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【1012/125:動物園】収支ギリギリでも愛情いっぱい 移動動物園の堀井園長

2010-12-14 23:37:32 | Weblog
【写真:動物たちの世話をする堀井さん=守山市岡町】

 県内唯一の動物園は、常設の展示場を持たない。要望があればどこへでも出向く神出鬼没の「堀井動物園」。事務所は守山市にある。虎など大型の肉食獣も扱い、数ある移動動物園の中でも本格派だ。少子化で全国的に苦しい経営を強いられる動物園が増えるなか、滋賀で動物園の灯を守り続ける。

 JR守山駅近くの住宅街の一角。屋根に巨大なカメレオンの模型が載った風変わりな建物が堀井動物園だ。猫やウサギなどの小動物から、カンガルー、フラミンゴ、ピューマや虎まで。守山市内の倉庫2棟、野洲市内の飼育場に集結した動物は300~400種。県に動物取扱業(展示)の認可を受け、堀井嘉智(よしのり)園長(47)が3人ほどのスタッフとともに世話をしている。

 幼いころから動物園の園長になるのが夢だった。小学5年のとき、偶然立ち寄った京都のペットショップで、世話するのを手伝うと動物を譲ってもらえるのがうれしくて、通い詰めた。自宅の軒下や物置で飼い始めた動物はみるみる増えた。

 移動動物園を立ち上げたのは、19歳のころだ。動物を輸入する貿易商のもとでアルバイトして、給料がわりに譲り受けた動物を集め、一人で始めた。動物たちをマイクロバスに積み、学校行事やイベント会場に出向く。30~70種の動物とふれ合えるコースのほか、人気動物との記念撮影などさまざまなプランを用意。軌道に乗るまで苦労したが、今では県内外を忙しく飛び回る毎日だ。

 どんな仕事でも断らない。「人気のアルパカが見たい」「カンガルーはいませんか」。手元にない動物はどんどん引き入れた。

 どんな動物でも受け入れを断らない。「面倒をみて」。堀井さんによると、高齢になったり、障害を負ったりした動物は、普通の動物園では役割を終える。でも、「目が見えなくても、足が折れてても、動物は動物。生きてることが好きなんや」と愛情を注ぐ。

 当初30種ほどだった動物は、10倍以上に増えた。飼育スペースを広げているが、なかなか追いつかないという。

 動物にふれ合う子どもたちを見守ってきて、最近感じるのは、ウサギなどの小動物でも怖がる子が増えたことだ。「生きた動物に触れる機会が減っている。おりや柵で仕切られ、眺めるだけの動物園じゃなくて、ふれ合える動物園を作りたい」

 でも、動物園の維持はたいへんだ。えさ代や光熱費だけで毎月約70万円かかる。「収支はいつもギリギリ」と言う。

 自転車操業の日々だが、常設の大きな動物園を持つ夢がある。10年ほど前、2300平方メートル余りの土地を買ったが、地元住民の反対もあり開設できなかった。それでも自宅には、理想の動物園の構想図を大事にしまってある。「夢は捨てない。おかげで毎日が楽しいから」。動物に夢をもらった経験を、今の子どもたちにも伝え続けたいと思っている。

■景気低迷で大半は経営難

 動物園が全国に広がったのは、戦後復興が進んだ1950年代。東京・上野動物園が移動動物園を開いたのをきっかけに、各地で造園が進んだ。「当時は、造ればもうかった」と、帝京科学大学の石田教授(動物園学)は言う。

 しかし、90年代以降、動物園は低迷期に入った。日本動物園水族館協会によると、加盟する約90園のうち約8割は、地方自治体が経営。年間予算のうち入園料で賄えるのは約3割で、残りは公費で負担しているという。景気低迷で自治体は財政難に苦しみ、大半の動物園は経営に苦しんでいる。(加藤藍子)

(12月14日付け朝日新聞・電子版)

http://mytown.asahi.com/areanews/shiga/OSK201012130168.html

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