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【0908/223:衆院選】一票の足元:後継者不足/担い手育成、ビジョンを(朝日新聞)

2009-08-28 23:23:49 | Weblog
◇集落営農組織 825

 高島市今津町椋川地区は福井県境の山あいにある。かつては豊富な水を生かした米作と炭焼きを生業とし、今も減農薬の米が自慢だ。だが、1975年に200人超だった人口は、現在62人。その4分の3近くが65歳以上という「限界集落」だ。
 地区では30年ほど前から機械や倉庫を共有し、農作業を分担する集落営農に取り組んできた。だが、経理や税金処理の一元化の必要性が高まり、00年に有限会社「椋川農産」を設立。地区全体の水田約23ヘクタールの半分ほどを同社が管理する。
 県の集落営農の組織数は825(08年)。全国で最も多い。
    ◇
 国は07年から集落営農を促進している。生産量に応じて農作物ごとに補助金を出してきた農政を大転換。「戦後最大の農政改革」とも呼ばれる新たな方針は、今後の農業の担い手は大規模農家や一定の条件を満たした集落営農とし、手厚く補助金を分配することにした。大規模化により収益を安定させ、次世代の担い手を育成するのが狙いだ。
 農林水産省によると、農地の広さや経理の共同化などの条件を満たした08年度の全国の集落数は1万3436。2年間で1割以上増えたことになる。
 県は89年、国に先駆けて集落営農の促進事業に着手し、機械購入の補助などをしてきた。兼業農家率の高さなど、県農業の特徴が背景にある。県農政課の担当者は「コスト面だけでなく、川の掃除や農道の整備など、個人では解決できないことを集落で取り組み、共同体意識を高める意味もあった」と話す。
 だが、集落営農でも変わらない問題が後継者不足だ。椋川農産社長の井上四郎太夫さん(69)は「今は何とかみんなで土地を守っているが、いつまで続くか」と言う。
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 今年4月、椋川農産に集落の外から通う初めての常勤社員が入ってきた。大津市北比良の安田達成さん(32)。7年間勤めた大手運輸会社のトラック運転手を辞め、湖北町の農家の育成施設で1年間、農業と建築の基本を学び椋川農産に就職した。
 安田さんは平日、車で40分かけて出勤し、朝から夕方まで田の雑草刈りを引き受ける。それほど農業に関心が高かったわけではない。運転手時代から収入は3割減り、生活費はぎりぎりだ。でも、体をボロボロにしながら運転していた時より気持ちにゆとりがある。「地に足がついている感じがする。農業って、いいですよ」と笑う。
 稲作は9月下旬に終る。それから安田さんにどんな仕事をしてもらうか、井上さんは悩む。安田さんは林業の仕事を希望するが、地区内で取り組む人は少ない。「せっかくの若い後継者。農作業だけでなく経理なども担ってもらいたい」。そう思う反面、元気がなくなっている地区の農業を任せていいのか、とも思う。
 井上さんは言う。「農家に何をしてくれるか、という政策もいい。でも本当にほしいのは農政をこんなふうにするんだっていうビジョンだ」 (高久潤)
=おわり
【キーワード】県の集落営農ビジョン対策促進事業:滋賀では主な所得が農業である農家の比率が5.8%で全国最下位(05年)、農地に占める水田の比率が92%で同2位(08年度)と、農家の大半を占める兼業農家の多くが、取り組みやすい稲作を営んでいる。小規模農家が個別に耕作機械などを買いそろえる傾向が強く、県は生産コストの削減が不可欠として、89年度から国に先駆けて集落単位で機械や倉庫の共有が可能になる集落営農の促進事業を始めた。

【関連ニュース番号:0908/202、8月26日;0908/175、8月23日】

(8月26日付け朝日新聞)


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