因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

劇団チョコレートケーキ第28回公演 『60`S エレジー』

2017-05-08 | 舞台

*古川健作 日澤雄介演出 公式サイトはこちら サンモールスタジオ 21日まで(1,2,3,4,5,6,7,8,9)このところ大きな劇場での公演が続いていた劇団チョコレートケーキが、久しぶりに小劇場で公演を行う。5月3日から21日までのロングランである。今夜も通路に補助席を出す満員の盛況。心なしか年配の観客が多いようにも見える。

 物語冒頭で大変重要な事柄が明かされるのだが、さてこれを記すべきか…。

 主な物語は昭和35年、東京の下町。祖父の代から続く蚊帳工場を小林清(西尾友樹)、悦子(佐藤みゆき)夫婦が切り盛りし、清の弟の勉(岡本篤)、ベテラン職人の武雄(林竜三)が働いている。そこへ福島から「金の卵」・15歳の修三(足立英)がやってきた。まじめな仕事ぶりや素直な性格が好ましく、貧しい農家の三男坊で、弟妹のために進学できない事情を知った小林夫婦は、修三を夜間高校へ行かせたいと奮起する。やがて人々の生活様式が変容し、蚊帳の需要がどんどん下がりはじめる。人員整理を余儀なくされるなかで、修三は大学まで進み、大学紛争の渦に巻き込まれていく。

 折しもいま放送中のNHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』の舞台は昭和40年。集団就職で上京した少女たちの青春模様を日々視聴していると、当時の人々の暮らしぶりや世の中の状況など、今夜の舞台にもあまり違和感を持たずに受け止めることができた。

 小林蚊帳店の夫婦というのが、これ以上ないというくらい優しく温かいのである。社長の清は直情型で乱暴なところもあるが、自分よりも相手の気持ちを慮り、そのために苦しむことになる。お人好しなどと言っては申しわけないほど善き人である。妻の悦子は空襲で片足が悪いが、工場の仕事も家事もてきぱきとこなし、太陽のように明るい。修三を家族同様に大切にし、進学の手助けをするなど、誰にでもできることではない。

 題名が示す通り、豊かさを求めてひたすら邁進したことで失われていったものへの哀惜が濃厚に醸し出される舞台で、非常にベタであり、既視感があることは否めない。しかし夫婦を演じる西尾友樹と佐藤みゆきが、惚れぼれするような造形で、客席を虜にする。山田洋二監督なら、清に永瀬正敏、悦子に黒木華あたりを配役するのだろうかと想像するが、いや、西尾と佐藤の夫婦がだんぜん良い。

 あれこれ言うのが野暮になるのを承知で敢えて言えば、修三が冒頭で示された状況になることが今一つ説得力を欠くと思われる。また老いた修三の声役が高橋長英というベテランだが、語り口やバックに流れる音楽がいささか情緒過多の印象がある。何より、ノスタルジーを超えて描きたかったのは何かを、もっと知りたいのである。

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 創立30周年記念第1弾 新宿梁... | トップ | 新国立劇場「かさなる視点ー... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。