BSE&食と感染症 つぶやきブログ

食品安全委員会などの傍聴&企業・学者・メディア他、の観察と危機管理を考えるブログ by Mariko

【新検査その2】BSEの感度のよい新検査開発についてのご紹介

2006年03月11日 09時22分12秒 | 【最新】新検査情報
BSE(狂牛病)新検査ニュースの前に2つの重要な最新トピックを。。

★英国が潜在的なvCJD感染患者がもっといるのではないかと死後検査を強化する内容、
★現在のWHOの診断基準では患者見落としがあるので、基準を見直すべきというランセットの新論文です。

英国 一層の死後vCJD検査の審査へ---
公衆衛生リスクは検査拒否権を無視できるほどに高いか

http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/06030101.htm
日本研究者 WHOのvCJD診断基準見直しを提言 vCJD患者見逃しを防ぐため
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/06031002.htm
これと、今後、OIEのコード改正についての問題点をUPする予定ですが、それより先に、BSE検査に関する、感度のよい新検査開発について、最近、3つほど報道されておりましたので、それを先にまとめてご紹介いたします。

■【検査】BSEの感度のよい新検査開発についての記事

◆その1:岡山大学 中西一弘氏チーム  
検査時間を10分の1に エライザ法、手順短縮 (感度も向上)
http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20060221010039171.asp
 牛海綿状脳症(BSE)検査などに幅広く使われている免疫反応を利用した「エライザ法」での検査を従来の約10分の1の時間でできる方法を、中西一弘岡山大教授(生物工学)と日本学術振興会の熊田陽一博士研究員(同)が開発したと21日、発表した。
 中西教授は「速く、確実に診断できるので、BSE検査への応用を目指したい」と話している。
 エライザ法は、測定対象となる抗原と抗体との反応を酵素を利用して測定する。微量でも分析でき、環境汚染や食品の分析などに使われている。
 中西教授らは、検査に使うプレートの材質を工夫するなどして、従来は数段階に分けて進めた手順を1回の操作で終えるなど効率的な方法を考案した。インスリン濃度などの測定実験で、従来数時間から1日程度かかっていたのが大幅に短縮され、感度も上がったという。(共同通信社)


BSE:全頭検査の分析時間、10分の1に--岡山大教授らが開発
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/disease/news/20060222ddm003040097000c.html
 岡山大工学部の中西一弘教授(生物機能工学)らは21日、BSE(牛海綿状脳症)の全頭検査で異常プリオンの有無を調べる「エライザ法」について、分析時間を現在の約6時間から10分の1程度に短縮できる方法を開発したと発表した。
 中西教授によると、エライザ法は体内に侵入した異種たんぱく質に反応する抗原抗体反応を利用。BSEの場合、検査用プレートに固定した抗プリオン抗体に検体を結合させ、酵素の反応で発色させて異常プリオンの有無を判定する。新方式では、抗体などを固定するプレートを疎水性素材から親水性のものに変更。従来、親水性素材では固定できなかったが、アミノ酸が結合したペプチドを「のり」として間に挟むことで解決した。毎日新聞 2006年2月22日 東京朝刊


免疫測定法で新技術=「BSE検査簡略化も期待」-岡山大
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060221-00000184-jij-soci
(時事通信) 2006年02月21日23時10分(リンク切れちゃいましたね)

◆その2 北海道立畜産試験場
ホタルの酵素でBSE迅速検査 道立畜産試験場が開発 2006/02/20 北海道新聞
http://news18.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1140413035/
 【新得】道立畜産試験場(十勝管内新得町)が、牛海綿状脳症(BSE)の
原因とされるタンパク質の一種の異常プリオンを、現行の検査より1時間以上
早く検出する方法を開発した。全頭検査の1次検査時間が短縮されればより
早く市場に食肉を出荷できる。米国産牛肉の輸入再開問題などで「食の安全」に
対する関心が高まっており、実用化が期待される。
 BSEは異常プリオンが脳や脊髄(せきずい)などに蓄積され、発症する。
現在一次検査として採用されているエライザ法(免疫生化学検査)は、
脳や脊髄を細胞破砕器で細かくした液に、酵素を加えてタンパク質を破壊。
この酵素で破壊されない異常プリオンを免疫反応で変色させて検出する。
一方、同畜試が開発した検査方法は、異常プリオンの検出に、近年、量産化
できるようになったホタルの発光酵素「ルシフェラーゼ」を利用したのが特徴だ。
 脳や脊髄を砕いた液にプリオンが付着する磁性粒子を加え、磁石でプリオンを
集め、プリオンの「純度」を高める。さらに、抗体を持たせて異常プリオンに
付着するようにしたルシフェラーゼを添加し、発光強度を測定して異常プリオンの有無を調べる。
 ルシフェラーゼは発光までの反応時間が従来の免疫反応による変色時間より
短いため、これまで2時間-3時間半かかっていた異常プリオンの検出時間が、
45分に短縮できる。粉砕などの前処理を合わせた検査時間は、従来の
4時間-4時間半から2時間45分になるという。
 また、ルシフェラーゼは感度が高いため、異常プリオンの量が少なくても反応する。
 牛肉は、全頭検査の結果が出るまで市場に出せないことから、検査時間の短縮で
食肉処理から流通までの流れが円滑になり、鮮度が質を左右する内臓などをより
早く出荷できるようになる。
 実用化するまでにはさらに、実際にBSEに感染した牛を使った実験を重ねる
必要があるが、同畜試遺伝子工学科の尾上貞雄科長は「食肉の処理がスムーズに
なるのはもちろん、検査の省力化にもつながる」と話している。

http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060220&j=0047&k=200602205934 (リンク切れ)

◆その3 北大創成科学共同研究機構と札幌、東京のバイオ関連などの企業

がん、BSEの早期診断に 微量の細胞からタンパク質検出 北大など新システム開発
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060226&j=0047&k=200602267500
2006/02/26 06:53
北大創成科学共同研究機構と札幌、東京のバイオ関連などの企業は二十五日までに、人間や動物の細胞中にあるタンパク質を微量でも検出できるシステムを開発した。細胞の特性を決めるタンパク質は現在、一億個以上の分子量がないと検出できないが、一万分の一の一万個単位で検出できるようになる。これによりわずかな量の細胞や血液、尿で病気の診断が可能になるほか、牛海綿状脳症(BSE)の検査や再生医療への応用も期待できるという。
 開発したのは、同機構の伊藤悦朗助教授と同大大学院薬学研究科、同理学研究科、北海道科学技術総合振興センター(札幌)、イムノバイオン(同)、ノバスジーン(東京)、成茂科学器械研究所(同)、日立計測器サービス(同)。
 伊藤助教授は、ヒトゲノムなど遺伝子解析がここ数年で大きく進歩する一方で、細胞の特性を決めるタンパク質の分子を検出する技術が高まっていないことに着目。二○○四年から分子の数が少なくても検出できるシステムの研究に着手した。
 タンパク質の検出はこれまで、測定対象の細胞に酵素を加え、タンパク質の分子を特定するための化学反応を観察していたが、反応で得られるシグナル(発色)が小さいため、一億個以上の分子量が必要だった。
 伊藤助教授らは反応のシグナルを増幅させるため、四種類の酵素の試薬セットを加えることを考案。これによりシグナルを加速度的に増やすことに成功し、検出に必要な分子量を一万個単位にまで下げた。一月に特許を申請し、数年内の試薬キット販売を目指している。
 細胞内のわずかなタンパク質を検出し、その特性を調べることができれば、理論的には、がんなどの病気やBSEなどの感染症の診断のほか、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を利用した再生医療にも応用できるという。
 今回の研究は、○五年度に経済産業省の地域新生コンソーシアム研究開発事業に選ばれ、八千万円の助成を受けた。伊藤助教授は「北海道発の技術を活用し関連分野の産業振興につなげたい」と話している。


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その他の感染予防に関する新装置や、最新装置導入報道

◆BSE感染予防へ新装置:電気刺激による「牛体不動化装置」&異常プリオン検出最新装置導入

飛騨牛、安全性も「特上」に BSE感染予防へ新装置
http://www.chunichi.co.jp/00/gif/20060208/lcl_____gif_____002.shtml
>全国で初めて電気刺激による「牛体不動化装置」を完全導入した。
>この装置は、気絶させた牛が、と畜するときに再び暴れないよう、電気ショックを与えて動きを止めておく装置。鼻や口などの粘膜に電極トングをつけて電流を流す。
>従来は、牛の頭部からグラスファイバーを通して脊髄(せきずい)を破壊する「ピッシング」処理で動きを止めていたが、脊髄はBSEの病原体がたまりやすい特定危険部位のため、作業による食肉や施設、人体への汚染の危険性が指摘されていた。


最高水準の検査機器導入 府中丹家畜保健衛生所 4月オープンへ
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2006021100052&genre=O1&area=K50
>遺伝子レベルでウイルスを検出する検査機器を導入し、鳥インフルエンザの検査期間を従来の半分以下に短縮する。府によると、国と同レベルの検査能力を持つ施設は、自治体では初めてという。

>BSE対策として、原因物質となる異常プリオンを検出する最新の装置も導入する。府畜産課は「国の判定を待たなくても府で正確な判断ができる。早期の初動防疫態勢がとれることで、被害の拡大防止に期待できる」としている。


感度のいい新検査方法ということでしょうか?どこのでしょう?

過去に報道された新情報のまとめ

■【新検査その1】世界初、生体牛テスト開発News & 別件で感度10倍、費用1/10のテストも
http://blog.goo.ne.jp/infectionkei2/e/e8e6ba03556f6bf1ad75cb8e6f408aeb

■余談:脊柱および背根神経節処理の現状ってどうなってるの?

以前、意見交換会で、脊柱の背根神経節処理がちゃんとなされていないという指摘がありましたが(末段参照)、この記事も気になりますね。現状をしっかり調査報告いただきたいものです。

単価据え置きへ 対象限度数量2万トン減 (十勝毎日新聞2006年3月9日版)
http://www.tokachi.co.jp/kachi/0603/03_09.htm
>食肉流通対策では、BSE(牛海綿状脳症)原因物質が蓄積しやすい特定危険部位に相当する牛せき柱に関し、食肉事業者の適正管理推進などを盛り込んだ。

◆参考4-2 東京 平成17年1月17日 P=75 21
○SRM除去について、と畜場において除去されているものについては、専門的な場所での除去ということで信頼しています。しかしながら、食肉販売業者などでせき柱を分別している業者について、背根神経節が完全に分別されているのか、甚だ疑問である。ある肉店店主に聞くと「せき柱(せきずい)はと畜場で除去しているから、うちの肉は大丈夫。背根神経節は知らない。保健所からの指導もないよ。」と聞いた。この話は決して作り話ではない。しかも複数店で確認しています。BSE検査を20ヶ月齢にしてもSRM除去が完全だからリスクは増えないというが、信じられない。現場での「背根神経節の除去」の実態調査を是非行っていただきたい。いづれ公開されることもあると思うから、その前に是非調査を!

BSEリスコミで出た意見2 SRM焼却や汚水の問題より
http://blog.goo.ne.jp/infectionkei2/e/338738bacfc6f7c979d12fcad468fcee

4 コメント

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参考にさせて頂いています (なつき)
2006-03-13 18:09:29
初めまして、非常に詳細にまとめて下さっていてとても勉強になります。ありがとうございます。

ただ、ページの横を指定する設定が入らないものでしょうか? 表示されている画面に一行が収まっておらず、横にスクロール・スクロール・スクロール・・・としないと文字を追えなくて読みづらいのです。私のブラウザの問題かもしれませんが、同じブラウザを使う人が皆無ではないとは思います。

せっかくの貴重で大切な情報が読みづらいのが苦痛で、なんとかならないか、是非ともご検討をお願いしたい次第です。
スクロール対策の件 (Mariko)
2006-03-19 10:49:31
なつきさん、ごめんなさいね。使用している機器のブラウザでは問題ないので、気がつきませんでした。いずれ改行して対策を取りたいと思いますが、出来ましたらそれまではご面倒ですが、ワードなどにコピーすると改行スタイルになるので、それでご覧いただけますと幸いです。



以前、メーラーに、と思ったんだけれども、メールだとリンクがうまくされないんですよね。ワードだったらたぶんリンク属性もそのままコピーされたと思ったのですが。
全頭検査に伴うコストは食肉1キロあたり6―8セントと少額 (cost)
2006-04-18 07:15:51
全頭検査に伴うコストは食肉1キロあたり6―8セントと少額



(3/25)全頭検査、コスト小さい・米食肉加工会社CEO

http://health.nikkei.co.jp/bse/child.cfm?i=2006032408778bs&c=0





プリオン説に? 感染病原体というよりマーカーか=英国・ノルウェー研究チーム (Mariko)
2006-04-18 12:13:32
プリオン説に? 感染病原体というよりマーカーか=英国・ノルウェー研究チーム



 英国獣医研究所(VLA)やノルウェー獣医科学スクール(Norwegian School of Veterinary Science)を中心とする研究チームはこのほど、BSE(牛海綿状脳症)などTSE(伝達性スポンジ状脳症)の進行に関係している異常型プリオンタンパク質が、感染病原体というよりTSEの副次的なマーカーである可能性を示唆する研究をまとめた。論文が、英国・アイルランド病理学会の発行する医学雑誌「ジャーナル・オブ・パソロジカル(The Journal of Pathology)」(電子版)最新号に掲載された。米ペンシルベニア大学メディカルスクールなどの運営する医学ニュースサービス「メドページ・トゥデイ」(MedPage Today)が3月30日に伝えた。

http://www.jc-press.com/kaigai/200603/033102.htm



笹山さんから頂戴した情報====

下記がアブストラクトですが、概略、次の内容のようですね。

「Transportation of prion protein across the intestinal mucosa of scrapie-susceptible and scrapie-resistant sheep」

http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/abstract/112568745/ABSTRACT



「これまで、プリオンは、腸から吸収されると考えられていたが、実際は、そうではなかった。

さらに、腸は、たんぱく質を吸収して伝染力を増幅させるところではないことがわかった。

実験としては、スクレイピーに対して、抵抗力の違いのある50匹の羊に対して、腸から、PrP含有物質を注入したところ、腸からの吸収に対しては、スクレイピーに対して抵抗力のある羊も、抵抗力のない羊も、差はなかった。

第二の実験として、羊の腸に外科的修正を施し、羊の腸の中に、0.5グラムのスクレイピー感染羊の脳を含有した流動性の混合物を付加し、経過観察をしたところ、PrPは、急速に、指のような腸絨毛によって、取り上げられ、リンパへと、移動していった。

しかし、これまで、伝染物質の吸収に役割を果たしていると考えられていた、Peyer\'s nodules (パイエル板リンパ小節)からは、吸収されなかった。

このことから、PrPは、本当に感染性のあるものなのか、また、PrPは、スクレイピー物質の存在を示す、内部標識(secondary marker)なのではないのか、ということが、わかった。

さらに、この実験では、高感度のウエスタンブロット検査方法が使用され、羊の腸にあった消化物の混合物のなかにPrPが、どの程度残存しているかを調べたところ、ほとんど、残留していなかったという。

このような実験結果から、PrP以外の伝染物質があるということを予測してかからなければならない、と、今回の研究に当たったMartin Jeffrey博士は、いっている。

また、同じthe Journal of Pathology に、Nicole Sales博士が、「PrPは、腸からよりも、口から吸収される」との説を出しているが、これについては、Martin Jeffrey博士は、確証はもてないとした。」



http://www.innovations-report.com/html/reports/life_sciences/report-57280.html