ハニカム薔薇ノ神殿

ドラマ、ゲーム、映画、美術、のレビューと書評。(現在「特撮」レビューになってる)

SNSと理由なき「サボり」の喪失

2017年05月17日 | 雑記
その昔、喫茶店でバイトしていた時の話。

喫茶店というと、タバコを吸ったり、あまり健康的ではないコーヒーを飲んだり
健康志向でオープンな昨今のカフェに比べたら、どっか退廃的なイメージもあるかもしれません。
どっかアングラな
パチンコ店と往復するような、たまにヤーさんも談話に使用するような
エロ本がごく普通にあり、ゲーム機になってるテーブルは麻雀のセミプロがいる
そんなところでした。
ですが、芸大も近かったので、半分位に芸術家関係、映像関係も混じってました。
奥で漫画の原稿描いてるツワモノもいましたし、世界的に有名な音楽家もいました。

で、その喫茶店には、実は
「理由なきサボり」というのがありまして
本当に、理由が特にない「なんとなく…」を許す部分がありました。

例えば、なんとなく学校行きたくなくてサボる学生。
イジメられて、受験が嫌で、先生が苦手で、ではないんです。
「なんだかな〜」って感じの。特に理由がない。

本当は、理想的にはこうしなければならないけど「なんだかな…」は学生だけではありませんでした。
一生懸命頑張って働きづめだったのに、ある日騙されてお金取られた人
会社をクビになってるけど、奥さんに言えず偽装出勤してる人
なんとなく芸大来たけど、これでいいのかよくわからんて人

こうしなさい、こうすれば解決するのよ!
気分障害ならいますぐ病院に行きましょう!そのままだと迷惑ですし!!

なんて、今は言うまでもなく全員ポジティブでいなくては生きられないとマスコミに、ネットに脅迫されます。
すべてを信じる必要はありません、と広告やってる私が言っちゃあダメなんでしょうが
まあとにかく現代は「なんとなく」という隙間まで、きっちり理由を問いただし、埋めたがるんです。
なぜブランクであってはダメなんでしょう。

スタバでもタブレット出して「そ〜らそ〜ら、自分は外でも仕事してますよ〜、1分も無駄にしませんよ!出来〜る」
そんなアピールしなきゃだめですかね?
それとも、聖書にある罪とは別の「四六時中労働に明け暮れていない人は罪人である」ような自己監視か何か?

SNSが人から奪ったものの1つに
自由で理由のない「なんとなくの時間」つまり、サボりがあると思うんです。
常に自己アピールしていなければ存在できない人らが作った空間では
なんとなく嫌、何もしないのは存在しないことになる。

ゆえに何もしてない、できないことにも理由を見つけたがる。
「鬱ですので」「障害あるので」
とでも書けばまるで、許されて「生きて」いられるかのように。


でも、錯覚です。
ただ喫茶店で無意味にダラダラ過ごしていても、誰から見られてなくても
そこに自分はいるじゃないですか。
「連中」がポジティブでないと理解できないのでしたら
「サボるを必死に頑張ってる」とでも言わなきゃなんないのかと。

SNSには、そのゆったり過ごす時間は表示されません。
たとえ誰かがどこかでゆったりしていても
見られるのはコーヒーの画像くらいです。

「なんとなくここに存在してる」ことは、SNS時代には許し難いことになってしまいました。
そのせいで、みんな自分が誰か、何をしてるのか、どんな学歴や資格があるのか
必死になってアピールしなくちゃいけなくなってしまった。


世界的に有名な音楽家が客で来ていたと書きました。
でも、その先生パチンコ大好きで、カウンターではパチンコの話ばっかでしたし
カント哲学やってる先生も来てましたが、別にずっとカントばかり読んでたわけでなし
かと思うと、やたら的を得た人生訓や哲学を、オーナーやバイトの兄ちゃんから聞いたりもした。
「らしさ」と「忙しさ」をアピールするところではありませんでしたが

人の姿は今よりも、流れるそのなんとなくな「時間」によって、立体的なものであったと思います。

もちろん、現代は現代の良さがたっぷりあり
今の方が良いって部分の方が多いはずです。
より健康的で明るく、よりポジティブでより合理的、何より全て世間のお役に立つ時間と自分!


でも、時折ふっと笑いながら、
「あのサボりな時空間は楽しかったよなあ」と思ってしまいます。

何となくそう思うーーくらいは、きっと文学の一部ですよ。
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