your information man… I am in front of you after a long time…
Thanks for everything.