*自作の小説です*
携帯を壊してしまった。なんでこんなことをしてしまったんだろうか、自分でやったことなのに呆れてものも言えない。
携帯を何度開いてみてもそこには当然のように何も映らない。これは本格的に壊れているとしか考えられない。
あたしは何百回目かのため息をついた。ちょっとしたメールでの誤解に火がついて、ケンカして、携帯に八つ当たりして、壊れた。自分でも馬鹿だと思う。
しょうがないからあたしは携帯ショップに行くことにした。メールができないと、電話ができないと、ネットに接続できないと、世界から切り離されたような感じがしてならない。誰とも繋がっていない世界なんて耐えられないんだ。
外へ出てみるといつの間にか日は傾き、西の地平線に沈みかけていた。気付かないうちに夜が訪れようとしていたんだ。外に出て、あたりがオレンジ色に照らされているのを見て初めて気付く。
ふと公園の側を通りかかったとき、子供達の姿が目に入った。小学生低学年くらいの子達だろうか、皆で泥んこになり、砂遊びをしている。「ホラ、もう暗くなってくるし家に帰るよ」大人の声が聞こえてくる。あぁ、あたしにもこんな時期があったっけ。無邪気に笑いあって、泣いて、純粋に人と接していたあの頃。
こんな光景を見るのはいつぶりだろうか。
いや、違う。こんな光景は毎日見ている。だけど頭に入ってきてないだけだ。だってあたしの意識はいつだって携帯の中なんだから。
空を見上げる。雲が夕焼けの色に染まって、夜と夕方が交じり合っていた。綺麗だ、と、純粋に思った。
いつからだろう、あたしの目線が画面にしかいかなくなったのは。携帯を閉じているときでも、頭はいつでも現実から離れているところにある。
いつからだろう、あたしが本当の意味での繋がりをもてなくなったのは。何をするにも携帯と一緒。友達と遊んでいる時でさえ携帯を気にしている自分がいる。
こんなちっぽけなものに頼っている自分に軽い嫌悪感を覚えることもある。つながりばかり気にしてうわべだけの関係になって、自分が何なのか分からなくなる。
あたしは電波に縛られている。けれど自分を変えることもできそうにないから電波から開放されることはない。
太陽の方に目をやった。すると夕日があたしの心の中にまで染み込んでくるような感じがした。あんなにも綺麗に輝く太陽がこんなちっぽけで空っぽななあたしを満たしていく。嫌な気持ちでいっぱいだったあたしの胸の中を温かな日の光で包み込んでたくさんのしがらみを溶かしてくれる。
そうだ、ケンカしてしまった友達に会いに行こう。そしてたくさんの話をしたい。携帯越しでなく、画面越しでもなく。本当の意味での繋がりを感じたい。
そんなことを考えているうちにあたしは携帯を壊してしまったことがそんなにも気にならなくなった。むしろ開放的だった。
辺りはもう暗くなりかけていて、歩道には電灯が照っていた。
あたしはもと来た道を自転車で走っていく。