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トランプのイラン敵視策  本文

2017-02-11 15:24:44 | (旧 新) 米国


▼ロシアとの和解を棚上げして世界にイランを敵視させる

 
1月29日にイランがミサイル発射実験を行ったのを機に、米国のトランプ政権が、イラン制裁の再強化と、オバマ政権が結んだイランとの核協定を破棄(表向きは、いったん破棄して再交渉)する姿勢を強めている。


先週の記事では、トランプの米国がイランを敵視するのと同期して、シリアに進出しているロシア軍が、シリアからイランやヒズボラを追い出す動きを強めており、イラン敵視でトランプとプーチンが協調するような流れになっていることを指摘した。



 だがその後、ロシアのチュルキン国連大使は2月7日、イランのミサイル試射は法的に国連の取り決めに違反しておらず、米国がイランが違法行為をしたと言っているのは驚きだと表明した。


イランが試射したミサイルは核弾頭を搭載できるもので、同種のミサイル開発を禁止した国連決議に違反していると米国は言っているが、その条項がある国連決議は15年7月、オバマが作って可決された新たな国連決議(いわゆるイランとの核協定)によって上書きされた。

新決議は、イランが核弾頭ミサイルの開発をしないことを望むと書いてあるが、明確な禁止事項として規定していないので、今回のミサイル試射は合法行為の範囲だとチュルキンは言っている。



 ロシアのラブロフ外相は、イランが中東でのテロ退治に必須な勢力だと評価し、制裁に反対する姿勢を見せた。ロシアの外務次官も、米国のイラン再制裁(イラン核協定の再交渉)は中東を不安定な状態に引き戻すので危険だと警告している。



 やや脱線するが、国連安保理での最近の米露のやり取りからは、トランプが当初述べていた対露和解が棚上げされている感じが強まっている。


米国の新任のヘイリー国連大使は2月2日、ロシアが併合したクリミアをウクライナ領に戻さない限り米国はロシア制裁を解除しないと宣言し、ウクライナ東部の混乱は(ウクライナでなく)ロシアのせいだと批判した。


これは、これまでのトランプの親露姿勢から離れるものであり、ロシアのチュルキン大使は、米国はロシアに対する態度を変えたと指摘している。


トランプ政権が対露姿勢を敵対方向に変えたことと、ロシアがイランの肩を持つようになったことは、連動している可能性がある。



 ロシアは、トランプのイラン制裁につき合わない態度を表明した後、イランに戦闘機を売ることを表明し、イランの空軍基地をロシア軍が使う話を蒸し返して、
イランと軍事関係の強化に動いている。


米国がイラン敵視を強めてもロシアがそれに乗らなければ、シリアやイラクでのIS退治は従前どおり露イランの主導で続き、何も変わらない。



 トランプはイラン敵視を強めると同時に、サウジアラビアに対し、オバマ時代の米国が人権侵害を理由に輸出を停止していた武器を売る決定をするなど、イランを敵視するサウジへのテコ入れを強めている観がある。


だがこれも、サウジの方が歓喜一辺倒かというとそうでもない。



 サウジは最近、イランを敵視するだけだったこれまでの姿勢をやや転換し、中東におけるイランの台頭を容認しているふしがある。


たとえばレバノンでは、政治台頭するシーア派のヒズボラとの敵対を緩和し、サウジは、ヒズボラが提案し
てきた和解策を受け入れ、召喚したままにしてあった駐レバノン大使を再任して戻した。


レバノンは、かつてサウジの影響下にあったが、11年のシリア内戦勃発後、ヒズボラが台頭してサウジが追い出された。


最近、シリア内戦がアサド・ヒズボラ側の勝利で終わりつつあり、ヒズボラはかつてサウジの傀儡として首相をしていたサード・ハリリを首相職に戻すことでサウジに和解を提案し、サウジはヒズボラが支配するレバノンとの関係再構築に同意した。



 サウジはペルシャ湾岸のアラブ産油国(GCC)を率いる国だが、GCCに加盟するクウェートの外相は1月末、GCCとイランを和解させるためイランを訪問した。


イラン側が和解に前向きな姿勢をみせたため、まず石油の価格政策で協調していくことから話し合いを始めることが決まった。

こうした動きの最中に、トランプがイラン敵視を強めている。

対米従属色が濃いサウジやGCCは今後、米国に配慮してイランとの和解を進めるのを棚上げするかもしれない。だが、いずれ中東での米国の影響力がまた低下したら、サウジやGCCは再びイランに接近することになる。



▼トランプがまっとうな中東戦略をやらないのは意図的?


 トランプのイラン敵視策を積極的に支持しているのは、世界中でネタニヤフのイスラエルだけだ。


イスラエルでさえ、軍やモサドといった諜報界が「今あるイラン核協定を壊すのはイランを強化してしまう」と猛反対するのを、ネタニヤフが無視してトランプとの同盟関係に賭けている状態だ。


他の国々はみな、トランプのイラン核協約破棄(再交渉)に反対するか、懸念している。



 トランプは、大統領就任来のやり方から考えて、世界中から反対されてもイラン敵視を引っ込めず貫くだろう。


トランプのイラン敵視策は、世界的な策にならない。米国はいずれ国連安保理で、今のイラン核協定を破棄してイランにとってもっと厳しい別の協定の交渉を始める決議案を提案するかもしれない。


だが、各国の現在の態度から考えて、中国(とロシア?)が反対して拒否権を発動し、否決される。


国連で否決された後、米国だけが勝手にイラン核協定を破棄して離脱する。トランプは国連を非難し、前回の記事で紹介した、国連に運営費を出さない大統領令を発動する可能性が強まる。



 トランプは、当初予定していたロシアとの和解も棚上げし、イランに寛容でイスラエルに厳しい国連など国際社会を批判し、実質的に離脱していく傾向を強める。


トランプは、サウジを誘ってイラン敵視を強めようとするかもしれないが、誘われてホイホイついていくとトランプと一緒に国際的に孤立するはめになる。



しだいに、トランプの米国とまっとうにつき合う国が減っていく。

米国抜きの中露イランなどが影響力を行使する多極型の世界が形成されていく。


多くの人々は、これを「トランプの失策」と呼ぶだろうが、私から見ると、トランプは意図的にこれをやろうとしている。トランプは、多極化をこっそり扇動している。


今後の多極化の進行速度は、中露イランなど多極化を指向する国々がどれだけ思い切りやるか、それから、日本やイスラエル、英国、サウジといった対米従属の国々(JIBS)が、どこまでトランプについていくかによる。



 要約に書いたように、米議会はトランプに扇動され、イラン革命防衛隊とムスリム同胞団という、シーアとスンニを代表する強い国際組織を、テロ支援組織に指定して制裁する新法案を検討している。

これも、国際社会がつき合いきれない策だ。


防衛隊は、シーア派主導の国になったイラクに入り込み、イラクの治安面を牛耳っているし、内戦のシリアでアサドの政府軍を助けてISアルカイダと戦い、今ではシリアをも牛耳っている。


防衛隊の協力なしに、シリアやイラクでISアルカイダを退治できない。中東の安定を考えるなら、防衛隊の制裁はあまりに愚策だ。ロシアもEUもトルコも支持できない。



 ムスリム同胞団は、アラブ諸国で圧倒的な最大野党だ。百年の歴史を持つ同胞団は、かつて暴力革命を追求していたが、1980年代以降は選挙でアラブ諸国の政権をとることを狙っており、テロ支援はやっていないと、米欧の中東専門家の多くが認定している。


同胞団の発祥地であるエジプトでは、アラブの春の後の選挙で勝った同胞団政権を軍部がクーデターで倒したが、アラブ諸国が民主化するなら、同胞団は与党になれる存在だ。


米国のイスラム教徒の最大コミュニティであるCairも同胞団の系列だ。同胞団をテロ支援組織に指定するのは、まっとうな策でない。



 トランプは、まっとうな中東戦略をやろうとしていない。


私の以前からの分析は、トランプが米国の覇権を崩すことを隠れた最重要の目標としている、というものだ。この分析に沿って考えるなら、トランプがまっとうな中東戦略(国際国内政策全般)をやらないのは、意図的なものだ。


米国がまっとうな国際戦略をやらないほど、国際社会は米国に見切りをつけ、覇権体制が脱米国・多極化していく。


トランプは無茶苦茶をやりつつも、米政界を牛耳るイスラエルと良い関係を結び、米議会の反逆を抑えている。




 トランプは最近、ネオコンの一人であるエリオット・アブラムスを国務副長官にしようとしている。好戦的な政権転覆策をやりたがるネオコンを国務省に入れるなと、米国のリベラル派から草の根右派までが反対している。


だが見方を変えると、世界が米国に見切りをつける中で、ネオコンが国務省を牛耳って好戦策をやろうとするほど、世界が米国を敬遠することに拍車がかかり、多極化が進む。



国務省は、ブッシュ政権時代にパウエルが国務長官を辞めたあたりからどんどん好戦的になり、ろくな政策をやれなくなっている。トランプは、それにとどめを刺そうとしている。



http://tanakanews.com/170211iran.htm












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