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1Q84
2009-05-31
/
Books
村上春樹の新作は、発売日に予約だけで68万部という空前の売れ行きだが、中身を見ないで買うのはおすすめできない。率直にいって、彼の作品としては傑作とはいいがたい。
二つのストーリーが並行して語られる構成は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に似ているが、文体はそれほど実験的ではなく、『海辺のカフカ』の続編のようなような感じだ。テーマはカルト教団とセックス・・・と書くとドロドロした話みたいだが、それをSF風の軽い文体で書いている。ストーリーもわかりやすく読みやすいが、『ノルウェイの森』のような感動を求めると失望するだろう。というか、『ノルウェイの森』が彼の作品としては例外的に大衆的な小説で、彼は「国民的作家」になるタイプではない。
タイトルの『1Q84』(イチキュウハチヨン)というのは、主人公が1984年の世界から「パラレルワールド」に飛び込んでしまうという意味で、Qはquestionのqだ。これでもわかるように最初からリアリズムを無視した物語だから、リアリティを求めるのは野暮かもしれないが、ディテールにあまり説得力がなく、『ねじまき鳥クロニクル』のように架空世界をそれなりのリアリティで見せることに失敗している。そういう古典的な「純文学」を否定するのが著者のねらいかもしれないが、いずれにせよ常識的な読み方を拒否している小説で、決して大衆的な作品ではない。
コメント (
9
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コメント
確かにそう思いますが...
(
Shin
)
2009-05-31 17:43:31
村上春樹の代表作がノルウェイの森ではないことや、彼が大衆小説の分野の国民的作家ではないことはその通りだと思うのですが、タイトルの意味のネタバレをここでしてしまうのはいかがでしょうか...。
タイトルのネタバレをしなくても、意図を伝えることは可能だと思うのですが。
ネタバレ?
(
池田信夫
)
2009-05-31 18:04:17
タイトルは別にネタバレじゃないですよ。パラレルワールドだという話はBook1の真ん中ぐらいで出てくるし、それは謎解きではなく謎の一部です。最後は謎は解けてないですけどね・・・というのはネタバレかな。ただBook2で「了」とは書いてないので、これは続きがありそうですね。
マニアタイプ…
(
マルコ
)
2009-05-31 20:07:41
池田先生、こんばんは。
何々この話題性、バックグランドが無いと理解できない小説が○ー○ル賞候補に、このところ近い作家さんですからですか!、マルコとしては彼のエッセーとかプライベートの本や(マラソンについて…)、ハードボイルドの新訳とかの方が好きですがね、一番驚いたのはTVで彼も老けたな〜と感じたことです(失礼)、暫らくしたら図書館から借り手読みますか?…
補足
(
池田信夫
)
2009-05-31 21:58:17
この記事は、グーグルで新潮社の公式ホームページの次(アマゾンの前)に出てくるので、著者が確実に読むと思われます。誤解のないように補足しておくと、私は彼のデビュー作以来、すべての小説をリアルタイムで読んできたので、いい加減にけなしているわけではありません。
気になるのは、彼の作品としてこういう大作ばかり話題になり、本人もそれが本業だと思っているらしいことです。私は個人的には、彼の最高傑作はいまだに『1973年のピンボール』だと思っています。彼の作品の中でも中編が一番おもしろく、長編はそれほどでもない。長編小説というジャンル自体が、もう終わった小説形式じゃないでしょうか。ノーベル賞を意識しているわけでもないのだろうけど、あまり大長編を書く大作家になってほしくないな、というのが私の希望です。
留保することのない雨?
(
kikiextra
)
2009-06-01 00:01:14
もうかなり以前の事だけれど、我が家のポッタリィアンの厳命で、家族旅行の最中にハリー・ポッターの第一巻を完読させられた。想像力あふれる起伏に富んだファンタジーだけれど、その本を読みとうす時間があれば、もっと別の、私にとって有意義な対象に時間を費やしたい、というのが正直な感想だった。つまり、当時の私は、既に作者の対象外の読者だったわけだ。
”ノルウェーの森”は、面白おかしく拝読したけれど、同時代性に面映い共感を覚えた結果であって、作品の価値を”理解”したわけではなかった。本日、書店にて、book 2を立ち読みしたけれど、どうも、私自身の琴線にふれないようだ。冒頭のところでの”留保する・・・・”という表現に遭遇し、ちょっと気になってしまった。意図した翻訳調の文体なのかなと思ったけれど、他の個所ではそれほど目立たない。よく分からないが、まず英語で想起された文章を、わざわざ日本語に翻訳するように書かれているのではないか?これは、日本の翻訳文化を批判し、乗り越えようとする文体上の試みなのではないかと、少し疑ってみた。そういうことなら、その出来がどれほどのものか、しっかり吟味しなくてはと厳粛な気分にはなったが、私自身が、村上春樹の対象とする読者層に入るのは、まだ先のようだ・・・・・・・。
Unknown
(
ponta
)
2009-06-01 00:50:48
> 私は個人的には、彼の最高傑作はいまだに『1973年のピンボール』だと思っています。
> 長編小説というジャンル自体が、もう終わった小説形式じゃないでしょうか。
非常に有益な情報です。これによって評者のレベルが赤裸々に判定されます。
誰かの批判をするときには、このように、「自分にとっての理想は何か」をちゃんと明示してくださることを希望します。それによって評者のレベルを読者が理解できますから。
Unknown
(
boyah
)
2009-06-01 20:44:28
内容には触れません。
たぶん世間一般の評価とはずれると思いますが、
『1Q84』という作品は、過去のすべての作品を超えて、僕の中で最高傑作である。
そうはっきりと思う。
偉そうな人が何を言っても、僕はその意見を変えるつもりはない。
これはフルマラソン型小説だと僕は思っている。
遥かかなた遠くにハルキさんが走っている。もちろん独りで。
それを、はるか後ろで僕は、はぁ、はぁ、ぜぃ、ぜぃ言いながら、自分のペースで追いかける。もちろん僕も独りで。
何度も話を見失いそうになりながらも、コースは深い森のなかにちゃくちゃくと進んでいく。
はっきり言って、そこはとっても危険なコースで、下手をすれば文字通り命を落とすことになるだろう、そう僕は気づく。
ここで思考停止をする人は、きっと引き返す。
なにもこんな苦しい思いをしてまで走りたくはない。
そういう人ももちろんいる。
彼らは、そうして走るのをやめ、ぱたりと本を閉じる。
それはそれでよいと思う。
なにもみんながみんなマラソンマンになる必要はないから。
でも、コースを横切り、あるいはヘリコプターを使ってゴールまでの近道を探してこの物語についてあれこれ言う人の意見を僕は聴きたくない。
もちろんゴールは、それをどのように読み、どれだけ時間をかけてもかけなくとも変わらない。
でも、これはマラソン小説なのだ。
自分の足で最初から最後まで走りきらなければ、それはマラソンであることの意義を失う。
物語というのは、そういうもので、最終的な結果を見るものでなく、
その走り方に意味がある。
そういうことがわからない人がこの本を読んでも、車やバイクでマラソンコースを走りぬいて喜んでいる人を見るようで馬鹿げている。
ない脳みそをフルに稼動させて、命をかけて読む。
それがこの本の正しい読み方だと僕は思う。
そこで何を思うかは個々人の問題だ。
当惑しながら、でも決然と
(
北村隆男
)
2009-06-01 23:12:15
村上春樹を読み通すことは自分にとって、生涯の宿題のようになってるわけですが、発売前からの「盛況」は、ひとつの「事件」です。池田先生のおっしゃる「大衆的国民作家」ではないことは、よく理解できます。「ノルウェイの森」にしたところが、おっしゃるような「作品」ではありません。水脈は今回の「1Q84」につながっております。どなたが読んでも明らかです。翻って、夏目漱石は国民的作家であった、あるいは今もあるのでしょうか?プルーストと並べてはいかが、とも思いますが、果たして、日本語を母国語としていなさる「国民の皆さん」、あなたは漱石をいつ、読みましたか?
教祖になるな!
(
komimasa
)
2009-07-14 20:10:22
坂口安吾が小林秀雄を評して言った言葉です。小説を予約して買う。今日(7月14日)のNHKでこの小説のことを放送する。日本人って。点々点。という感じ。読者に考えさせる内容にしたとテレビでは言っていたけど、本を買った時点で自分で考えていない読者(顔で分かる)に向かって言ってもしょうがないこと。だいたい読者に考えさせるなんて、上から目線だ。いまさらオーム??? ということで、買うのも、読むのもやめました。Kazuo Ishiguroを英文で読もう。
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タイトルのネタバレをしなくても、意図を伝えることは可能だと思うのですが。
何々この話題性、バックグランドが無いと理解できない小説が○ー○ル賞候補に、このところ近い作家さんですからですか!、マルコとしては彼のエッセーとかプライベートの本や(マラソンについて…)、ハードボイルドの新訳とかの方が好きですがね、一番驚いたのはTVで彼も老けたな〜と感じたことです(失礼)、暫らくしたら図書館から借り手読みますか?…
気になるのは、彼の作品としてこういう大作ばかり話題になり、本人もそれが本業だと思っているらしいことです。私は個人的には、彼の最高傑作はいまだに『1973年のピンボール』だと思っています。彼の作品の中でも中編が一番おもしろく、長編はそれほどでもない。長編小説というジャンル自体が、もう終わった小説形式じゃないでしょうか。ノーベル賞を意識しているわけでもないのだろうけど、あまり大長編を書く大作家になってほしくないな、というのが私の希望です。
”ノルウェーの森”は、面白おかしく拝読したけれど、同時代性に面映い共感を覚えた結果であって、作品の価値を”理解”したわけではなかった。本日、書店にて、book 2を立ち読みしたけれど、どうも、私自身の琴線にふれないようだ。冒頭のところでの”留保する・・・・”という表現に遭遇し、ちょっと気になってしまった。意図した翻訳調の文体なのかなと思ったけれど、他の個所ではそれほど目立たない。よく分からないが、まず英語で想起された文章を、わざわざ日本語に翻訳するように書かれているのではないか?これは、日本の翻訳文化を批判し、乗り越えようとする文体上の試みなのではないかと、少し疑ってみた。そういうことなら、その出来がどれほどのものか、しっかり吟味しなくてはと厳粛な気分にはなったが、私自身が、村上春樹の対象とする読者層に入るのは、まだ先のようだ・・・・・・・。
> 長編小説というジャンル自体が、もう終わった小説形式じゃないでしょうか。
非常に有益な情報です。これによって評者のレベルが赤裸々に判定されます。
誰かの批判をするときには、このように、「自分にとっての理想は何か」をちゃんと明示してくださることを希望します。それによって評者のレベルを読者が理解できますから。
たぶん世間一般の評価とはずれると思いますが、
『1Q84』という作品は、過去のすべての作品を超えて、僕の中で最高傑作である。
そうはっきりと思う。
偉そうな人が何を言っても、僕はその意見を変えるつもりはない。
これはフルマラソン型小説だと僕は思っている。
遥かかなた遠くにハルキさんが走っている。もちろん独りで。
それを、はるか後ろで僕は、はぁ、はぁ、ぜぃ、ぜぃ言いながら、自分のペースで追いかける。もちろん僕も独りで。
何度も話を見失いそうになりながらも、コースは深い森のなかにちゃくちゃくと進んでいく。
はっきり言って、そこはとっても危険なコースで、下手をすれば文字通り命を落とすことになるだろう、そう僕は気づく。
ここで思考停止をする人は、きっと引き返す。
なにもこんな苦しい思いをしてまで走りたくはない。
そういう人ももちろんいる。
彼らは、そうして走るのをやめ、ぱたりと本を閉じる。
それはそれでよいと思う。
なにもみんながみんなマラソンマンになる必要はないから。
でも、コースを横切り、あるいはヘリコプターを使ってゴールまでの近道を探してこの物語についてあれこれ言う人の意見を僕は聴きたくない。
もちろんゴールは、それをどのように読み、どれだけ時間をかけてもかけなくとも変わらない。
でも、これはマラソン小説なのだ。
自分の足で最初から最後まで走りきらなければ、それはマラソンであることの意義を失う。
物語というのは、そういうもので、最終的な結果を見るものでなく、
その走り方に意味がある。
そういうことがわからない人がこの本を読んでも、車やバイクでマラソンコースを走りぬいて喜んでいる人を見るようで馬鹿げている。
ない脳みそをフルに稼動させて、命をかけて読む。
それがこの本の正しい読み方だと僕は思う。
そこで何を思うかは個々人の問題だ。
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