因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

wonderlandに劇評掲載 鵺的『荒野1/7』

2012-10-03 | お知らせ

劇評サイトwonderlandに拙稿「劇作家の幸福」が掲載されました。8月に観劇した高木登作・演出、鵺的第5回公演『荒野1/7』(観劇直後のブログ記事)です。文末に触れたとおり、本作についてはwonderland編集長の水牛健太郎さんによる劇評「濃厚な演劇らしさ」が発表されておりますが、編集部の皆さまのご好意により、当方の執筆の願いがかないました。この場におきまして、厚く御礼申し上げます。
*文中ハマカワフミエさん演じる永遠子を末っ子、森南波さん演じるみずきを次女と誤認識しており、先日訂正いたしました。永遠子が次女、みずきが末っ子の三女になります。関係者のみなさまにお詫び申し上げます。

 小説家の曽野綾子の生まれ育った家庭は、父親の暴言、暴力に支配され、母と娘は心中未遂まで追いつめられたこともあり、娘の願いは少しでも早く両親が離婚し、自分と母が暮してゆける経済力をつけることだったというから、まことに辛い少女時代だったと想像する。
 しかし曽野の小説やエッセイからは、両親への憎しみや恨みは感じられない。テレビの対談番組で、「おかげで仲の悪い夫婦を小説に書くのに、大変得をいたしました」とにこやかに語るのをみたこともある。不幸せな生い立ちや暗い家庭環境は、創作活動にとってはむしろ宝の山であり、秀作に結実することの証左であろう。

 9月24日放送のNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に、脚本家遊川和彦が登場した。当代きっての売れっ子脚本家に、家業が倒産して父親がよその女性と蒸発してしまい、貧しさや悲しみと必死で闘った壮絶な少年時代があったことを知った。いつも不機嫌そうで、多少笑っても心からの笑顔にはみえない。しょっちゅう撮影スタジオに顔を出し、俳優にも手厳しいことばを投げつける様子に驚いた。遊川は物語は自分の中にあり、劣等感やコンプレックスが作品を書かせている?と語る。

 大ヒットドラマ『家政婦のミタ』で、長谷川博己演じる親の自覚が持てない父親は、これまでみたたくさんのドラマにはおよそ登場しないものであった。幼い娘から「わたしのこと、好き?」と必死で問いかけられて、この父親は「わからない」と言うのである。これにはいくらなんでもと驚いたが、やがて「おれをおまえたちの父親にしてくれ」と泣きながら懇願する父親のすがたに納得した。遊川が父親の思いを想像しながら、みずからの父親への思いを投影させたのだ。

 いやミタさんの話ではなくて、今回自分は劇作家高木登の幸福について考えました。
 どうかお読みくださいませ。

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