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19世紀には労働者はみんな「派遣」だった
派遣や請負のような形で、企業の内部に契約労働者がいるのは、新しい現象ではない。むしろ資本主義の初期には、親方が職工を契約で雇って職場を点々とする内部請負制が主流だった。これは周知の事実なので、私の昔の本の記述を丸ごと引用しておく。
19 世紀中葉のアメリカでは,工場の中で一定のまとまった工程を請負人(contractor) と呼ばれる熟練工が管理し,その配下の職工を使って生産を行う「内部請負制」と呼ばれるシステムがとられていた.これはギルドの影響を残すイギリスの制度が輸入されたもので,請負人自身は被雇用者であったが,資本家と請負価格などについての契約を結んで職場を管理し,その配下にある職工たちを歩合給でやとって作業を行なった.[...]日本でも,第一次大戦ごろまでは「親方」あるいは「頭」と呼ばれる職長が職場を管理する「間接的管理体制」が造船業などの重工業に広く見られた.垂直統合された企業に常用労働者として雇用される形態は、歴史的には請負制より新しい。
親方は入札によってもっとも低い価格を提示したものが仕事を請け負い,やとわれる職工たちの多くも「渡り」と呼ばれる自由労働者であり,工業化初期の日本においては熟練工に対する需要は大きかったから,彼らは高い賃金を求めて各地の工場を渡り歩いたのである.たとえば1918 年の統計では,工場労働者の76.6%が勤続期間3 年未満であり,10年以上の長期勤続者はわずか3.7%と推定され,当時の労働市場はむしろ新古典派経済学の想定するような流動性の高い「完全」な市場に近かったと考えられる.(pp.15-6)
日本では資本蓄積が十分でなかったこともあって大企業のほとんどは官営企業であり,重工業のにない手は軍工廠や財閥系企業など一部に限られていた.こうした部門では日露戦争以後,軍需が急速にのびたため,設備の拡張によって職工の不足と賃金の急騰が生じるとともに労働者の地位の向上にともなって1906-7 年にかけて各地の造船所で大規模な争議が起き,深刻な経営問題となりつつあった.したがって「終身雇用は日本の文化や伝統に根ざしたものだ」という御手洗富士夫氏の主張は、論理的にも歴史的にも根拠がない。長期雇用は、垂直統合という20世紀に固有の企業統治システムの副産物にすぎない。グローバルな水平分業の拡大によって、「日本的雇用慣行」はITゼネコンの競争劣位の最大の原因となりつつある。新卒のとき、たまたま入った会社に一生とじこめられることは、労働者にとっても幸福ではない。彼らが自由に企業を移動することを支援する制度が必要である。
これに対応するために日本の経営者も内部請負制の間接的管理体制から経営者による直接的管理体制に移行しはじめた.1910 年代から各地の造船所に共済組合や生活扶助施設があいついで設けられ,労働者の拠出や企業の補助によって医療や年金などの給付を行うしくみが作られはじめた.そのねらいは,賃金だけでなく,こうした付加給付(fringe benefit) や福祉施設の充実によって熟練工を企業内に「囲いこむ」ことにあった.(p.28)
電波政策の戦略建て直しを
2007-12-12 / IT
きょう開かれた電波監理審議会では、2.5GHz帯についての諮問(事業者選定)が行なわれるといわれていたが、見送られたようだ。きょう答申の出されたIPモバイルの事件にみられるように、総務省の審査は失敗続きだ。これで空いた2GHz帯も含めて、仕切りなおしてはどうか。
さらに問題なのは、2011年の「アナログ放送終了」にともなって空くことになっているVHF帯と、UHF帯の整理で空く700MHz帯だ。総務省では業者の「研究会」が行なわれており、VHF帯では放送業界が「われわれの帯域だ」と主張してISDB-T(ワンセグ)に割り当てることを主張し、700MHz帯はMediaFLOに割り当てられる方向だ。しかしISDB-Tは世界から孤立した「日の丸規格」であり、MediaFLOについてはKDDIとソフトバンクの足並みが乱れてサービス開始が遅れている。
何より問題なのは、研究会という名目で、水面下の「一本化工作」が行なわれていることだ。公的資産(総額で数兆円規模)の譲渡について、このように談合が行なわれるのは、独禁法にふれる疑いがある。特に700MHz帯は、アメリカでもグーグルなどに割り当てられ、まったく新しい技術が出てくることも予想される。たとえ今、最善の技術を選択したとしても、市場や技術は急速に変化しており、5年先、10年先に何が正解になるかはだれにもわからない。かつてPDCという日の丸規格を選んだ結果、日本の携帯電話業界が世界の孤児になった失敗を繰り返してはならない。
今のように技術が急速に変化しているときは、なるべくオプションを広げることが重要だ。PCやインターネットが出てきたとき、「何に使うのかわからない」といわれたが、それが成功したのは、何にでも使える汎用技術だったからだ。その意味で、アメリカでも日本でも「オープン化」が議論されているのは重要な変化である。サービス層とインフラ層を水平分離し、帯域はインフラ卸としてキャリアに割り当て、サービスはMVNOに自由に参入させることが合理的である。
だから美人コンテストでも技術は審査せず、帯域をどれだけMVNOに開放するかといった技術中立的な基準で審査を行なうべきだ。また将来ほかの技術が有利になった場合には変更できるオプションも与えることが望ましい。もちろん一番いいのは、用途も技術も特定せず、オークションで帯域だけを割り当てる帯域免許である。この場合、電波を転売する二次市場も整備する必要がある。経済財政諮問会議で日本経団連の御手洗会長などが出した意見書でも、「電波の二次取引市場の創設」を提言している。これは当然、一次市場=周波数オークションが前提だ。
失敗続きの電波行政のおかげで、日本の携帯電話メーカーは11社あわせて世界市場シェアの9%と、絶滅の淵に立っている。その危機感は総務省も共有しているようだが、それをICT国際競争力会議という時代錯誤の産業政策で挽回しようとしている。けさの日経新聞にも、それに翼賛するPR特集が出ているが、これは20年前に通産省が犯した失敗の繰り返しになる。行政が技術を選択して「官民の総力を結集」するのではなく、グローバル市場での競争によって最適な技術と企業が選ばれるような制度設計が必要である。
今回、2.5GHz帯の決定を先送りしたのは賢明な選択だ。総務省はこの際、2GHz帯や1.7GHz帯だけでなく、VHF帯や700MHz帯も含めた総合的な戦略を建て直し、オークションを含めた電波政策の抜本的な改革を考えるべきだ。これだけ大幅な電波の再編のチャンスはもう二度と来ない。
さらに問題なのは、2011年の「アナログ放送終了」にともなって空くことになっているVHF帯と、UHF帯の整理で空く700MHz帯だ。総務省では業者の「研究会」が行なわれており、VHF帯では放送業界が「われわれの帯域だ」と主張してISDB-T(ワンセグ)に割り当てることを主張し、700MHz帯はMediaFLOに割り当てられる方向だ。しかしISDB-Tは世界から孤立した「日の丸規格」であり、MediaFLOについてはKDDIとソフトバンクの足並みが乱れてサービス開始が遅れている。
何より問題なのは、研究会という名目で、水面下の「一本化工作」が行なわれていることだ。公的資産(総額で数兆円規模)の譲渡について、このように談合が行なわれるのは、独禁法にふれる疑いがある。特に700MHz帯は、アメリカでもグーグルなどに割り当てられ、まったく新しい技術が出てくることも予想される。たとえ今、最善の技術を選択したとしても、市場や技術は急速に変化しており、5年先、10年先に何が正解になるかはだれにもわからない。かつてPDCという日の丸規格を選んだ結果、日本の携帯電話業界が世界の孤児になった失敗を繰り返してはならない。
今のように技術が急速に変化しているときは、なるべくオプションを広げることが重要だ。PCやインターネットが出てきたとき、「何に使うのかわからない」といわれたが、それが成功したのは、何にでも使える汎用技術だったからだ。その意味で、アメリカでも日本でも「オープン化」が議論されているのは重要な変化である。サービス層とインフラ層を水平分離し、帯域はインフラ卸としてキャリアに割り当て、サービスはMVNOに自由に参入させることが合理的である。
だから美人コンテストでも技術は審査せず、帯域をどれだけMVNOに開放するかといった技術中立的な基準で審査を行なうべきだ。また将来ほかの技術が有利になった場合には変更できるオプションも与えることが望ましい。もちろん一番いいのは、用途も技術も特定せず、オークションで帯域だけを割り当てる帯域免許である。この場合、電波を転売する二次市場も整備する必要がある。経済財政諮問会議で日本経団連の御手洗会長などが出した意見書でも、「電波の二次取引市場の創設」を提言している。これは当然、一次市場=周波数オークションが前提だ。
失敗続きの電波行政のおかげで、日本の携帯電話メーカーは11社あわせて世界市場シェアの9%と、絶滅の淵に立っている。その危機感は総務省も共有しているようだが、それをICT国際競争力会議という時代錯誤の産業政策で挽回しようとしている。けさの日経新聞にも、それに翼賛するPR特集が出ているが、これは20年前に通産省が犯した失敗の繰り返しになる。行政が技術を選択して「官民の総力を結集」するのではなく、グローバル市場での競争によって最適な技術と企業が選ばれるような制度設計が必要である。
今回、2.5GHz帯の決定を先送りしたのは賢明な選択だ。総務省はこの際、2GHz帯や1.7GHz帯だけでなく、VHF帯や700MHz帯も含めた総合的な戦略を建て直し、オークションを含めた電波政策の抜本的な改革を考えるべきだ。これだけ大幅な電波の再編のチャンスはもう二度と来ない。
「日本的経営」の偽善
昨日の記事には、予想どおり「財界の犬」とか「違法行為を擁護するのか」などの批判があった。そこでバランスをとって、というわけでもないが、朝日新聞の取材班の書いた本から、御手洗氏の発言を引用してみよう(pp.97〜8)。「キヤノンは、終身雇用という人事制度をとっている。それは終身雇用という制度が日本の文化や伝統に根ざしたものであり、日本人の特性を引き出すのにもっとも適したシステムだからである。」トヨタやキヤノンは「終身雇用」や「日本的経営」を売り物にしているが、それは派遣労働者や請負労働者を「外部から来た人」として計算に入れてないことによる偽装終身雇用にすぎない。一時は世界から賞賛された日本的経営とは、このような二重構造の中で、派遣労働者や下請けを人間扱いしないで維持されてきたのだ。
「アメリカには[・・・]何千、何万という職能分析と給料が地域別に出ており、自分がどこに行けばいくらで雇われるかがわかるから、安心して職を変えられる。日本では、そういう仕組みができていないのに、終身雇用をなくせなどと、学者などが軽々しくいうのは無責任だと思います。」
「セル方式[キヤノン独自の生産方式]で、延べにして2万2000人を減らした計算となるが、増産もあったので、半分ぐらいが残り、実際に減らしたのは約1万人。[・・・]別にクビを切ったわけではありません。外部から来ていた人が引き上げて行っただけです。」(強調は引用者)
このように終身雇用なんて実際には存在しないのだから、それが「日本の文化や伝統に根ざしたもの」だという御手洗氏の話も嘘である。「文化と伝統」を持ち出すのは、現状維持したい人々のありふれたレトリックだが、戦前の日本には終身雇用なんかなく、職人が腕一本で多くの会社を渡り歩くのが当たり前だった。現在のような雇用慣行ができたのは、1960年代以降である。
だから問題は、このような偽装終身雇用を守ることでもなければ、朝日新聞の取材班が主張するように「請負労働者を正社員化」することでもない。アメリカ経験の長い御手洗氏も理解しているように、「何千、何万という職能分析と給料が地域別に出ており、自分がどこに行けばいくらで雇われるかがわかるから、安心して職を変えられる」仕組みをつくるとともに、社員の雇用形態を契約ベースにして多様化し、労働の流動性を高めることだ。
本書の最後に合成の誤謬というケインズの言葉が出てくるが、取材班はその意味を取り違えている。個々の労働者にとっては、請負より正社員のほうがいいに決まっているが、失業より請負のほうがましだ。ところが朝日が激しくキャンペーンを張ると、企業は「コンプライアンス」対策として請負契約を切り、請負労働者は職を失う。これは、各個人にとって望ましい貯蓄が、経済全体では有効需要を低下させて不況をもたらす、というケインズの指摘した合成の誤謬とそっくり同じ構造である。
問題は請負契約をなくすことではなく、こうした二重構造を作り出している労働法制を改めることだ。具体的には、労働基準法で「企業は労働者を解雇できる」という解雇の自由を明確に規定し、例外として解雇できない条件を具体的に列挙すること、労働者派遣法を改正して派遣労働者を正社員に登用する義務を削除すること、職業安定法を改正して請負契約を「労働者供給事業」の一形態として認知すること、職業紹介業を完全自由化することなどが考えられよう。
追記:コメントで教えてもらったが、ベッカーも解雇を禁止する「テニュア」は必要ないと論じている。本当に必要な労働者は、アメリカの企業でも囲い込んで雇用を保障するのだから、法律で保障する必要はない。
偽装請負を生み出しているのはだれか
野党4党は、偽装請負で行政指導を受けたキヤノンの御手洗会長(日本経団連会長)を国会に参考人招致することを決めた。彼らは「格差社会」の原因が小泉内閣の「市場原理主義」にあるとの主張にもとづいて御手洗氏を攻撃するものと思われるが、当ブログでたびたび指摘してきた通り、これは経済学の基本的なロジックも理解しない誤りである。
もちろんキヤノンが違法行為をしたこと自体は、批判されてしかるべきである。しかし、その法律が労働実態に合わないものだとすれば、法律を改正することも視野に入れて考えるべきだ。野党が「開き直りだ」と問題にしている御手洗氏の経済財政諮問会議における発言は、次のようなものだ。
野党は御手洗氏をつるし上げて、「労働者はすべて正社員にしろ」とでも主張するのだろうか。もしそういうことをしたら、正社員は解雇が事実上不可能なので、企業は忙しくなったら正社員に残業させ、新たな採用はしないだろう。結果として、マクロ経済的には労働需要が低下して失業率が上がり、派遣や請負で労働していた人々の多くは職を失うだろう。また御手洗氏もいうように、国内の規制が強ければ、業務を海外にアウトソースして空洞化が進むだけだ。
これが経済学の教科書の最初に書いてある「需要と供給の法則」である。雇用規制を強化すると労働需要が低下し、失業者の雇用機会を奪って、結果的には格差は拡大する。日本より解雇規制の強いフランスの失業率は、10%を超えている。偽装請負やフリーターやニートを生み出している根本的な原因は、正社員だけを「正しい雇用形態」と考え、労働市場の反応を考えないで労働者の既得権を守る厚労省の近視眼的パターナリズムにあるのだ。
厚労省の考える労働者保護とは、いま雇われている労働者の保護にすぎず、もっとも弱い立場にいる失業者は視野に入っていない。問題は非正規社員を正社員に「登用」することではなく、逆に正社員の解雇制限を弱め、労働市場を流動化して、衰退産業から成長産業への人的資源の再配分を加速することだ。それが主要国で最低に落ちた日本の労働生産性を高め、成長率を引き上げ、労働需要を高めて失業率を下げ、結果的にはすべての労働者の利益になるのである。
社民党や共産党が「階級政党」としてこういう主張をするのはしかたがない。どうせ彼らには何の影響力もない。問題は、次の選挙で政権を取るかもしれない民主党が、こういう社民的パターナリズムに汚染されていることだ。民主党の議員も、当ブログを読んでいるようなので、先日紹介したベッカーの記事をよく読んで、経済学を勉強してほしい。
追記:弾さんからTBがきたが、引用部分が違うんじゃないだろうか。雇用規制を強化したら失業率が上がることは、実証的にも間違いない。問題は「正社員の解雇制限を弱めたら、労働市場が流動化する」かどうかで、これについては、おっしゃるようにES細胞(単純労働者)については効果がある(弾力性が高い)が、熟練労働者ではむずかしい。しかし最近は、研究職でも契約ベースの雇用が増えている。現実には、そうして徐々に多様化していくしかないだろう。
(*)条件つきで3年まで延長できる。
もちろんキヤノンが違法行為をしたこと自体は、批判されてしかるべきである。しかし、その法律が労働実態に合わないものだとすれば、法律を改正することも視野に入れて考えるべきだ。野党が「開き直りだ」と問題にしている御手洗氏の経済財政諮問会議における発言は、次のようなものだ。
請負は、請負事業者が全部自分で労働者をトレーニングして、何かの仕事を請け負う。その場合、受け入れ先の人はいろいろ指揮命令ができない。これは当たり前のことだと思う。一方で、派遣は、ただ単純に派遣して、派遣先で監督や訓練をしてもらおうということになっている。これも問題ない。派遣労働者は1年以上(*)雇用すると正社員にしなければならないなどの規制があるので、経営者はそういう制限のない請負契約を使う。しかし労働実態としては、請負契約の労働者が受け入れ先に常駐して普通の社員と同じように働いていることが多い。これが「請負契約を装った人材派遣」であり職業安定法違反だ、と朝日新聞がキャンペーンを張り、厚労省がキヤノンなどに行政指導したものだ。
ところが、請負の方が中小企業に多いため、例えばAという会社に行って請け負う、それからまたBに行って違う職種で全部請け負うような場合がある。その場合、現実には、会社の職種に応じた訓練を請負事業者が全て行うことはかなり難しい。ところが、受け入れた先で指揮命令してはいけないという中に、いろいろ仕事を教えてはいけないということも勧告で入っている。そこに矛盾がある。(強調は引用者)
野党は御手洗氏をつるし上げて、「労働者はすべて正社員にしろ」とでも主張するのだろうか。もしそういうことをしたら、正社員は解雇が事実上不可能なので、企業は忙しくなったら正社員に残業させ、新たな採用はしないだろう。結果として、マクロ経済的には労働需要が低下して失業率が上がり、派遣や請負で労働していた人々の多くは職を失うだろう。また御手洗氏もいうように、国内の規制が強ければ、業務を海外にアウトソースして空洞化が進むだけだ。
これが経済学の教科書の最初に書いてある「需要と供給の法則」である。雇用規制を強化すると労働需要が低下し、失業者の雇用機会を奪って、結果的には格差は拡大する。日本より解雇規制の強いフランスの失業率は、10%を超えている。偽装請負やフリーターやニートを生み出している根本的な原因は、正社員だけを「正しい雇用形態」と考え、労働市場の反応を考えないで労働者の既得権を守る厚労省の近視眼的パターナリズムにあるのだ。
厚労省の考える労働者保護とは、いま雇われている労働者の保護にすぎず、もっとも弱い立場にいる失業者は視野に入っていない。問題は非正規社員を正社員に「登用」することではなく、逆に正社員の解雇制限を弱め、労働市場を流動化して、衰退産業から成長産業への人的資源の再配分を加速することだ。それが主要国で最低に落ちた日本の労働生産性を高め、成長率を引き上げ、労働需要を高めて失業率を下げ、結果的にはすべての労働者の利益になるのである。
社民党や共産党が「階級政党」としてこういう主張をするのはしかたがない。どうせ彼らには何の影響力もない。問題は、次の選挙で政権を取るかもしれない民主党が、こういう社民的パターナリズムに汚染されていることだ。民主党の議員も、当ブログを読んでいるようなので、先日紹介したベッカーの記事をよく読んで、経済学を勉強してほしい。
追記:弾さんからTBがきたが、引用部分が違うんじゃないだろうか。雇用規制を強化したら失業率が上がることは、実証的にも間違いない。問題は「正社員の解雇制限を弱めたら、労働市場が流動化する」かどうかで、これについては、おっしゃるようにES細胞(単純労働者)については効果がある(弾力性が高い)が、熟練労働者ではむずかしい。しかし最近は、研究職でも契約ベースの雇用が増えている。現実には、そうして徐々に多様化していくしかないだろう。
(*)条件つきで3年まで延長できる。
民主党は労組の味方か納税者の味方か
けさの日経新聞のインタビューで、民主党の藤井税調会長は、今国会の焦点になっている道路特定財源の一般財源化について「自動車重量税と自動車取得税はゼロにする。揮発油税については一般財源化するかどうか議論したい」と妙に腰の引けた回答をしている。道路財源は、安倍内閣で一般財源化の方向が出されたが、「道路族」議員が反対して宙に浮いている。福田首相も「慎重に検討する」と言っているから、これで一般財源化はつぶれたようなものだろう。
道路特定財源(特に揮発油税)が必要もない道路へのバラマキの元凶であることは、いうまでもない。不思議なのは、バラマキを批判している民主党が、一般財源化に否定的であることだ。おかしいな・・・と思って「自動車総連 道路特定財源」で検索してみたら、こんな記事が出てきた。要するに、一般財源化には、労組も反対だから民主党も(本音では)反対なのだ。
ちょうどゲアリー・ベッカーが昨日のブログで、「労組の没落」と題した記事を書いているので、紹介しておこう:
追記:国会審議を見るまでもなさそうだ。民主党は、キヤノンの御手洗会長を参考人として国会に呼び、「偽装請負」の問題を追及するという。これは前の記事でも書いたように、現在の労働者派遣法に無理があるので、企業だけを槍玉に上げるのは短絡的な「一段階論理」のポピュリズムだ。
道路特定財源(特に揮発油税)が必要もない道路へのバラマキの元凶であることは、いうまでもない。不思議なのは、バラマキを批判している民主党が、一般財源化に否定的であることだ。おかしいな・・・と思って「自動車総連 道路特定財源」で検索してみたら、こんな記事が出てきた。要するに、一般財源化には、労組も反対だから民主党も(本音では)反対なのだ。
ちょうどゲアリー・ベッカーが昨日のブログで、「労組の没落」と題した記事を書いているので、紹介しておこう:
GMとUAWの対決は、GMが医療コストを労組に押しつけ、組合が2日間ストを打ったことで決着した。これは実質的には、GMの勝利である。かつてGenerous Motorsといわれるほど組合に甘かった同社も、倒産の危機に直面して、OBの医療費まで面倒みることはできなくなったのだ。私も先日の記事で書いたように、労組にはもう既得権を守る後ろ向きの役割しかなく、組織力もない。それなのに民主党は、道路財源のような自明の問題についてさえ、労組の顔色をうかがってバラマキを温存するのか。そんなことをしたら、労組の何百倍もの納税者を敵に回すことを覚悟したほうがいい。これは彼らが労組と納税者のどちらを重視しているかの試金石である。民主党の政策が本当に「国民の生活が第一」かどうか、国会での道路財源の審議をじっくり見てみよう。
アメリカの労組の組織率は、7.5%と先進国で最低レベルに落ちている。これは産業構造の変化とグローバル化の必然的な結果だ。かつて工場でみんなが同じ勤務をしていた時代には、UAWのような産業別組合が自動車メーカーの労働者を横断的に組織して賃上げを要求できたが、今は各社の業績も労働形態もバラバラで、産業別組合の(ギルド的)独占力には意味がない。国内で組合がうるさく言ったら、海外にアウトソースするだけだ。もう労働組合の使命は終わったのである。
追記:国会審議を見るまでもなさそうだ。民主党は、キヤノンの御手洗会長を参考人として国会に呼び、「偽装請負」の問題を追及するという。これは前の記事でも書いたように、現在の労働者派遣法に無理があるので、企業だけを槍玉に上げるのは短絡的な「一段階論理」のポピュリズムだ。
著作権がイノベーションを阻害する
きのうの話はかなり込み入っているので、少し問題を整理して補足しておく。今回の判決は、日本の判例の流れの中では、それほど異例ではない。しかし問題は、法律を普通に(判例に沿って)解釈すると、こういう常識はずれの結論が出るということだ。こういうときは法律論ではなく、政策目標に立ち返って考える必要がある。
著作権を与える理由は、松本零士氏や三田誠広氏が錯覚しているように、芸術家に特権を与えるためではない。工芸品や宝石などにも「名匠」とよばれる人がいるが、彼らの芸術的価値は著作権で守られない。その価値は、作品を売ることで回収できるからだ。著作物についてだけ、買った後も複製を禁止する排他的ライセンス権を与えるのは、買い手が情報を自由に複製すると、競争的な価格が複製の限界費用(≒0)に均等化し、著作者が情報生産に投資するインセンティブがなくなるからだ。
他方、対価を払って買った商品(私有財産)を複製しようが改造しようが自由だというのが近代社会の原則である。買った後も複製を禁止する著作権は、この意味で財産権ではなく、財産権の侵害なのである。だからインセンティブの増加から消費者の損害を差し引いた社会全体のネットの便益が正か負かが問題だ。
たとえばMYUTAのサービスを禁止したら、「着うた」などの音楽配信でもうけているJASRACは料金収入を守れるだろう。しかし消費者は、家庭で買った曲を携帯で聞くためにもう一度料金を支払わなければならないので、二重に課金されることになる。問題はそれが本源的な著作者(音楽家)のインセンティブを高めるかどうかだが、これは実証的にはよくわからない。P2Pの場合でさえ、コピーによる宣伝効果のほうが大きいという調査結果もある。
ところが、さらに重要な第三の効果がある。この判決によって、インターネット上で情報を共有するサービスは、ほとんどの類型が違法となる。普通のサーバ業者が今のところ安全なのは、JASRACに目をつけられていないからにすぎない。もし「ユーザーが音楽ファイルを複製している」とJASRACに訴えられたら、ISPはプロバイダ責任制限法で免責されるが、それ以外のホスティング業者は賠償責任を負うおそれが強い。最悪の場合には、業務の差し止めや刑事罰も覚悟しなければならない。
今後、ベンチャー企業が同様のビジネスに投資をつのる際も、「JASRACに訴えられたら勝てるのか」という質問に答えられなければ、資金を調達できないだろう。日本にGoogleもYouTubeも出てこない最大の原因の一つが、こうした世界一厳重な著作権のリスクにある。Web2.0サービスのほとんどは情報共有を前提にしているので、今回のようにインターネット経由の情報共有を全般的に違法とする判決の萎縮効果は大きい。
つまり今回のような差し止め処分は、権利者のインセンティブを高める効果は疑わしい一方で、消費者のこうむる損害は明白であり、イノベーションを萎縮させる効果は大きいので、ネットの経済効果は負だと考えられる。JASRACの数百億円の利益を守るために、日本経済がこうむっている機会損失はきわめて大きい。Googleの時価総額だけでも17兆円、日本の音楽業界の売り上げの32倍である。
私は以前から書いているように、こういう問題をなくすには、情報の複製を「原則違法・例外合法」とする現行の規定を逆にして、原則として自由に流通させ、著作者の請求に応じて料金を支払い、そのルールに違反した場合に賠償責任を負う賠償責任ルールに変更すべきだと考えている。つまり著作者の許諾権を廃止して、報酬請求権のみとするのだ。
知的財産戦略本部もこうした問題意識はもっており、経済財政諮問会議にも同様の提案がようやく出てきた。先日も紹介した意見書は、「世界最先端のデジタル・コンテンツ流通促進法制(全ての権利者からの事前の許諾に代替しうる、より簡便な手続き等)を2年以内に整備すべきである」と提案している。特に、この提案者として日本経団連の御手洗会長が入っている意味は大きい。財界本流の力でJASRACのような弱小業界の抵抗勢力を蹴散らし、この提案をぜひ実現してほしいものだ。
著作権を与える理由は、松本零士氏や三田誠広氏が錯覚しているように、芸術家に特権を与えるためではない。工芸品や宝石などにも「名匠」とよばれる人がいるが、彼らの芸術的価値は著作権で守られない。その価値は、作品を売ることで回収できるからだ。著作物についてだけ、買った後も複製を禁止する排他的ライセンス権を与えるのは、買い手が情報を自由に複製すると、競争的な価格が複製の限界費用(≒0)に均等化し、著作者が情報生産に投資するインセンティブがなくなるからだ。
他方、対価を払って買った商品(私有財産)を複製しようが改造しようが自由だというのが近代社会の原則である。買った後も複製を禁止する著作権は、この意味で財産権ではなく、財産権の侵害なのである。だからインセンティブの増加から消費者の損害を差し引いた社会全体のネットの便益が正か負かが問題だ。
たとえばMYUTAのサービスを禁止したら、「着うた」などの音楽配信でもうけているJASRACは料金収入を守れるだろう。しかし消費者は、家庭で買った曲を携帯で聞くためにもう一度料金を支払わなければならないので、二重に課金されることになる。問題はそれが本源的な著作者(音楽家)のインセンティブを高めるかどうかだが、これは実証的にはよくわからない。P2Pの場合でさえ、コピーによる宣伝効果のほうが大きいという調査結果もある。
ところが、さらに重要な第三の効果がある。この判決によって、インターネット上で情報を共有するサービスは、ほとんどの類型が違法となる。普通のサーバ業者が今のところ安全なのは、JASRACに目をつけられていないからにすぎない。もし「ユーザーが音楽ファイルを複製している」とJASRACに訴えられたら、ISPはプロバイダ責任制限法で免責されるが、それ以外のホスティング業者は賠償責任を負うおそれが強い。最悪の場合には、業務の差し止めや刑事罰も覚悟しなければならない。
今後、ベンチャー企業が同様のビジネスに投資をつのる際も、「JASRACに訴えられたら勝てるのか」という質問に答えられなければ、資金を調達できないだろう。日本にGoogleもYouTubeも出てこない最大の原因の一つが、こうした世界一厳重な著作権のリスクにある。Web2.0サービスのほとんどは情報共有を前提にしているので、今回のようにインターネット経由の情報共有を全般的に違法とする判決の萎縮効果は大きい。
つまり今回のような差し止め処分は、権利者のインセンティブを高める効果は疑わしい一方で、消費者のこうむる損害は明白であり、イノベーションを萎縮させる効果は大きいので、ネットの経済効果は負だと考えられる。JASRACの数百億円の利益を守るために、日本経済がこうむっている機会損失はきわめて大きい。Googleの時価総額だけでも17兆円、日本の音楽業界の売り上げの32倍である。
私は以前から書いているように、こういう問題をなくすには、情報の複製を「原則違法・例外合法」とする現行の規定を逆にして、原則として自由に流通させ、著作者の請求に応じて料金を支払い、そのルールに違反した場合に賠償責任を負う賠償責任ルールに変更すべきだと考えている。つまり著作者の許諾権を廃止して、報酬請求権のみとするのだ。
知的財産戦略本部もこうした問題意識はもっており、経済財政諮問会議にも同様の提案がようやく出てきた。先日も紹介した意見書は、「世界最先端のデジタル・コンテンツ流通促進法制(全ての権利者からの事前の許諾に代替しうる、より簡便な手続き等)を2年以内に整備すべきである」と提案している。特に、この提案者として日本経団連の御手洗会長が入っている意味は大きい。財界本流の力でJASRACのような弱小業界の抵抗勢力を蹴散らし、この提案をぜひ実現してほしいものだ。
日本の常識と世界の常識
Economist誌の前編集長(元東京支局長)とジャパン・ウォッチャーとして知られる証券アナリストの対談。内容は常識的だが、これが日本の常識がどれぐらい違うかをみるために、日本経団連の「御手洗ビジョン」と比べてみた。今後の大きな変化がグローバル化と人口減少だという点では、両者の見立ては一致しているが、それに対する考え方は対照的だ。財界が中国やインドの追い上げを強調し、研究開発に政府から補助金をもらって製造業の競争力を強化しようとするのに対して、外人2人はもう「額に汗して働く」時代ではないと断じ、中国やインドとの国際分業を進めるべきだとする。今後の成長産業はサービス業であり、日本の経済力はドコモやイオンがどこまでグローバルなプレイヤーになれるかで決まる。
政治との関係では、「御手洗ビジョン」が行財政改革を強調し、消費税の引き上げを提言するのに対して、外人は財政再建なんてどうでもいいと一蹴する。90年代のような経済状況では財政の維持可能性は深刻な問題だったが、成長軌道に乗れば政府債務は大した問題ではない。大事なのは成長力を高めることであって、消費税の引き上げなんて愚かな政策だ。それより行政の問題は、「官」の力が強すぎて新しいチャレンジャーを妨害していることだ。
そして最大の違いは、財界が拒絶する資本市場のグローバル化こそ日本経済の最大の課題であり、チャンスだと外人が強調することだ。個人金融資産が1500兆円を超えたのに、日本人の金の使い方は救いがたく下手だ。特に企業が貯蓄主体となり、資本が浪費されている。低収益の中規模企業が国内市場を分割する状況を打破し、アルセロール=ミタルのようなグローバル企業が日本からもっと出てこなければならない。それには外資を導入し、企業買収・合併によって産業の大幅な再編を行なう必要がある。東京の役割は、こうした資本市場を活性化してアジアの金融センターになることだ。
2人ともイギリス人なので、金融立国で成功したイギリスをモデルにしすぎるきらいもあるが、これが世界のエコノミストの常識的な見方だろう。しかし外資を「ハゲタカ」ときらい、財界が企業買収を妨害する法改正を陳情し、投資ファンドを「額に汗して働く人の味方」が逮捕する日本では、彼らの常識はとても非常識に見える。
「希望の国、日本」に書かれていない絶望的な未来
日本経団連の会長が御手洗富士夫氏になって初めて公表された政策ビジョン「希望の国、日本」が話題になっている。マスコミ的には、消費税の2%引き上げを求めたとか憲法改正を提言したとかいうのが関心を呼んでいるが、そのページを見てまず目につくのは「全文のPDF版が閲覧いただけます(印刷は出来ません/冊子版が後日発売される予定です) 」という表示だ(*)。
ふーん、経団連って金持ち企業の集まりだと思ってたけど、意外に金に困ってるんだ。自分たちのいちばん大事な主張を世の中に伝えるより、冊子を売って小金をもうけるほうが大事らしい(でもそんな冊子を買う人がいるんだろうか)。これって情報の流通を阻害することが「知財立国」だと思い込んでるキャノンの社長が考えたのかもしれないけど、こういう大事と小事の優先順位のおかしい人たちが提唱する「国のかたち」に説得力があるんだろうか・・・
全体に説教くさく、「精神面を含めより豊かな生活」とか「公徳心の涵養」などの精神論が多い。行財政改革に多くのページがさかれ、労働市場について「ビッグバン」を提唱しているが、実はもっとも重要なメッセージはここに書かれていないことにある。145ページの冊子の中に、日本経済の最大の課題である資本市場改革についての記述が1行もないのだ。
これについての経団連の考え方は、昨年12月に出た「M&A法制の一層の整備を求める」という提言に書かれている。それによれば「消滅会社が上場会社である場合、現金又は日本上場有価証券(あるいは日本の上場基準を満たす有価証券)以外を対価とする合併の決議要件は、たとえば特殊決議とするなど、厳格化すべきである」という。
ちょっとわかりにくいが、これは要するに三角合併ができないようにしてほしいということだ。三角合併とは、外資が日本企業を買収するとき、日本に子会社をつくって株式交換で買収することだ。2005年にできた会社法で認められたが、財界の反対で施行が07年5月に延期されていた。通常の企業買収は、株主の過半数が出席してその2/3が賛成する特別決議で成立するが、今度の提言ではそれを株主数で過半数かつ議決権で2/3以上の賛成が必要な特殊決議を条件とすることで、やりにくくしろというのだ。
彼らが外資を恐れるのは、日本の会社の資本効率が(したがって株価も)低いからだ。たとえばグーグルの株式の1割を使えば、株式交換で日立グループ885社を全部買収できる。行政には「聖域なき改革」を求め、貿易についてはFTAなどによる市場開放を求める財界が、自分の会社だけは聖域にして「鎖国」したいのである。対内直接投資のGDP比が世界で158位という日本で、「株価至上主義」の脅威を恐れているのは無能な経営者だけだ。
そもそも財界団体が3つもある状態さえリストラできない財界のおじさんたちが、改革を口にする資格があるんだろうか。こんな人々が経営者としてリードする「希望の国」の未来は絶望的だ。
(*)コメントで指摘されたが、このファイルは引用(一部コピー)もできないように制限がかかっている。しかしBrava! Readerなどの互換リーダーで読めば、コピーも印刷もできる。(追記)この冊子が発売された。定価は1260円だそうである。
ふーん、経団連って金持ち企業の集まりだと思ってたけど、意外に金に困ってるんだ。自分たちのいちばん大事な主張を世の中に伝えるより、冊子を売って小金をもうけるほうが大事らしい(でもそんな冊子を買う人がいるんだろうか)。これって情報の流通を阻害することが「知財立国」だと思い込んでるキャノンの社長が考えたのかもしれないけど、こういう大事と小事の優先順位のおかしい人たちが提唱する「国のかたち」に説得力があるんだろうか・・・
全体に説教くさく、「精神面を含めより豊かな生活」とか「公徳心の涵養」などの精神論が多い。行財政改革に多くのページがさかれ、労働市場について「ビッグバン」を提唱しているが、実はもっとも重要なメッセージはここに書かれていないことにある。145ページの冊子の中に、日本経済の最大の課題である資本市場改革についての記述が1行もないのだ。
これについての経団連の考え方は、昨年12月に出た「M&A法制の一層の整備を求める」という提言に書かれている。それによれば「消滅会社が上場会社である場合、現金又は日本上場有価証券(あるいは日本の上場基準を満たす有価証券)以外を対価とする合併の決議要件は、たとえば特殊決議とするなど、厳格化すべきである」という。
ちょっとわかりにくいが、これは要するに三角合併ができないようにしてほしいということだ。三角合併とは、外資が日本企業を買収するとき、日本に子会社をつくって株式交換で買収することだ。2005年にできた会社法で認められたが、財界の反対で施行が07年5月に延期されていた。通常の企業買収は、株主の過半数が出席してその2/3が賛成する特別決議で成立するが、今度の提言ではそれを株主数で過半数かつ議決権で2/3以上の賛成が必要な特殊決議を条件とすることで、やりにくくしろというのだ。
彼らが外資を恐れるのは、日本の会社の資本効率が(したがって株価も)低いからだ。たとえばグーグルの株式の1割を使えば、株式交換で日立グループ885社を全部買収できる。行政には「聖域なき改革」を求め、貿易についてはFTAなどによる市場開放を求める財界が、自分の会社だけは聖域にして「鎖国」したいのである。対内直接投資のGDP比が世界で158位という日本で、「株価至上主義」の脅威を恐れているのは無能な経営者だけだ。
そもそも財界団体が3つもある状態さえリストラできない財界のおじさんたちが、改革を口にする資格があるんだろうか。こんな人々が経営者としてリードする「希望の国」の未来は絶望的だ。
(*)コメントで指摘されたが、このファイルは引用(一部コピー)もできないように制限がかかっている。しかしBrava! Readerなどの互換リーダーで読めば、コピーも印刷もできる。(追記)この冊子が発売された。定価は1260円だそうである。
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