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ブランド米戦争

2015年12月29日 | 復興

⇒つや姫、七つ星、ユメピリカ、青天の霹靂、など、新しい品種のコメが人々の目に触れる様になってきましたが?

◯そうですね、特に北海道のうまいコメ攻勢がすごい勢いですね。北海道は、一昔前までは、あまりおいしいとは言えないコメ地帯だったことを考えると、今昔の感があります。しかし北海道米に限らず、おいしいコメを、大々的に宣伝し、家庭への浸透をめざす産地が非常に多くなりました。これを「コメブランド戦争」と言って、一つの社会現象と見ている人もいるようです。

これらのコメは、皆「特A」といううまいコメの証明書を持っています。その証明は日本穀物検定協会というところが行っていまして、この協会で昭和46年から毎年「食味ランキング」というのをやっていまして、その最高級の評価を『特A』と言います。

◯特Aの評価を受けたコメは、現在42品種に及んでいます。10年前には17品種しかなかった。それが、この4-5年で20品種、23品種、29品種、38,42と倍以上に増加していったんですね。「コシヒカリ」、「あきたこまち」、「ひとめぼれ」といった定番の中に、近年さきほどあげられた「つや姫」や「七つ星」、ユメピリカ、「青天の霹靂」、「森の熊さん」と言った品種が入ってきました。「新之介」などがあります。

 

⇒どうして近年ブランド米が各地に出てきたのでしょうか?

◯、幸いにしてと言うか、各県ではこの40-50年間うまい新品種の開発や栽培技術の開発に力を入れてきたんですね。なぜうまいコメの開発に力を入れてきたかと言えば、それは、45年続いた生産調整政策のたまものだったのです。

生産調整政策は、生産を制限するというものでしたから、我が国のコメの品種改良の方向は、いきおい量を求める多収性品種開発から、量を抑えたうまいコメの良食味品種改良に転換したのです。また栽培技術もうまいコメというのは窒素を控えますから収穫量が少なくなります。その結果、どの県でもうまいコメを作れるようになったということですね。

 

◯ただ、各県にうまいコメが出てきたというのは、ブランド米戦争の必要条件でしかありません。もっと重要な要因としては、コメが売れなくなったと言うことがあります。売れないので新たな商品を投入する必要が出てきたと言うことですね。

コメは半世紀にわたって生産過剰状態が続いています。毎年8万㌧約1%強需要が減退しています。しかも食管法が改正されて、20年立ち、各県の農協がコメ販売に責任を持たなければならなくなっています。戦略的に対応しなければコメは売れなくなっていると言うことです。過剰市場で、コメを売るとなれば、通常のコメとは異なった商品を市場に投入しなければならなくなったと言うことです。それが特Aのブランド米ということです。

 

⇒ブランド米販売には、何か共通した特徴があるのでしょうか?

第一においしいコメがあると言うことが大前提ですが、その上に、第二に生産者や生産地を限定して生産量を制限し、徹底した品質管理をしていると言うことが大きな特徴になっています。例えば、いずれも30万トン以上のコメを作っている県ですが、つや姫は(6000ha、3万トン)、ユメピリカは約1万ha、6万㌧、青天の霹靂は550ha、3千トン)といった具合です。これらの生産限定米を、さらに第三に県を代表する品種として官民挙げ、大々的に広告宣伝をしていると言うことですね。

 

⇒結果は?

◯生産を制限しながら産地のイメージアップをはかる戦略は思いの他、産地には良い効果をもたらしています。

生産者までの限定戦略は、いまから5-6年前に山形のつや姫が作り上げた戦略が有名ですが、当初心配したのは、はずれた生産者から不満が出ないかと言うことでした。ですが実際にやってみると、全ての農家に夢と自信を与えるだけでなく、県民全体が誇りに思うような結果となりました。

◯そもそも、稲作生産の現状は9割が自給農家や兼業農家になっています。そうした中で、技術を持っているプロの農家は自分の力を出せずにいるわけです。ブランド米の生産者に指名されることによって「篤農家の力、技術が示せる」となり、「つや姫」が全国的に高く評価されると、県全体で前向きに受け入れるようになりました。

◯こうなると、消費者に評価され、農家にもうけるブランド米へのてこ入れは、県行政にとっても農業振興のシンボルとされるようになってきています。そこで、予算をつけて大々的な宣伝を打つのを後押しするようになり、このことが、ブランド米戦争と言われる状況を作り上げていると言って良いでしょうね。現在、ユメピリカの広告露出度(GRP)が最も高くなっています。

 

⇒こうしたブランド米戦争は、我が国の米産業の将来にとってどのような意味を持つのでしょうか?

◯ブランド米の市場はコメ市場では限られた市場と言うことです。この狭い市場を狙って各産地とも、工夫を凝らしているというのが現状です。家庭用米のなかでもさらに少数派が高級志向対応なので、ブランド米市場が一部には残ってはいくものの、これがコメ全体のトレンドかと言えば「違う」と言わざるを得ません。コメ市場は、すでに業務用米で価格訴求の市場が太宗となっています。これからの米は、ブランド米とは異なる「良食味で低価格」を基本とする方向にますますシフトしていくと考えられます。農業としては、大規模化、コストダウンが主流となります。

消費者のわくわく感を醸しだし、産地の農業者に誇りを持たせるブランド米がなくなることはありませんが、今後は厳しいと言えます

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