因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

日本演出家協会主催若手演出家コンクール2016より『みそ味の夜空と』

2017-03-04 | 舞台

*南出謙吾作 森田あや演出 公式サイトはこちら。87名の応募者のなかから、第一次、第二次審査を経て最終審査に残った4名の演出家の舞台が一気に上演されるこのコンクール、これまで2度観劇したことがあるが(1回め:1,2,3,4 2回め:1,2)今年は本作1本を観劇した。
 らまのだ1,2,3)の南出は昨年12月、『触れただけ』で第22回劇作家協会新人戯曲賞を受賞したばかりで、演出家、劇作家ともに上り調子のユニットらしく、生き生きと楽しい舞台であった。客席は最前列の桟敷が2列になるほどの大盛況だ。

 別れることを決めたカップル。しかし男性のほうがぐずぐずしている。女性はしっかり者。対してその兄は夢想家というのか、地に足のつかない性格で、ラーメン屋になると宣言してうちを出る。その兄に恋人がおり、兄の残していったプロレスラーのマスク?を取りに来る。1時間弱の物語の中で兄妹の住むうち(両親も同居らしいが登場しない)とバス停の場面があるのだが、暗転と明転のタイミングに合わせて、大道具小道具の入れ替えなども実に手際よく行われる。リハーサルの時間も十分に取れなかったのではないかと案じたが、俳優陣いずれも安定した演技で、客席の反応も温かい。「私には英語しか取り柄がないのに、英検1級試験に落ちた」と悲嘆にくれる女の子のくだりが非常におもしろく、方向性のずれたやりとりをテンポよく、演じる俳優の個性を活かした台詞を書ける劇作家として、南出謙吾はますます腕を上げた。

 このコンクールは、4人の演出家がそれぞれの作品を1時間で仕込んで1時間で上演し、すぐにバラシて次の演出家の舞台に明け渡すことを繰り返すというハードなもの。それでも平日は1本ずつの上演だが、土日は2本から3本の上演が続くので、観客の入れ替えも合わせると、まことに慌ただしく、スタッフワークの手腕も問われることになる。「演出家コンクール」というからには、演出家の、というか演出について競い合うコンクールなのだが、そこには戯曲(つまり劇作家)の存在も当然あるわけである。今回最終候補に選ばれた大河原凖介(演劇企画集団LondonPANDA)、中村暢明(JACROW)の2名が作・演出を兼ねており、永野拓也(hicopro)は柴幸男(ままごと)の『つくりばなし』を原作に、ミュージカル構成した作品を演出する。

 まことに極端な例になるが、シェイクスピアでも別役実でも、ひとつの作品を決めて、4人の演出家それぞれの舞台を競い合うという形式ではどうなるのだろうか。同じ作品が演出家によってどんな変容を見せるのか。さらに演出の違いに関わらず、ぶれない作品の核は何かを味わい、改めて演劇における演出家の役割とは何かを観客とともに考える試みもあってよいのでは?

 最終日上演後の公開審査において、最優秀賞、観客賞ともに永野拓也が受賞した由。自分は永野の舞台をまだ見たことがなく、次なる楽しみと目標として、主宰するhicoproの公演の情報にアンテナを張っておきたい。

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