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官製不況を生む「合理的バイアス」
経済学でバイアスというのは、合理的な行動を基準にした概念だが、人々のバイアスが広く知られている場合、それに合わせて行動することが合理的になる場合がある。
確率論で有名な、エルズバーグ・パラドックスというのがある。中の見えない壷Aには「赤い玉が50個、黒い玉が50個」入っており、壷Bには「赤か黒どちらかの玉が合計100個」入っている場合、赤をつかんだら100ドルもらえるとするといくら賭けるか、という実験をすると、赤をつかむ確率は同じなのに、壷Aへの賭け金はつねにBより大きい。
これは不確実性を避けるバイアスだ。いいかえれば、未知のコストより既知のコストのほうが好まれる。たとえば個人情報保護法が制定されて以来、企業の情報管理コストは膨大になった。実際には個人情報のほとんどは公知の事実で実害はないが、違法行為となるとメディアに大きく報道され、企業のブランドが傷つく。過剰報道のコストは予想できないが、それを防ぐ「コンプライアンス」のコストは、いくら大きくても予想でき、コントロールできるから、好まれるのだ。
メディアの側にも、合理性がある。昨年は食品偽造事件が多かったが、それは偽装が増えたからではない。内部告発で保健所や警察などが立入検査するケースが増えたからだ。社会部の記者には独自に食品を検査する能力はないから、そういう情報が提供されても、そのまま報道すると誤報になるかもしれないし、最悪の場合、名誉毀損で訴えられるおそれもある。こういう場合、その情報を警察などに提供し、強制捜査のタイミングで報道する、というのがよくある手だ。
警察が立件した場合には、「警察によると・・・」というクレジットさえあれば事実確認の責任はまぬがれるし、名誉毀損で訴えられても勝てる。だから未確認だが重要な問題より、確認された小事件に各社が殺到するのは、それなりに合理的だ。ここでも不確実な特ダネより確実な発表ものを好むメディア・バイアスがあるわけだ。
したがって企業がスキャンダル報道を防ぐには、強制捜査や行政処分の可能性をなくすことが重要だ。たとえ実害のない情報漏洩であっても、違法行為だと確認されたとたんに過剰報道が起こるから、ブランド価値の高い大企業が、どんなコストがかかろうと情報漏洩のリスクをゼロにしようとするのは、メディア・バイアスに対応するための合理的なバイアスである。こうしてバイアスがバイアスを呼ぶ乗数効果で、萎縮が広がるのだ。
こうした官製不況の影響は大きい。建築基準法の改正にともなう過剰規制で住宅着工が減り、GDPが0.6%下がったと推定される。貸金業法の改正で消費者金融業者は2割減り、闇金融事件は5割増えた。今月から始まったJ-SOX法も、その直接コストよりはるかに大きな、萎縮の乗数効果をもたらすだろう。
高市氏が昨年12月に提案した「青少年の健全な成長を阻害するおそれのある図書類の規制に関する法律案」の影響で、最近、週刊誌からヘアヌードが消えたという。警察に呼び出されるだけでこれだけ効果があるのだから、懲役刑まで明記したネット規制法が成立すれば、大手のISPは「有害情報」を予防的に削除するようになるだろう。官僚も政治家も、こうした規制の間接的コストを考えるべきだ。
追記:NYタイムズにRobert Schillerが書いているが、これはバイアスのない「合理的」な意思決定を想定しても起こりうる。こういう現象は、ゲーム理論でinformational cascadeとして知られている。
確率論で有名な、エルズバーグ・パラドックスというのがある。中の見えない壷Aには「赤い玉が50個、黒い玉が50個」入っており、壷Bには「赤か黒どちらかの玉が合計100個」入っている場合、赤をつかんだら100ドルもらえるとするといくら賭けるか、という実験をすると、赤をつかむ確率は同じなのに、壷Aへの賭け金はつねにBより大きい。
これは不確実性を避けるバイアスだ。いいかえれば、未知のコストより既知のコストのほうが好まれる。たとえば個人情報保護法が制定されて以来、企業の情報管理コストは膨大になった。実際には個人情報のほとんどは公知の事実で実害はないが、違法行為となるとメディアに大きく報道され、企業のブランドが傷つく。過剰報道のコストは予想できないが、それを防ぐ「コンプライアンス」のコストは、いくら大きくても予想でき、コントロールできるから、好まれるのだ。
メディアの側にも、合理性がある。昨年は食品偽造事件が多かったが、それは偽装が増えたからではない。内部告発で保健所や警察などが立入検査するケースが増えたからだ。社会部の記者には独自に食品を検査する能力はないから、そういう情報が提供されても、そのまま報道すると誤報になるかもしれないし、最悪の場合、名誉毀損で訴えられるおそれもある。こういう場合、その情報を警察などに提供し、強制捜査のタイミングで報道する、というのがよくある手だ。
警察が立件した場合には、「警察によると・・・」というクレジットさえあれば事実確認の責任はまぬがれるし、名誉毀損で訴えられても勝てる。だから未確認だが重要な問題より、確認された小事件に各社が殺到するのは、それなりに合理的だ。ここでも不確実な特ダネより確実な発表ものを好むメディア・バイアスがあるわけだ。
したがって企業がスキャンダル報道を防ぐには、強制捜査や行政処分の可能性をなくすことが重要だ。たとえ実害のない情報漏洩であっても、違法行為だと確認されたとたんに過剰報道が起こるから、ブランド価値の高い大企業が、どんなコストがかかろうと情報漏洩のリスクをゼロにしようとするのは、メディア・バイアスに対応するための合理的なバイアスである。こうしてバイアスがバイアスを呼ぶ乗数効果で、萎縮が広がるのだ。
こうした官製不況の影響は大きい。建築基準法の改正にともなう過剰規制で住宅着工が減り、GDPが0.6%下がったと推定される。貸金業法の改正で消費者金融業者は2割減り、闇金融事件は5割増えた。今月から始まったJ-SOX法も、その直接コストよりはるかに大きな、萎縮の乗数効果をもたらすだろう。
高市氏が昨年12月に提案した「青少年の健全な成長を阻害するおそれのある図書類の規制に関する法律案」の影響で、最近、週刊誌からヘアヌードが消えたという。警察に呼び出されるだけでこれだけ効果があるのだから、懲役刑まで明記したネット規制法が成立すれば、大手のISPは「有害情報」を予防的に削除するようになるだろう。官僚も政治家も、こうした規制の間接的コストを考えるべきだ。
追記:NYタイムズにRobert Schillerが書いているが、これはバイアスのない「合理的」な意思決定を想定しても起こりうる。こういう現象は、ゲーム理論でinformational cascadeとして知られている。
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それは、デメリットが存在しないからです。
いくら税金を無駄遣いをしても捕まらないのでは、まともに働くよりも税金を国民から騙し取る方が儲かってしまいます。
一方政治家も官僚のおこぼれを貰ったり、業界へ便宜を図ったほうが儲かります。もしくは、まともに仕事をしないでも、政治家は「当選する」だけで儲かりますので、あえて行動する理由がありません。
この様なシステム不備は我々国民にも責任があると思います。
もともに働いた方がインセティブがあるシステムを考えるべきです。
今の日本社会はバイアスが無くなって底抜け状態になっていることが問題だと思います。
ヘアヌードの件は知りませんでした(笑)が、解禁?されて以来、グロテスクなものが表に出てきて、援助交際やら何やら日本人の性風俗が著しく乱れたと思いますね。
今では中国や韓国からAV(アダルトビデオ)情報を求めて日本に大量にアクセスしてきています。それを見た彼らは日本人を「変態」呼ばわりしているのですが、そう言われてもしょうがない程の内容です。中には犯罪的行為のものもありますが、あれだけ大量に制作されている割に、たまにしか検挙のニュースがありません。
つまり、まったくバイアスがないので業者はやりたい放題なのです。
こういう所に日本社会の後退があると思いますが、なぜこういう”実写”が野放しにされて、アニメが標的になるのかわかりません。ここに恣意性を感じるので不気味です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080407-00000000-mnj-soci
警察に垂れ込まれる事件はたくさんあります。そこから何を取り上げるかは彼らの裁量しだいなので、ちょっとした事件ならOBが「これはやめとけよ」といえば、止めるのは簡単です。NHKなども、17年間の海老沢時代にはスキャンダルらしきものが何も報道されなかったのに、橋本会長になってからボロボロ出てきたのは偶然ではありません。その筋を抑える政治部の力が落ちたからです。
今回の法案は、警察官僚のISPなどへの天下りを促進する「乗数効果」もあるでしょう。
打ち出された施策自体が、住宅の高品質化をもたらす物ではなく、ここまでやったのだから我々には責任がないと言うためのお役人や政治家のアリバイ作りとしか考えられない方策で、いまだに怒りが収まりません。
(確信犯で法の編み目をくぐる物は、どれだけ編み目を厳しくしようとも対策を立てるだけです。結果影響を受けているのは、多くの善良な業者です。)
真にお施主様のためになる改革ならば、どれだけ厳しくとも乗り越える覚悟も出来ますが、到底そんな実効性を伴う改正ではありません。
官製不況に対するセーフティーネットなども打ち出されていますが、資金力のあるところしか使えない運用で、これにもお役人と政治家のアリバイ工作を感じます。
天下国家を考える国を背負う覚悟を持ったお役人や政治家が、いなくなってしまったと言うことなのでしょうか?
詳しくはTBを何点か送りますので、興味がありましたらお読み下さい。
”その間接的コスト”と”不確実性を避けるバイアスによる利益”が釣り合って平衡状態にあるのが現在の日本社会じゃないのでしょうか?平衡定数を決めているファクターを具体的に特定するのは難しいですが、少なくとも現在の社会が”その間接的コスト”>”不確実性を避けるバイアスによる利益”の状態であることを社会に納得させるためには、現在の平衡位置を維持していたら世界経済の中で日本経済の規模が指数関数的縮小し、その結果、無視可能な規模になる。つまり、日本は人口の多い貧困国になることを定量性をもって社会に示す必要があると思います。
だから金融危機や萎縮効果を防ぐには、みんなと違う行動をとって「逆張り」でもうけるプレイヤーを増やすことが重要です。その意味で、外資やベンチャーなどの異分子が入ってきて多様性が増すことは、日本経済にとってプラスであり、それを抑制する警察官僚のパターナリズムはマイナスです。
社会の底が抜けた感も定量的に証明されている事実ではないはずです。
外国人投資家は、日本の実情(特に政治)にはそんなに詳しくないようで、日本から発信されるニュースに過剰に反応するようです(例:2005年の郵政解散後の株価上昇)。
そのため、買いも売りもオーバーシュートする傾向にあります。
経産省の北畑事務次官の発言などは、外国人投資家にオーバーシュートさせる端的な例といってよいと思います。
>>バイアスがバイアスを呼ぶ乗数効果で、萎縮が広がる
このバイアス自体は遺伝子に刻み込まれた人間の性癖なので避けようがありません。問題なのは、この社会にバイアスの乗数効果をコントロールする機能が不足していることです。不足している原因は、群衆行動とバイアスとが容易に結合し乗数効果をもたらしている日本の特異性にあるのでしょう。その特異性が日本国民の均質性であるならば、その特異性を修正するのは数百年かかると思います。だから修正など考えず、バイアスの乗数効果が非常に強い国であることを前提に、国の仕組みをいろいろ作り替えて行かなければならないと思いました。バイアスの乗数効果を減衰させるためにはやはり、フェアな市場経済での競争を国家の活力の基本とする国作りしか無いと思います。
藪の中の、宝島というマイナー雑誌を口止めしたら、藪の外のYahooニュースというもっと影響力のある場所に出てしまい、かえってイメージを悪くしてしまったという感じでしょうかね。
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