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ダウンロード違法化についての超初歩的な経済学
著作権法30条を改正して「私的複製」から違法コンテンツを除外する、いわゆるダウンロード違法化が、次の国会に提出される見通しになったようだが、あきらめるのは早い。総選挙では民主党の勢力が増えると予想されているので、参議院で否決すれば葬れる。
これについては以前の記事でも書いたように、侵害による権利者の損失と宣伝効果による利益は、ほぼプラスマイナスゼロだというのが、多くの実証研究の結果だ。Oberholzer-Gee and Strumpf(O-S)論文については、その後も論争が続いているが、この論争で双方ともに前提としているのは、この論文は金銭的利益だけを測定したものだということだ。つまりファイル共有によるレコード会社の損失をC、宣伝によって売り上げが増える効果をBとすると
B≒C・・・(1)
というのがO-Sの結論だが、消費者は音楽を聞くことで効用を得るので、本来の問題はダウンロード違法化によって生産者余剰と消費者余剰を合計した総余剰が社会的にプラスになるかどうかである。これを大学1年生の教科書でおなじみの図で考えてみよう:

競争的な価格(有料・無料コンテンツの平均)をp*とすると、消費者余剰は図の需要曲線とp*の間の色つきの三角形の部分全体で、生産者余剰はゼロだ(これが効率的)。ところがレコード会社がダウンロードを違法化して価格をpmに引き上げたとすると、生産者余剰はπ(黄色の四角形の部分)増えるが、消費者余剰はU(黄色+黒の部分)減り、両者を合計した総余剰は黒の部分だけ減る。この死荷重をDとすると明らかに、
D=π−U≦0・・・(2)
他方、違法化によってファイル共有がなくなるとすると、「ダウンロード違法化で総余剰は増える」という命題は次のように書ける:
π−B+C−U>0・・・(3)
(1)式よりB=Cとすると、この命題は
π−U>0
となるが、これは(2)式によって成り立たない。つまりダウンロード違法化による金銭的利益がプラスマイナスゼロだとしても、消費者の効用を考えると、文化庁が(暗黙のうちに)主張している(3)式は成り立たないのだ。その理由は、独占によって総余剰は必ず減るからである。一般に死荷重はかなり大きいので、かりに(1)式でB<Cになっているとしても、その効果を上回ると考えられる。
ここまでは1年生の夏学期の試験ぐらいの問題だが、文化庁が考えているのは、独占による投資のインセンティブが死荷重よりも大きいということだろう。これは先験的にはどちらともいえず、需要の価格弾力性に依存する。P2Pによって大量の音楽ファイルが流通している現状をみると、需要曲線はきわめて価格弾力的(ロングテール型になっている)と推定できるので、死荷重は大きい。2002年のPaul Romerの計算によれば、米国内のCDの独占価格によって生じている死荷重は360億ドルで、これは全世界のレコード産業の売り上げ370億ドルにほぼ等しい。
つまり少なくとも音楽産業では、ダウンロード違法化の社会的な効果はマイナスになる可能性が高い。この損失は負の外部効果を考えるともっと大きく、P2Pなどの効率的なネットワーク利用に萎縮効果をもたらし、cloud computingのようなイノベーションを阻害する。Romerが証明したように、経済成長の最大のエンジンはイノベーションなので、衰退するレコード産業の(GDPの誤差以下の)利益を守るために情報技術のイノベーションを殺すのは愚かな政策である。
民主党はこの著作権法改正案に反対し、総選挙で「レコード会社の既得権を守るのかITイノベーションを守るのか」と訴えるべきだ。そうすれば若い有権者が投票に行って、民主党を応援するだろう。
これについては以前の記事でも書いたように、侵害による権利者の損失と宣伝効果による利益は、ほぼプラスマイナスゼロだというのが、多くの実証研究の結果だ。Oberholzer-Gee and Strumpf(O-S)論文については、その後も論争が続いているが、この論争で双方ともに前提としているのは、この論文は金銭的利益だけを測定したものだということだ。つまりファイル共有によるレコード会社の損失をC、宣伝によって売り上げが増える効果をBとすると
B≒C・・・(1)
というのがO-Sの結論だが、消費者は音楽を聞くことで効用を得るので、本来の問題はダウンロード違法化によって生産者余剰と消費者余剰を合計した総余剰が社会的にプラスになるかどうかである。これを大学1年生の教科書でおなじみの図で考えてみよう:

競争的な価格(有料・無料コンテンツの平均)をp*とすると、消費者余剰は図の需要曲線とp*の間の色つきの三角形の部分全体で、生産者余剰はゼロだ(これが効率的)。ところがレコード会社がダウンロードを違法化して価格をpmに引き上げたとすると、生産者余剰はπ(黄色の四角形の部分)増えるが、消費者余剰はU(黄色+黒の部分)減り、両者を合計した総余剰は黒の部分だけ減る。この死荷重をDとすると明らかに、
D=π−U≦0・・・(2)
他方、違法化によってファイル共有がなくなるとすると、「ダウンロード違法化で総余剰は増える」という命題は次のように書ける:
π−B+C−U>0・・・(3)
(1)式よりB=Cとすると、この命題は
π−U>0
となるが、これは(2)式によって成り立たない。つまりダウンロード違法化による金銭的利益がプラスマイナスゼロだとしても、消費者の効用を考えると、文化庁が(暗黙のうちに)主張している(3)式は成り立たないのだ。その理由は、独占によって総余剰は必ず減るからである。一般に死荷重はかなり大きいので、かりに(1)式でB<Cになっているとしても、その効果を上回ると考えられる。
ここまでは1年生の夏学期の試験ぐらいの問題だが、文化庁が考えているのは、独占による投資のインセンティブが死荷重よりも大きいということだろう。これは先験的にはどちらともいえず、需要の価格弾力性に依存する。P2Pによって大量の音楽ファイルが流通している現状をみると、需要曲線はきわめて価格弾力的(ロングテール型になっている)と推定できるので、死荷重は大きい。2002年のPaul Romerの計算によれば、米国内のCDの独占価格によって生じている死荷重は360億ドルで、これは全世界のレコード産業の売り上げ370億ドルにほぼ等しい。
つまり少なくとも音楽産業では、ダウンロード違法化の社会的な効果はマイナスになる可能性が高い。この損失は負の外部効果を考えるともっと大きく、P2Pなどの効率的なネットワーク利用に萎縮効果をもたらし、cloud computingのようなイノベーションを阻害する。Romerが証明したように、経済成長の最大のエンジンはイノベーションなので、衰退するレコード産業の(GDPの誤差以下の)利益を守るために情報技術のイノベーションを殺すのは愚かな政策である。
民主党はこの著作権法改正案に反対し、総選挙で「レコード会社の既得権を守るのかITイノベーションを守るのか」と訴えるべきだ。そうすれば若い有権者が投票に行って、民主党を応援するだろう。
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中山信弘:著作権法



経済学の初歩すらわかっていない連中に超初歩的な経済学は勝てないのです。最初から話は通じないものと考えた方がよろしいのではありませんか。
レコード会社は新譜を売り出すときに違法ダウンロードがあることを前提として売り方を工夫することにより、利益を出す方法を模索するのではないでしょうか。
特許の製薬とジェネリックとも似たような印象を受けました。
特許が失効すれば、社会的な消費者余剰が増える。
ダウンロードの場合、それこそマージナル・コストがゼロでしょうから、製造者余剰もないなんていうのも、言われてみると分かる気がしました。
ファイルキャッシュはダウンロードであると思います。
つまりダウンロード違法化は建築基準改悪をはるかに超えた官製大不況をもたらすでしょう。
その次のエントリーではニコ動に触発されて「J-POP」が陳腐な理由について考察されていますが。権利者側としては、こういう「検証」をさせないためにも著作権を強化したいのかもしれませんね(笑)。
http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2008/10/2-d97b.html
http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2008/10/jpop-f181.html
生産者余剰がゼロなのは効率的だからとの事ですが、何故ゼロだと効率的なんでしょうか。そもそも、生産者余剰がゼロの状態というのは、現実にありえるのでしょうか。
総余剰を考えるのなら、供給曲線も考えないといけないのではと思うのですが。
もしかして、根本的に僕の考え方が間違っているのでしょうか。今更かも知れませんが、どうか教えて下さい。お願いします。
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