因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

劇団印象第22回公演『子ゾウのポボンとお月さま』

2017-10-20 | 舞台

*鈴木アツト作・演出 公式サイトはこちら 東中野・RAFT 22日で終了 (1,2,3,4 5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23) 
 公演チラシには「子どもと一緒に観る演劇シリーズ第2弾!」のキャッチコピーが躍る。観劇対象は3歳からだが、公演中数回、0歳の赤ちゃんでも入場できる日が設けられている。開演前鈴木アツトは「もしお子さんが泣き止まなかったらこちらの出口からいったん出て、泣き終わったら再度ご入場ください」と子ども連れの観客に温かな配慮を示す。自分が行ったのは平日の夜公演のせいか、子どものお客さんは多くなかったが、それでも主催者側にあらかじめこのように言われると親御さんは安堵するであろうし、他の観客も「そのように受けとめよう」と心の準備ができる。

 台詞は少なく、動きと音楽、ダンスで表現されるおよそ40分の物語だ。4人の俳優たちは登場人物…といってよいのか、もしかすると動物かもしれず、風や雲、木々などとも感じられる自在な空気を纏っている。それぞれがアルミのコップなどを鳴らして音楽を作る場面は、台詞なしでもじゅうぶんに楽しさが伝わるものだ。やがて登場する子ゾウの「等身大パペット」については、作・演出の鈴木アツトがタイはチェンマイの「エレファント・キャンプ」を訪れた体験を基に物語を書き、俳優がパペット(人形)の中に入ったり、鼻を操ったりする趣向は文楽の手法を取り入れたとのこと。ポボンの長い鼻は蛇腹状に見えたが、鼻の太さの輪切り型(ここ、うまく書けない)が丹念に繋げられており、どんな素材かわからないが先端にはバナナをくっつけることができる。

 子どもたちとバナナのやりとりをする場面もあるが、いわゆる客いじりや観客参加型というほどではなく、子どもたちに文字通りお芝居の手触りを伝えつつ、きっちりと物語を運んでゆく。決して感動巨編ではなく、教訓的な内容でもなく、非常に淡々としたものである。子どもたちと親御さんのコンディションを考えると、40分は妥当な上演時間であり、劇全体のボリュームであろう。しかし正直なところを言えば、もう少し手ごたえがほしい(時間的に長い芝居を、ということではなくて)。これまでの鈴木アツトの作品、取り組んできた企画等々を思い起こすと、子どもと大人の観客が楽しめる舞台にもまだまだ発展の余地が多くあると思われる。

 演劇集団円の「こどもステージ」や、「子供のためのシェイクスピア」に勝るとも劣らない、劇団印象の鈴木アツトにしか作れない舞台に出会う日が訪れることを心から願っている。

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