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文化庁vs霞ヶ関
きのうのMIAUのシンポジウムも、1週間足らずのドタバタで決まったにもかかわらず、会場は満員で、なかなか盛り上がった(映像がYouTubeにアップロードされる予定)。私の話の内容は前の記事でも書いたので、ここでは会場から出た質問に関連して、ひとつ補足しておきたい。
文化庁の「ビジョン」によると、将来は私的録音録画補償金を廃止し、DRMと契約ベースで著作権処理を行なうという方針らしい。これは現在の通信(自動公衆送信)と放送を区別する法体系を残したまま、通信だけに煩雑な権利処理を強要するものだ。しかし総務省は、「情報通信法」によって放送法も電気通信事業法も廃止する方針である。つまり2010年には通信と放送の区別はなくなるのだ。それなのに文化庁だけが通信と放送を区別する法体系をつくるのは、いったいどういうわけだろうか。
このように文化庁が他の官庁と矛盾する法律をつくるのは今度が初めてではない。IP放送についても、知的財産戦略本部や経産省や総務省の反対を押し切って、わざわざ3年かけて著作権法を改正した。3年前のレコード輸入権のときは、経産省は文化庁に押されて輸入権を容認する代わりに、公取委にCDの再販制度を廃止させるという取引をしようとしたのだが失敗し、輸入権だけが通ってしまった。
文科省の中でも傍流のこんな弱小官庁が、なぜ他の全官庁の反対を押し切って横車を通せるのか、というのが会場からの質問だったが、これには長い歴史がある。1980年代にIBM産業スパイ事件などでソフトウェアの法的保護が問題になったとき、通産省はプログラム権法という法案をつくって、ソフトウェアを工業所有権として規制する方針を打ち出した。ところが、これに対してアメリカ政府が強く反対し、特にIBMは1982年に本社のCEO以下、経営陣が大挙して来日し、3日間「連続セミナー」を行なって、「世界の大勢は著作権でソフトウェアを守る方向だ。通産省案では日本は世界の孤児になる」と主張して、政財界に派手なロビイングを行なった。
IBMがこれほど著作権にこだわったのは、1964年に成立した汎用機システム/360の特許が1984年で切れるためだった。そのOSがパブリックドメインになると、世界中で合法的にIBM互換機がつくれるようになるため、保護期間が50年の著作権で守ろうとしたのである。この強大な外圧のおかげで、通産省が譲歩してプログラム権法を引っ込め、それまでコンピュータに何の縁もなかった文化庁がソフトウェアを所管することになった。当時「わが省が文化庁に負けたのは、霞ヶ関でも驚天動地の事件だった」と通産官僚は嘆いていた。
これが間違いの始まりだった。もともと神社仏閣を所管する文化庁は、情報通信のことなんか何も知らないが、アメリカの法律をそのまま輸入することによって強大な権限と予算と天下り先をもつようになった。これに対して、通産省(経産省)はプログラム権法の挫折がトラウマになり、その後はコンピュータを所管する官庁でありながら、ソフトウェアやコンテンツには手が出せない状況になってしまったのである。
今後、情報通信法が法案化される段階になると、民放連(*)と並んで文化庁が抵抗勢力になるおそれが強い。「オールIP」を前提にして通信と放送の区別を撤廃し、レイヤー別に規制する法体系が実現すれば、放送業界の独占を打破してメディアへの参入を促進し、新しいコンテンツ産業が育つ上で画期的な制度になろう。官邸(IT戦略本部)も経産省も、以前から通信・放送を一本化する方針だ。この面ではMIAUは、文化庁を除くすべての官庁と共闘できるだろう。
(*)私の友人は、ある民放のワイドショーで「通信と放送の区別をなくすのは当然だ」と発言したら、レギュラーを下ろされた。
文化庁の「ビジョン」によると、将来は私的録音録画補償金を廃止し、DRMと契約ベースで著作権処理を行なうという方針らしい。これは現在の通信(自動公衆送信)と放送を区別する法体系を残したまま、通信だけに煩雑な権利処理を強要するものだ。しかし総務省は、「情報通信法」によって放送法も電気通信事業法も廃止する方針である。つまり2010年には通信と放送の区別はなくなるのだ。それなのに文化庁だけが通信と放送を区別する法体系をつくるのは、いったいどういうわけだろうか。
このように文化庁が他の官庁と矛盾する法律をつくるのは今度が初めてではない。IP放送についても、知的財産戦略本部や経産省や総務省の反対を押し切って、わざわざ3年かけて著作権法を改正した。3年前のレコード輸入権のときは、経産省は文化庁に押されて輸入権を容認する代わりに、公取委にCDの再販制度を廃止させるという取引をしようとしたのだが失敗し、輸入権だけが通ってしまった。
文科省の中でも傍流のこんな弱小官庁が、なぜ他の全官庁の反対を押し切って横車を通せるのか、というのが会場からの質問だったが、これには長い歴史がある。1980年代にIBM産業スパイ事件などでソフトウェアの法的保護が問題になったとき、通産省はプログラム権法という法案をつくって、ソフトウェアを工業所有権として規制する方針を打ち出した。ところが、これに対してアメリカ政府が強く反対し、特にIBMは1982年に本社のCEO以下、経営陣が大挙して来日し、3日間「連続セミナー」を行なって、「世界の大勢は著作権でソフトウェアを守る方向だ。通産省案では日本は世界の孤児になる」と主張して、政財界に派手なロビイングを行なった。
IBMがこれほど著作権にこだわったのは、1964年に成立した汎用機システム/360の特許が1984年で切れるためだった。そのOSがパブリックドメインになると、世界中で合法的にIBM互換機がつくれるようになるため、保護期間が50年の著作権で守ろうとしたのである。この強大な外圧のおかげで、通産省が譲歩してプログラム権法を引っ込め、それまでコンピュータに何の縁もなかった文化庁がソフトウェアを所管することになった。当時「わが省が文化庁に負けたのは、霞ヶ関でも驚天動地の事件だった」と通産官僚は嘆いていた。
これが間違いの始まりだった。もともと神社仏閣を所管する文化庁は、情報通信のことなんか何も知らないが、アメリカの法律をそのまま輸入することによって強大な権限と予算と天下り先をもつようになった。これに対して、通産省(経産省)はプログラム権法の挫折がトラウマになり、その後はコンピュータを所管する官庁でありながら、ソフトウェアやコンテンツには手が出せない状況になってしまったのである。
今後、情報通信法が法案化される段階になると、民放連(*)と並んで文化庁が抵抗勢力になるおそれが強い。「オールIP」を前提にして通信と放送の区別を撤廃し、レイヤー別に規制する法体系が実現すれば、放送業界の独占を打破してメディアへの参入を促進し、新しいコンテンツ産業が育つ上で画期的な制度になろう。官邸(IT戦略本部)も経産省も、以前から通信・放送を一本化する方針だ。この面ではMIAUは、文化庁を除くすべての官庁と共闘できるだろう。
(*)私の友人は、ある民放のワイドショーで「通信と放送の区別をなくすのは当然だ」と発言したら、レギュラーを下ろされた。
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中山信弘:著作権法



> 「通信と放送の区別をなくすのは当然だ」と
> 発言したら、レギュラーを下ろされた。
一体どの番組でしょうか?
ディズニーを髣髴とさせるエピソードですね。
日本でもアメリカでも、ロビー活動が、ロビー活動団体に有利なように知的財産法を変えさせる原動力となっていることを実感させます。
どっちもどっちですが、少なくともコンテンツの有効利用を図るという観点から思考するのがどっちかという観点から考えると、個人的には応援する勢力は決まってます。
でも、最近はオープン系で頑張ってて、ちょっとイメージ変わってきました。( でも、IBM のオープン系技術って、まだちょっと気持ち悪いです 笑 )
「オープン・ソースにしたら、開発技術者や企業の機会損失が大変だ」なんて考えてると、IT 業界では即死かもしれません。優秀な技術者がみんな、クローズドな企業の高給に甘んじてるとも思えません。
YouTube や MySpace 等がなければ、これほどインディーズのバンドが活躍したかどうか、 を考えると「 オープン化 」は業界発展のキーワードではないでしょうか?
優秀な音楽家は、オープンな市場で勝負してもらいたいものです。 そうなると困る勢力からの抵抗はあるでしょうが、消費者が支持すれば「勝ち」ですから..
特許を全て公開してしまって、盗られ放題にするわけには、アメリカにあげるためでもあったのですね。
ビジョンの根底に既得権益があって、それありきで話を進めるから議論や討論などするだけ無駄=政治に無関心になる、という構図ができあがります
その結果まともな政治家が育たない=ますます腐敗する、というちょっと前に流行した負のスパイラル完成ですね
いわゆる”良識派”というのは存在しないのでしょうか・・・
田中健さんと同じ疑問を持つ人は多いとおもいます。
私が思うに、日本の選挙制度には問題点が数多くあり、官僚や大企業の傀儡を選ぶための制度となっているため、本当のまともな人は当選出来ないでしょう。
ですから、選挙制度から変えると何も変でしょう。
日本の選挙制度はとにかく税金を食いすぎます、そこえ、池田教授には経済的な選挙制度を考案して欲しいと私はひそかに願っております。
22日に平成20年度の機構・定員等審査結果を出しています。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/pdf/071222_2_bt.pdf
これを見ると、来年度からは総務省の情報通信政策局が情報流通行政局へと名称変更するようですね。
この名称変更には郵便関連の業務が移管してくるから、ということもあるでしょうが、
著作権行政までを射程に入れた名称変更ではないかとも考えられ、興味深いです。
次官レースに脱落した順から天下りするキャリア官僚の不文律を改革しないかぎり、官僚の天下り体質と利益体質が変化するとは思えません。
既得権益=老後の収入なのですから
しかし、戦前は陸大海大を出た軍事高級官僚の暴走を止められず亡国の憂き目を見たのに、政治家が官僚をコントロールできないのは戦後も変わりませんね。
省庁の既得権益維持のために日本の国際競争力が落ちかねない状況を見るにつけ、官僚制の弊害というものを考えてしまいます。
全く取り上げないと思ったら
最近の有力誌すべてに様々な権利者団体が
広告を入れていました
いわゆる「トヨタ方式」ですね。
広告を出すことにより、メスメディアを黙らせる。電通が窓口となり、系列のニュース配信会社である、時事通信、共同通信へ圧力というか一緒に揉み消すですな。
とんだ民主主義国家です
文化ではあるが経済の問題であるので経済産業省が仕切るとか言えないのかなあっと。輸入盤非合法って中間搾取者が困るだけなのに。多様な選択肢を提供する側が敵とはアーティストも大変。守り癖が出ています。
後段の「レイヤー別の法体系」「メディアへの参入」「新しいコンテンツ産業」の部分は大変興味深いです。
しかし、こうした土壌ができたとして、誰が参入するのか?どういうビジネスモデル?(番組・コンテンツを作ってネットで流す?有料?無料?)などを考えると、「新しいコンテンツ産業が育つ」というのは大変なのではないかと思ってしまいます。
結局、モデルとしては現在の民放の広告モデル+強大なプロモーション力が最強で(機能として強いだけで運営がうまくいっているかは別ですが)、ネットでちょろちょろコンテンツを流すのはニッチにとどまるのではないかと考えてしまいます。
新勢力の登場が、民放の危機意識を高め、結果としてテレビが面白くなればいいのですが。
池田先生はどのようにお考えでしょうか?
使用するのは図書館権にすれば良いでしょう。図書館って面白いですよね。発売された初日から、いきなり自由に無料で閲覧が出来るのですから。YouTubeや、Googleや、同人誌のマーケットも、本質は図書館でしょう。それ自体は著作物って感じはしません。
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