北緯43度

村上きわみの題詠100首用ブログです

「未来」04月号(2012)

2012-05-02 | 未来

白湯だけが親しい夜の入り口でいいよあなたの六腑になろう

よこしまな心しかない 空の朱をかきまぜながら飛ぶ鳥を見る

濃紺のいのちを空に弛ませて鳶が見せつける冬の所作

ゆきはらに雪腐らせてこの冬のかみさまは胡乱でいらっしゃる

播くものを持たない暮らし粛々と喉にこなぐすりを貼りつけて

春待ちの枝という枝いたましく尖る どなたから曲げようか

いざやいざやと詰め寄りながら一献で済まぬ宴と相成りましょう

(ゆるすとかゆるさないとか)恥ずかしい釜揚げうどんぞるぞるすする

獣には獣の寝言 迷わずについてゆくからぎんなんおくれ

せりなずなごぎょうあたりで躓いてやわらかすぎるバスまいります

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「未来」03月号(2012)

2012-04-06 | 未来

星を焚く真冬(どなたのお名前もうっかり口にしませんように)

降りながらすこしくるってゆくでしょう雪の甘さの、埒があかない

あめゆきに舌をさらして記憶からいちばん遠いふゆを歩いた

ただならぬことの次第を告げにゆく痩せた冬田に鳥を招いて

泣き本のような台詞を口にして来世は閂になるつもり

んくんくと水飲むひとの、さかさまの、夢の名残に塩ふりこぼす

泣いていいと言えば泣きだす(それでいい)飛ぶもののおなかはやわらかい

冬の舌が地面を舐めるまひるまにあなたはささやかな火を嘔吐す    ※ルビ「嘔吐」もど

とりの付箋、さかなの付箋、じゅんぐりに剥がして夏の書物を閉じる

いくばくか滴るものを掌にうけて冬ざれの野に淡く礼なす    ※ルビ「礼」いや

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010:カード(村上きわみ)

2012-03-31 | 題詠:2012

(誰よりもむごい手順で)恋人よわたしのSIMカードを抜きなさい

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009:程(村上きわみ)

2012-03-31 | 題詠:2012

日毎夜毎たましい売りがやってきて囁く「如何程さしあげましょう」

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008:深(村上きわみ)

2012-03-18 | 題詠:2012

早春の深みにはまる遊びからはじめたい泥とひかりを混ぜて

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007:驚(村上きわみ)

2012-03-18 | 題詠:2012

驚いているのか、お前泣きたいか? 傷から蜜がしたたっている

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「未来」02月号(2012)

2012-03-05 | 未来

蛇を濡らすひかりのあまやかな記憶の底に凝る、何度も   ※ルビ「蛇」くちなわ

まず兄が暮れて次第に弟がまみれるまでを弔いとして

濃紺の守衛の胸に伏せられて書物は冬に似たものになる

どこまでが往路でしたか咬みたがる牙をゆるめてねむる間際の

添付する遠景(錆びた鉄塔がていねいに自分を折りたたむ)

犬。呼べばすぐにみなぎり薄暗いわたしの土を今日も耕す

木のあばらあらわに見える坂道で犬が口火を切る冬の午後

あどけない雲を古びた雲が呑み雪をみごもるまでを見ている

肉体は脆い岬と告げにくる善良な善良な鳥たち

ふるまいをにぶらせて、雪、三角洲、桔梗を仮想記憶に移す

 

 

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蛇に詫びる

 

 ざらめ糖のような雪がそこここを悪路にかえている。風が強い。

ざっくざっくと前をゆく誰かの靴跡をたどりながら歩く。

 そういえば子どものころ、こうやって父親の長靴をにらみながら

裏山を登ったことがあった。コクワをとりに行ったのだったか。

大きな長靴が笹薮をわけ、木の根方を踏み、小さな花をよけて進む

のを見つめながら歩いた。

 父は無口な男だったが山歩きの時は少し饒舌になる。地面を這う

ように咲く地味な花や、木々の名前、鳥の声の聞きなしについて話

しながら歩いた。それは「教える」というよりは独り言に近いもの

だったが、妙に嬉しかったことを憶えている。

 それに気づいたのは足ばかり見ていたからだ。立ち止まった父が

方角を確かめていた時のこと。黒いゴム長の土踏まずのあたりに、

薄暗い色の、紐?…と思ったとたん、それは思いがけない角度に歪み、

足首に絡みついた。青大将だった。

 蛇は見慣れているとはいえ、いきなり現れれば足がすくむ。「ふ、

踏んでる」どうにか声をあげると「ああ、」と、まるでめずらしい

花でも見つけたように父は言った。それからゆっくり足を上げ、蛇

がほどけてしまうまで待ちながら、「これは大変失礼しました」と、

ひどくまじめな声で詫びたのだった。

 当時の父の年齢をとうに越えた今、改めてあの奇妙なふるまいの

根にあるもののことを、謎解きのように思い返している。

 

                  エッセイ「その日その日」

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006:時代(村上きわみ)

2012-02-24 | 題詠:2012

母の母の母をかなしむ鴇鼠の時代絹はつかに瀞むまで

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005:点(村上きわみ)

2012-02-23 | 題詠:2012

花に似た深い亀裂を抱いている(おわり、はじまり)点炭をつぐ

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004:果(村上きわみ)

2012-02-18 | 題詠:2012

果て口に立てかけられた一本の斧がうつくしい 加わろう

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