一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

大内九段の新橋解説会(第29期竜王戦第3局)(中編)

2016-11-10 23:11:41 | 将棋イベント

第2図から△5二歩!
なるほど手はあるものだ。これで後手は一息つけそうである。
ここで▲6二歩成△5三歩▲7二成桂△同銀もあるが、丸山忠久九段は▲6二成桂と入った。しかし駒が逆になって、本意ではないだろう。
渡辺明竜王は△7三金直とし、ここから丸山九段は1分将棋。これは厳しい。
ここはいろいろ手があるところ。大内延介九段は▲6七金を示すが、「この手は1分じゃ指せないね」と却下。
藤森奈津子女流四段「でも何か指さなきゃならないですから、当たり障りのない手を…」
大内九段「でも終盤だからね」
そんな悠長な手は指せないでしょ、ということだ。
そこへスタッフから指し手が入った。スタッフの一人は、将棋ペンクラブのA氏によく似ている。
藤森女流四段「▲6一角」
「ろくいちかく!?」
大内九段が頓狂な声をあげる。「……。これは緩手ですね」
バッサリと切り捨てた。「▲6一角かあ…。ちょっとなあ…」
大内九段は考え込む。「この角は▲7一に打ちたいんですよ。角が入ったら▲8二角成から詰むからね。…▲6一角は、7二に駒が3つ利いてるでしょ。だからどうだったか。
まぁしょうがないやねえ。1分だからねえ」
これも時間切迫の災いか。「これで△4六歩が間に合ったら終わりだね」
大内九段は、形勢の針を戻したようである。
「丸山さんは、やっぱりこの局面まで30分ぐらい持ってないと。(ここで1分将棋じゃ)勝負観としてはよくないね」
大内九段がこちらを向いて言う。私たちは、そりゃそうだ、と同意する。
「ただこういう狙いはありますね。▲7一成桂~▲6二歩成~▲6三と△同金▲8三角成△同金▲7二銀。こうなれば先手勝ちでしょ」
「先生いま4手(連続で)指しました」
「4手指した? 3手でしょ」
大内九段と藤森女流四段のシュールな掛け合いである。私は苦笑するのみ。
そこへ指し手がきた。
「うれしいね。(指し手が)どんどんきて」
渡辺竜王はまだ時間があるが、それにしたって残りは数十分だろう。
△1八竜。
▲1八香△1二香の手待ち合戦は、後手に味方したようだが…。
「中盤で4分しかない人に負けちゃ、渡辺さんも情けないね。…梶浦君はどっちが勝つと思う?」
「先手勝ち…」と梶浦宏孝四段が遠慮気味につぶやく。
大内九段は意外そうだった。ということは、大内九段は後手持ちということか。
どこかの電光広告板から、松山ケンイチの缶コーヒーのCMが流れてきた。今、将棋界で最もホットな俳優である。
▲7一成桂△6五香▲4九飛。ついに先手の飛車も働きだした。
「ここで△4八歩はありません。△4七歩も、次に△4八歩成が、竜の利きを止めちゃってます」
「先生実は▲6一角が着実な一手だったとか…」
藤森女流四段が恐る恐るいう。大内九段はそれには答えず、△6七香成を示す。以下▲4一飛成△7九角成▲同金△7七金(参考2図)まで進めた。これは△8八の地点で清算して、△7七金以下の詰めろである。これは変化の余地もあまりなく、後手がおもしろいのではないか。

「梶浦君の言う先手勝ちの順を教えてよ」
大内九段が意地悪く?聞く。梶浦四段は困った表情だ。例えば、という感じで、先の△7九角成に▲同銀を示した。
そこに指し手が入ってきた。
「△4六歩です」
「△4六歩? △4六歩!? △4六歩!?!? こんなことやってんの?」
怖いもののない大内九段、弁舌がさえまくる。「△6七香成るよりしょうがないんじゃないの?」
大内九段は理解不能、という表情だ。指し手が入ってくる。
▲5九飛△6七香成▲5七飛△同銀成。
▲5九飛では▲6二歩成も考えられたところで、微妙。△6七香成以下は必然であろう。
▲6二歩成。
待望の一手だ。「ここで△4九飛が詰めろならいいんですけど、どうもそうではないようですね」
でも、△4九飛が着手された。
「▲8三角成△同金寄▲7二銀でしょうか。でも先に角を渡すからなあ。じゃあ単に▲4五角と打ちますか」
果たして丸山九段は▲4五角(第3図)。

「1分将棋でも正しく指しますね」
大内九段が感心したように言う。
指し手が入ってこない。渡辺竜王も持ち時間が乏しくなっているはずだ。
「…ちょっと渡辺さんの勝ちが見えないけど、感じが丸山さんの勝ちのような気がしますね」
と大内九段。
時刻は午後7時8分。後ろの古本市は8時までである。私の見立てでは、もう終局している時間で、今ごろは改めて古本屋めぐりをしているはずなのだが、微妙な状況になってきた。さっき、マンガを買っておいてよかった。……ウン? ウウン!?
ここで、予期せぬ事態が起こった。
(つづく)
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2 コメント

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参考になる相穴熊の終盤戦 (T)
2016-11-11 10:47:02
▲6一角は素人目にも違和感がある手でしたが
局面が進むといい手に思えてくるから不思議でした。

▲4九飛に△6七香成は▲4一飛成で1手負けと
竜王は判断したのでしょうね。

梶浦四段指摘の▲7九同銀が気づきにくい手。
それで先手玉に詰めろがかからないとは・・

私ならノータイムで▲7九同金と成香当たりを避けたくなりますが、
それだと龍の横効きが8筋まで通って悪いとは
目から鱗で驚きでした。

後手玉は▲8三角成~▲7二銀で必死なので
やもなく△4六歩というところでしょうか。

時間が無い中で両対局者ともよく読んでると思いました。

▲6一角や▲7九同銀は穴熊戦独特の感覚というか
勉強になりました。

現地解説で梶浦四段が大師匠を前に
かなりやりにくそうな光景が目に浮かびました(笑)。

まだ大師匠から信頼がないのかもしれませんが
現地で局面を一番正確に捉えていたのは恐らく彼だったのでしょうね。
▲6一角と△4六歩 (一公)
2016-11-12 00:12:38
>Tさん
▲6一角は妙手というか妙な手というか、とにかく不思議な手でした。
△4六歩の裏にも膨大な読みがあったようで、ただただ感心しました。
梶浦先生は強いですね。今後が楽しみです。

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