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クリエイターに必要なのは著作権の強化ではない

先日の「著作権は財産権ではない」という記事には、意外に多くのアクセスがあったが、わかりにくいという批判もあったので、もう少しわかりやすい例で補足しておこう。

私は、かつてテレビ局で番組を発注・契約する立場にいたこともあるし、フリーで番組制作を請け負ったこともある。その経験からいうと、日本のコンテンツ産業の最大の問題は、著作物の利益が法的に保障されないことではなく、それが仲介業者に搾取され、クリエイターに還元されないことである。クリエイターの大部分は、フリーターとして低賃金・長時間労働で酷使されている。著作権の強化は、彼らにとっては意味がない。もともと権利は企業側に取られるしくみになっているからだ。

極端なのが映画である。かつては映画の興行収入は映画館がまず50%取り、残りの半分を配給会社が取り、あとの25%を制作会社が取るという配分が不文律になっていた。テレビの場合にはもう少しばらつきがあるが、この映画館が民放、配給会社が広告代理店と考えればよい。出版では、この比率はもっとひどく、印税は一律に10%だ。つまり日本では、仲介業者が売り上げの75%から90%を取るのである。

このように流通マージンが大きいのは日本の流通機構に広くみられる特徴で、その代わりマーケティングや在庫などのリスクは仲介業者が負うことが多い。他方クリエイターは、前払いで制作費をもらう一方、その売れ行きには責任を持たない。これはファイナンス理論でいうと、「売れた場合の利益は得るが、売れなかった場合の損失は負担しない」というオプションを仲介業者がクリエイターに売っている(制作費から差し引く)ことになる。仲介業者がリスクとリターンをすべてプールする下請け型の構造である。

こういう構造が成立しているのは、映画館やテレビの電波などの流通チャネルがボトルネックになっていたからである。映画館のようにシネコンなどでチャネルが多様化すると、収益の配分が変わり、新しいクリエイターが参入するようになる。プラットフォームの側からみても、仲介業者が売り上げの75%以上も取る配分は異常であり、新しいチャネルを提供して鞘取りする余地は大きい。インターネットは、そういう新しいプラットフォームの可能性をひらいている。

この場合、新しいプラットフォームは透明なE2E型になってリスクをプールせず、クリエイターがリスクもリターンも取ることになろう。Google/YouTubeのようなプラットフォームでビデオが流通するようになれば、日本のコンテンツ産業の構造も変わり、クリエイターに利益が還元されるようになる可能性がある。これに対して著作権の保護を口実にしてIP放送を妨害し、P2Pを犯罪に仕立てようとする仲介業者は、クリエイターの利益を守ると称して、仲介のボトルネック独占を守っているのである。コンテンツ産業を活性化するために必要なのは、著作権(という名の既得権)をこれ以上強化することではなく、競争政策を厳格に運用してこうした古い仲介業者を解体することだろう。
コメント ( 18 ) | Trackback ( 3 )
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コメント
 
 
 
Unknown (googoomobile)
2006-12-20 15:42:50
>クリエイターの大部分は、長時間労働と低賃金で酷使され、ニート化している

本当にその通りです。
以前知り合いの建築デザインのオーナーが、うちデザイナーは1ヶ月5万円で朝10時から夜12時ぐらいまで働くよって自慢げに話しているのを聞きました。
10万円ぐらいだろうと想像していましたが、さすがに5万円と聞いて少しショックでした。
(これはおかしいと強く感じました)

どうやらそこに雇用関係はない様子で、若いクリエーターに仕事を教えてあげるから事務所で作品作ったり、受けた仕事をこなして、自分の腕を磨いたら・・・的なことで合意しあっているようです。
イヤならいつ辞めても(来なくなっても)いいよということらしいです。
(クリエーターは徒弟的な制度の修行者の身のよう)

クリエーターの方々が、自力で創作物を世に提供し、著作の対価を受け取れるプラットフォームが現実はかなり少ないようですが、インターネットがそのプラットフォームとなり得る予感は感じています。

 
 
 
競争で格差拡大ですな (TM)
2006-12-20 16:17:08
クリエーターみたいな才能のある人は未来が開けていそうですね。何かを作り出す創造力もなく、仲介業者に就職するしかないような凡人たちは、今後どこで働けばいいんでしょうか?
 
 
 
Unknown (Unknown)
2006-12-20 22:15:04
才能のある人は、好きなだけ稼げばよい。ただし、フェアな競争であるべきだと思う。
 
 
 
労働に関する生産者と消費者の直結 (スポンタ)
2006-12-20 23:05:19
クリエイターに限らず、労働者全般にいえることでしょう。

正社員にしたくないばかりに、派遣社員に仕事を出しているが、企業が派遣会社に支払っている金額は、正社員に払っている金額よりも高かったりする。

何故、そのような状況が生まれているかといえば、さまざまな制度・法律が雇用関係に関与して、労働者と企業をがんじがらめにしている。

先生のおっしゃるようなE2Eの時代をめざしていきたいものです。
 
 
 
立場 (かまど)
2006-12-21 02:20:28
>出版では、この比率はもっとひどく、印税は一律に10%だ。つまり日本では、
>仲介業者が売り上げの75%から90%を取るのである

作家が印税額に満足しているのならば、大きなお世話というものでしょうし
満足していないのなら、作家が主張すればいいだけのお話ですね

声優さんがテレビ局に対して団結しストを起こし、二次使用料を
勝ち取ったというのは有名な話です。それなりの待遇がほしければ
クリエイターの方々が、自ら行動する必要があるのでわ?

「流通業者」を一方的に責めたところで状況は変わりませんよ
 
 
 
いまいち説得力が… (猪口冷斗)
2006-12-21 02:58:48
 放送に関してなら流通チャネルがボトルネックになっている事が分かるのですが、書籍に関しては何がボトルネックなんでしょうか。
 法律上の規制は再販制度くらいなものでしょう。
 音楽にしても書籍にしても、自分で出版社を興し自分で販売することを規制する法律は有りません。
 この論理で行くと、通信分野でいう最後の1マイルの問題はどうなるのでしょうか。
 メタリックはともかく、光ファイバーはインフラを含めて競争させるのが池田先生の持論ですよね。
 その辺のところに矛盾を感じます。
 
 
 
IPアドレス表示型P2P (Inoue)
2006-12-21 04:30:12
 どこにコメントつけるか迷ったのですが、Winnyが違法利用されることが非常に多かった理由は匿名化機能にあると思います。
 投稿者のIPアドレスが表示されるP2Pソフトは存在してしますし、それらは(調べてないですが)違法利用は少ないでしょう。よって、Winny裁判が、一律にP2Pの利用を阻害することにはならないと思います。

 民事でケリのつく問題を、刑事でなぜ処罰するかという問題については、匿名機能を突破することが零細クリエイターには困難であり、2ちゃんねるのように全体管理者がいないから裁判所命令でログを開示させることもできず、警察の捜査能力でそれを代行していただかないと、取り締まりが難しいという合理化も可能です。
 
 
 
ボトルネック (池田信夫)
2006-12-21 08:38:05
書籍に関しては、取次(日販・東販で90%以上)がボトルネックです。彼らが売り上げの配分を決めています。これについては公取委が内偵しましたが、「法的には独占ではない」という原則論の壁に阻まれました。通信は関係のない話。
 
 
 
出版流通におけるボルトネック (くまりん)
2006-12-21 10:29:58
取次業者は、出版社と書店を取り次ぐための機能ですので、ここだけがボルトネックとなってクリエーター(執筆者)に利益が還元されにくくなっているとは、考えづらいのですが。。。
例えば、自社で巨大な倉庫を持つことにより取次業者のみが引受けていた巨大な在庫(リスク?)を(アマゾンのように)自社で引受ける場合、最終的に利益を得るのは、書籍の購入者と現にリスクを引き受けているアマゾンのような書店ではないのでしょうか。
もちろん、アマゾンのような流通機構では、リアル書店では販売が見込めなかった出版物が売れるため出版社にとってもプラスだと考えられますが、だからといって執筆者が受取るる印税率は変化しません(よね?^^;)。
出版物に関しては、クリエーターに利益が還元されないのは、出版社の内部事情(高コスト体質など)が第一の原因だと、私は考えますが、それだけだとは、出版流通に関しては言い切れません。
結局、出版物の場合、その商品特性(小さく、安く、数多く)に孕むリスクを誰が引受けるかにかかっているのではないでしょうか。例えばアマゾンが出版事業をし、新書を自社販売すれば、読者も、書店(アマゾン)、執筆者も利益を得られる(印税率を上げられる)と考えますが、現実的な回答ではないですね。(^^;
 
 
 
具体的なビジネス化について (Cloister)
2006-12-21 11:37:53
おっしゃることはよくわかります。
仲介構造を変えて既得権益層を崩していかなければならない
という説はとても共感いたします。

ですが、一つ、大きな疑問があります。
それは具体的なビジネス化方法(課金方法)です。
クリエーターがきちんと収益を得るには、どのような手法をとるのでしょう?
YouTubeにしろ、Webサイトにしろ、Winnyにしろ、結局は無料利用したいから
みんな群がっているわけであって、有料にしたらほとんど利用されないでしょう。
結局大衆のほとんどは、こっそりと無料で楽しみたい、と思っているだけであって、
そこをどうクリエーターの収益に結び付けていくのでしょうか?
結局、流行っている無料サイトは2ChにしろSNSにしろ広告モデルにしか
いきついてないような気がします。コンテンツ提供者は「やりたいから参加する、
無償の奉仕者」でしかないような。
ここが解決されないうちには、守旧勢力の意見にも一理は残ってしまうと思います。
守旧勢力の崩壊をなし崩しで進行させてしまうと、一般大衆のフリーライダーのみが増殖し、
一時的にせよクリエーターは壊滅するのではないでしょうか?

既に過去ログで示唆しているところがあれば教えていただければ幸いです。
 
 
 
創造物は人に知られないと何も始まらない (oktom)
2006-12-21 14:36:05
 綺麗事を書くようですが初めを思い出して欲しいと思います。金儲けの為に創ってきたのですか?創って広く多くの人に知ってもらい観てもらい聴いてもらい感動を与える為じゃなかったのですか?。

 で、それに付随する対価じゃないですか?営利目的な人が多くなると盗作者も多くなる。それは創造者ではないです。

 これはどのジャンルの創造者にでも言える事だと思いますが金儲けの作品なんて誰にも感動を与えられないと思う。

 日本の物が世界へ羽ばき難い要因のひとつは仲介業者、著作権管理業者だと思います。彼らは自分たちの権利が及ばなくなる世界への拒絶をしているからだと思う。

 私はクリエーターがクリエータの為のクリエーターによる組合を作って新たなクリエーターを養成したり管理したりと自らが行って、出来れば福祉や環境問題、難民問題などの支援活動をして頂いたら良いなと思います。
 
 
 
製作者保護と言う名の (oota)
2006-12-22 03:10:54
>クリエイターの利益を守ると称して、仲介のボトルネック独占を守っているのである。

あるミュージシャンが、インディーズから大手レコード会社に移籍して知名度があがったときに、ファンから「初期の作品をCDに!」と声があがったが某大手レコード会社は、詳しい説明もなく「製作しない」と。
彼らは、大手レコード会社に「著作権」を渡してる為自分たちが製作した作品でもてファンの欲しい曲をCDにして売るという期待に答えることができませんでした。
 
 
 
Unknown (dqn)
2006-12-22 09:20:17
>oktom
金儲けもしたいし、みんなに知ってもらいたい
それでいいじゃないんですか?
金儲けは悪い話じゃないし、金儲けの作品だって感動を与えることはできますよ。
資本主義である以上、ものつくりには金が必要ですしね。
儲けもでないのに、ものつくっててもしょうがないです。
邦画みたいな臭くて安い自己満足映画で満足ならそれでもいいですけど。
 
 
 
某書籍流通でバイトしてる者ですが (Unknown)
2006-12-23 22:11:55
>出版では、この比率はもっとひどく、印税は一律に10%だ。つまり日本では、
>仲介業者が売り上げの75%から90%を取るのである

 バイトゆえ正確な所はわかりませんが、職員の方から聞いたところ、取次の取分は概ね1割(割合は大体「1:6:1:2(印税:版元:取次:書店)」)、さらにその中から発送費用が引かれますからさらに少なくなります。
 版元の方も6割位取ってるとはいえ、返品制度がありますから、単純な見方はできない気がします。(まあ、IとかSの商品は全部買い取りですが。)
 また、書店の方も昨今の「万引き」の被害及びその対策費とかが結構食われてて、純利益が総売上の1%いったらかなり良い方だったりしてたはず。
 正直、書籍業界に関しては、どこも余裕がない気がします。
 
 
 
アフロ侍 (小林亜由美)
2006-12-24 02:30:00
などのアニメや漫画が、日本の仲介業者(?)を経ずにアメリカでデビューしてしまったりするのは、アメリカの方が日本よりもボトルネックな体制ではないからでしょうか。
 
 
 
いくらなんでも (mohno)
2006-12-24 02:31:26
> 儲けもでないのに、ものつくっててもしょうがない
> 邦画みたいな臭くて安い自己満足映画

これは言いすぎでは?

> “P2P”を犯罪に仕立てようとする仲介業者

これも言いすぎだと思いますが。
 
 
 
エスタブリッシュがインテグレータになっている。 (スポンタ)
2006-12-24 12:25:06
アフロ侍様

>アニメや漫画が、日本の仲介業者(?)を経ずにアメリカでデビューしてしまったりするのは、アメリカの方が日本よりもボトルネックな体制ではないからでしょうか。

問題は、20年前の映画界のような状況だということです。

流通のボトルネックではなく、流通の入り口に既得権者たちが陣取っていて、新人の流入を防いでいる。
新人は新規参入競合者だから、新規参入などないほうがいい。そういう嫉妬の構造がある。

芥川賞作家は、元芥川賞作家でしかないのに、防衛戦もせずに、地位を保持できる。そういうエスタブリッシュたちが寡占する状況があるのです。

イメージとしては日本プロ野球。Jリーグのように、勝利をつみあげても、一部リーグに這い上がることはできないのです。
 
 
 
シェアウェアで儲けた人 (Inoue)
2007-02-14 09:40:38
 パッケージが必要なく、データ量も比較的小さい個人製作のパソコンソフトでは、パソコン通信時代からシェアウェア流通が行われてきました。
 しかし、他の仕事なしで、ソフト制作・改良とユーザサポートだけで食えるほど儲けた人って、秀丸エディタの作者以外にいますか?
 
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