ニューヨーク・タイムズ紙は7月9日、ナタリヤ・ベセルニツカヤなるロシアの弁護士がドナルド・トランプ大統領の息子、ドナルド・トランプ・ジュニアと2016年6月9日に会ったと伝えた。
それがロシア政府とトランプ大統領との謀議であるかのように宣伝しているのだが、そうした証拠は示されていない。
トランプ・ジュニアと会ったその日、彼女はデニス・カツィーフと会っている。
この人物はいわゆる実業家で、父親はロシア国営鉄道のペトロ・カツィーフ副総裁。アメリカでマネー・ロンダリングの容疑がかけられているのだが、ロシアにおける脱税と結びついている。
そのデニスの弁護のためにベセルニツカヤはアメリカへ入国したのだが、彼女はビザがなかった。
司法省の特別の計らいでビザ無しでアメリカへ入れたのだ。当時の司法長官はロレッタ・リンチ。バラク・オバマ政権の友好的な姿勢が感じられる。
しかし、カツィーフとある3日前、ベセルニツカヤはフェースブックにトランプ大学に関する疑惑を書き込んでいる。
そのほかの書き込みや写真を見ても、彼女は反ウラジミル・プーチンであると同時に、反ドナルド・トランプ。
デニスはプレベゾン・ホルディングスという持ち株会社を所有しているが、その会社とつながっているフュージョンという会社はマグニツキー法を廃止させるためのロビー活動をしていたとされている。
2億3000万ドルの脱税容疑で逮捕されていたセルゲイ・マグニツキーという弁護士が獄死したことに対する報復だが、ロシア政府にとって大きな痛手ではない。
このフュージョンはロシア疑惑に関する怪しげな報告書を作成した元MI6(イギリスの対外情報機関)オフィサーのクリストファー・スティールを雇った会社でもある。ロシア疑惑を仕掛けた会社だとも言えるだろう。
プーチンは西側の巨大資本の手先になっている勢力を摘発するため、汚職など刑事事件を利用してきた。
ボリス・エリツィン時代、巨大資本が政府を支配していたことから、オリガルヒと呼ばれる人々は法律を守るという意識がほとんどなかった。つまり法律を犯していた。
そこを突いたのだ。そこで、脱税の摘発は今も続いている。
6月24日にベセルニツカヤは外交委員会のロシアやウクライナに関する公聴会を傍聴しているのだが、彼女の隣に元ロシア大使のマイケル・マクフォールが座っていたこと。
マクフォールが大使だったのは2012年1月から14年2月。就任直後に反プーチン派の活動家がアメリカ大使館を訪問している。
その活動家とは、「戦略31」のボリス・ネムツォフとイーブゲニヤ・チリコーワ、「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」のレフ・ポノマレフ、選挙監視グループ「GOLOS」のリリヤ・シバノーワたち。
マクフォールが大使を辞めた2014年2月は、ウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターをアメリカが成功させた頃だ。
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