一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第65期王座戦第4局

2017-10-13 00:09:35 | 男性棋戦
羽生善治王座に中村太地六段が挑戦する第65期王座戦五番勝負第4局は、11日に横浜市で行われた。
ここまで挑戦者の2勝1敗。このシリーズ、第1局の異様な雰囲気が現在まで続いていて、羽生王座に劣勢の色が濃い。よって本局も私は、中村六段ノリだった。
対局開始。居飛車党の2人だから相居飛車は確定している。先番羽生王座の▲7六歩に、中村六段は△8四歩。横歩取り志向なら△3四歩だから、中村六段は矢倉か角換わりを望んだわけだ。
羽生王座は▲2六歩とし、これで角換わりの将棋がほぼ確定した。
中村六段は18手目△7四歩。これが最近の曲者で、早繰り銀からどんどん攻めよう、の意である。
この△7四歩、私が子供の時の縁台将棋では、その前の△6二銀を△7二銀とし、△8三銀と出るのが主流だった。プロはさすがに△7四歩~△7三銀~△6四銀だが、意図するところは同じであろう。
プロ将棋が進歩を重ねているにも拘わらず、その一部がアマの得意戦法に近づいてくるとは、おもしろいものである。
25手目羽生王座は▲4八金。いまや角換わりにおける主流の形だ。
中村六段は予定の△7五歩。以下▲同歩△同銀に▲2四歩が習いある反撃で、△同歩▲2五歩。ちなみに私と植山悦行七段の指導対局にも、これと似た局面が現れたことがある。
▲2五歩を△同歩なら、▲同飛で十字飛車となり、ゲームセット。中村六段の指し手が注目されたが、△3五歩! だった。

この意味が何だか分からないが、将棋というのは、指された瞬間にいい手だ、と分かることがある。この△3五歩がまさにそれで、見れば見るほど味わい深い。中村六段が短考で指したことから研究手は明らかで、この手を指したいがための、2手目△8四歩であった。
それにしても、対局開始からまだ1時間あまり。中村六段にいたっては考慮時間を30分も使っていない。あまりにも早い「新手披露」だった。
羽生王座は▲2四歩△2二歩を交換し、▲4五桂。桂は跳ばねば話にならない。羽生王座はカド番だが、指し手は全然萎縮していない。
対して中村六段は△8六銀から△4五銀と、桂を食いちぎった。このハツラツとした指し手はどうだろう。これが「将棋」とはいえまいか。
この応手がまた難しく、そのまま昼食休憩に入った。
再会後、羽生王座は▲4五同歩。しかし中村六段の猛攻は止まらず、数手後△4六銀で、羽生玉に詰めろがかかった。
観戦記担当の野月浩貴八段もつぶやいていたが、まだ午後1時台である。しかもこの詰めろがなかなかに受けにくく、先手玉の守りは▲2九飛1枚。いっぽう後手の駒台には角金銀が乗り、とても受けがあるとは思えない。私だったら「うまく攻められちゃったね」と投了するところで、いかな羽生王座としても、この攻めはほどけないだろう。これは早くも中村新王座の誕生かと思われた。
羽生王座は▲3四桂△5一玉を利かして、▲6八金。ここで野月八段は△3六角を指摘する。確かにそうで、この数の攻めが受けにくい。
ところがここで中村六段が大長考に入る。実に1時間39分を費やして、放った手は△7一歩!
いや実は私もこういう手は好きで、植山七段にこの類の手を指しては、「グゥー!!」と唸らせていたものだ。
とはいえこの局面で△7一歩はさすがに指せない。だが中村六段は、勝つという信念のもとにこの歩を打った。
▲9五角に△7三銀で夕食休憩。さすがにタイトル戦で、56手目△4六銀の局面はすぐに将棋が終わると思ったが、引っ張ってくれるのである。しかも先手有利の変化さえ出始めた。まことに将棋は複雑だ。
対局再開。羽生王座は▲8二銀。これに中村六段の△9四歩の催促が好手で、やはり中村六段が良いようだった。
▲7一銀成に△4一玉。この早逃げが好手で、中村六段が一手勝ちという結論となる。
だがこの△4一玉、そもそも57手目に▲3四桂と王手に打たれた時、△4一玉とまっすぐ引けば良かったのではと思うが、それは▲7一飛と合駒請求されて、後手がおもしろくなかったのだろう。
本譜は羽生王座が▲2三銀と突進するも、中村六段は冷静に対処し、80手目△3六角にて、羽生王座の投了となった。

中村新王座はうれしい初タイトル。おめでとうございます。全局を通じて、気迫がものすごかった。乃木坂46の伊藤かりんちゃんもよろこんでいることだろう。
対して羽生前王座は、棋聖のみの一冠となった。これは14年ぶりとのことである。やはり、第1局の負けが痛かった。
なお読売新聞の竜王戦観戦記では羽生二冠VS松尾歩八段戦が載っていたが、12日のそれでは早くも、羽生二冠の肩書が「棋聖」に変わっていた。
読売新聞の場合、リアルタイムでの肩書を尊重する。たとえば1987年、当時の高橋道雄二冠が王位を失冠した時、当時の観戦記は、翌日すぐに、肩書を「王位・棋王」から「棋王」に換えたものだ。
いずれにしても、序列8番目のタイトルを羽生一冠が名乗るのは稀有なことで、産経新聞は複雑な気分であろう。
引き続き20日からは、竜王戦七番勝負が始まる。羽生棋聖にとっては大変な勝負になるが、周りが心配することではない。百戦錬磨の羽生棋聖のこと、その時にはキッチリ調子を合わせてくることだろう。
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