一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

新橋駅前での名人戦解説会(後編)「羽生名人、絶体絶命」

2016-05-28 13:55:46 | 将棋イベント
スーツ姿の紳士氏はOk氏に見えた。昨年秋、東京ビッグサイトの東京モーターショーでOk氏そっくりな人を見かけ、それが当人という笑い話があったが、彼もまたOk氏にそっくりだった。
その紳士氏が私を見て、「おお大沢さん」と言った。やっぱりOk氏本人だった。
Ok氏はその場を離れる。しばらくして戻ってきた。トイレに行っていたらしい。
「新橋で解説会をやってたことは知ってたんだけどさ。やっぱり(大沢さんのブログに)書かれると、来たくなるよね」
会社の同僚と見に来たそうで、しばらく雑談した後、もとの席に戻っていった。
局面は羽生善治名人が絶体絶命である。大内延介九段は「▲8一飛成なら投了かもしれませんね」と語っていたが、そこで△8六歩が指された。なかなか妖しい手で、先手がアマならこれでだまされるところだ。
これには▲9一竜が第一候補。しかしギリギリで詰みはないようだ。仮に▲7八玉なら最終▲6七銀までの詰みがあった。
「だから▲7八玉のほうがよかった…」
と大内九段はつぶやくが、九段の最初の解説は「▲7九玉」だったはずだ…。「(▲9一竜のほかの候補は)▲8二竜△9四玉▲9六歩でシッシ(必至)なんだけど、これは先手つまらないでしょう」
これは△8八角▲6九玉△9九角成で粘れそうだ。
大内九段の変化手順は、「△7八金▲同玉△8七角▲6七玉△7六角成!」だが、「▲5七玉△7五角▲4六玉」で逃れている。
「角が二枚働いてもダメなんですね」
と藤森奈津子女流四段。梶浦宏孝四段の推奨も▲9一竜で、実戦もそうなった。
「逃げれば詰みなので△9二金ですか」
「先生、合駒をしないで逃げました」
大内九段が言うと、藤森女流四段がそう返した。
「逃げた? …これはもう、絶対詰みですね」
これには▲7六桂がピッタリだ。大内九段は名人の投了を予想したが、△7五玉▲9五竜が指された。
「ここまで何手? …129手? いいとこかね。これ以上やらないでしょう羽生さん。あ、やるの?」
そこに名人投了の報が入った。第1局と同じ手数だ。
「羽生さん出来の悪い将棋でしたね。盛り上がるところがなかった。(このまま終わったらつまらないから)皆さん羽生さんを応援してください。(羽生さんが不出来で)さびしい限りです」
と大内九段が総括した。ああ、この人は羽生名人のファンなんだな、と思った。
時に午後7時31分。ここ新橋駅前で解説を聴くのは3回目だが、だんだん将棋が大差になってくる。第1局、解説の休憩を挟んで8時半すぎまでやったのが、いまでは懐かしい。
次回第5局は、30、31日。中3日では羽生名人もつらいが、どうなるか。大盤解説は31日に同所で行われるが、同所での大盤解説はそれで最後となる。もし名人交代になれば、羽生世代以降で初の戴冠となる。大いに注目したい。

「大沢さんは飲まないからなぁ…」
Ok氏が改札口の手前でつぶやいたが、私も観たいテレビがあり、あまり話題を拡げなかった。そう、私はこうして交流の目をつぶし、自然に内向的になってゆくのだ。
3人で、埼玉方面行きの京浜東北線に乗る。同僚氏も子供のころ将棋は指したが、中学生になってやめてしまったという。昭和43年生まれとのことで、けっこう歳いってるんだなと思ったがよく考えたら、私のほうが年上なのだった。ああもう、眩暈がする。
「私はネ、この人のブログを会社でよく見てるんですよ」
Ok氏が同僚に言う。「記事が文字ばかりの時はいいんだけど、将棋の盤面が載っていると、後ろを通った人にバレちゃうから、見にくい」
最後に苦笑した。
読者とはありがたいものである。
コメント
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