十年も前ではなかったと思いますが、地元に詳しい、知り合いのおじさんから赤羽にも絵馬を売っているところがあると聞いてびっくりしました。
早速行ったのが、現在の赤羽岩淵駅そばにあった荒物屋の「石渡商店」さん、それ以前何度も前を通り過ぎていたし、植木鉢だの、信楽焼の狸だの小便小僧から箒やたわしまであるローカルな店だと思っていたのですが、絵馬は店先に見えず、話をすると奥から出してきてくれたのでした。
現在「絵馬」というと、観光地や有名な神社仏閣で記念に求めたり、祈願用に神社でプリントしてあるものが主流だと思いますが、この写真のように、昔は祈願する人が荒物屋や際物屋などで求めて使うことが多かったようです。
店先に見えなかったのは、おみやげとかインテリアとかの対象として意識されていなかった証拠。線香や蝋燭と同様、信仰のための道具として、需要があり、売られていたということになります。地元にまだそういう風習を伝えている家があるなんてびっくりしました。
鶏の図柄は、台所のかまどを守る荒神様へあげるもの。鶏のとさかの形が炎を連想させるところから、荒神様につきものとなったようです。向かい狐の図柄は当然お稲荷様。屋敷神としてお祀りしている家が少なくないのでしょう。 こういう図柄のパターンは全国いろいろなところにあって、東京では千住の絵馬屋さんが有名ですが、探してみると、練馬区貫井の国華堂という提灯屋さん、所沢の人形屋さんでも作っていて、川崎の溝の口駅近くの神仏具屋さんでも出所のわからない経木の絵馬を見ました。しかし、あまり街の目立つところでは観られませんね。地元にも売られていたなんて本当にびっくりしました。
ちなみに、この絵馬は岩淵で作られたものではなく、戸田市内の人形屋さんで作っていたことが後日わかりました。「石渡商店」さんも今では店を閉じてしまいました。