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インターネットはクライアント=サーバ型じゃない

ASCII.jpには私も連載をもっているし、遠藤諭編集長とは20年ぐらい前から面識もある。彼はこの分野のエクスパートだが、今週の野口悠紀雄氏との対談の第2回には大きな間違いがある。この対談記事にはコメント欄がないので、ここで簡単に指摘しておく。

この記事のテーマである「ジェネラル・パーパス・テクノロジー」(汎用技術)というのは、私が5年前のDPで紹介した概念で、アスキー新書でもやさしく解説した。だから対談の趣旨は間違っていないが、おかしいのは遠藤氏が次のように語っていることだ:
クライアント・サーバー型システムは、単なるLANとは思想的にまるで異なるわけですよね。サーバーに対して「サービス」を要求して、サーバーがそれに答える。[・・・]このようなサーバーとクライアントの役割を明確化したことが、ITというものを本質的に進めたと思うのです。
クライアント・サーバー(以下C-S)システムは「LANとはまるで異なる」ものではなく、ほとんどすべてのLANはイーサネットというC-Sシステムである。彼はこれを「第3次オンライン」と対比しているが、これはLANではなくメインフレームのバッチ処理システムの発展形だ。メインフレームの特徴は、ホスト機にすべての情報が集中し、ユーザーは入出力の機能しかないダム端末を使うことだ。これに対して、イーサネットではクライアントが情報処理を行い、サーバはそれをサポートする。つまり「LANとC-Sが違う」のではなく「メインフレームとC-Sが違う」のである。

さらに遠藤氏は「インターネットは、まさにC-S型システムの代表である」というが、これは明白な誤りである。インターネット(TCP/IP)は、すべてのホストがサーバなしで同格に接続するend-to-endシステムで、最近の言葉でいえばpeer-to-peerである。現実のインターネットは、ほとんどISPのサーバ経由で運用されているので、こういう誤解はよくあるが、遠藤氏のようなプロが混同するのは困る。ここまでいえば彼にもわかると思うので、第3回で訂正を望みたい。
コメント ( 10 ) | Trackback ( 1 )
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コメント
 
 
 
ネットとC-S (コノハズク)
2008-07-19 11:06:46
ご指摘のとおりです。クライアント=サーバモデルが初めて実用面に華々しく登場したのが、あのX-Windowシステムですが、要するにCとSが別個に存在し、その間が何らかの経路で繋がればいいので、インターネットやイーサネットは必須条件ですらなく、ネットはこの場合、ただの媒体に過ぎません。というより、媒体に徹しているところがこのイーサネットやインターネットの最大のアドバンテージです。(イーサ、即ちEtherという命名があの空間を媒体と考えるエーテルの概念から来てるのは良く知られているとおり)

あと、インターネットをC-Sシステムの代表である、と考えてしまうということは、もしかするとOSIのプロトコル・レイヤを理解していないからかもしれません。
 
 
 
OSIの7階層 (池田信夫)
2008-07-19 15:01:00
無知なイナゴのために補足しておくと、イーサネットはOSIの第2層(データリンク)で、IPは第3層(ネットワーク)、TCPは第4層(トランスポート)です。クライアントやサーバなどの端末は、この分類でいえば第1層(物理層)だから、厳密にいうと「LANとC-Sが違う」という文章が意味をなさない。

第3次オンラインのようなレガシー構造では、この第1層から第4層までがSNAのような特定のプロトコルで垂直統合されて区別できないので、根本的に違います。そもそも第3次オンラインはローカルじゃないから、LANとはいえない。

まぁ最近のユーザーはインターネット=ウェブと思っているから、こういう誤解もしょうがないけど、ASCII草創期からTCP/IPでダイヤルアップのシステムを組んできた遠藤氏が、こういう勘違いをするのは信じられない。
 
 
 
CS v.s. LAN (Sott)
2008-07-19 17:27:06
「CSシステムとLANの思想」の違い ...?

...そもそも別物を対比しているから矛盾が生じているのですね。素人向けなら、LANは単なるインフラ、CSはその上のアプリケーションの一つの形式(思想?)であることを明確にしないと。
 
 
 
Re: CS v.s. LAN (池田信夫)
2008-07-19 23:58:40
サーバを物理的な端末と考えると、光ファイバーなどと同じ物理層ですが、SMTPサーバのような「サーバソフト」と考えるとアプリケーション層になります。どっちにしても、LAN(データリンク層)とサーバという別のレイヤーの概念を対立させているのがそもそもおかしい。

さらに厳密にいえば、イーサネットも本質的にはCSMAというプロトコルにすぎず、サーバの概念は含まれていません。しかしイーサネットをE2Eで構成することはまずなく、UNIXのC-Sシステムで使われることが多かった。TCP/IPは、イーサネット間を結ぶinternetworkingとしてできたのです。
 
 
 
C/SとLANとイーサーとTCP/IP (TOM)
2008-07-20 00:54:08
第3次オンラインですか、懐かしいですね。
検討当初はOSI7階層も4階層くらいまでしか定義されていなくて、複数ベンダのメインフレームをつなぐためのプロトコルの独自定義やミドルウエアを独自開発したものです。今となっては考えられない時代でしたね。(検討から第一弾リリースまで5年とか掛かっていましたから)
さて、池田先生を含めて、皆さん誤解している部分が多いので、簡単にコメントしますと
C/S:アプリケーションの実装方法(OSIとしての定義はありません)
LAN:ネットワークの名前(OSI7層の定義はない)
Ethernet:(OSIの第1層、2層)10BaseT、100BaseT、光とか言われているもの。
サーバ:ハードウェアとして考えるよりもソフトウェアとしてOSI第7階層と考えるのが一般的です。サーバを物理層として定義するということはしません(これはサーバはOSI7階層全てをハード、ソフト的に実装しているからです)
TCP/IP:IP(第3層)、TCP(第4層)として定義されます。
まぁ一般の方が意識して使うものではないですから間違えてしまうのは仕方ないとは思いますが、コンピュータ雑誌の編集者を含めて、あまり間違った記事・コメントはされないほうが良いと思います(その道のプロから見ればASCIIの元記事を含めて間違いだらけですから)
 
 
 
それも一つの解釈 (池田信夫)
2008-07-20 01:20:41
技術屋さんは、自分の会社の狭い常識を絶対的真理として他人に押し売りする傾向が強いが、OSIの解釈は企業によって違います。あなたの解釈はIBM(SNAベース)に近い。NTTは、電話からサーバまで、端末はすべて「物理層」と考えます(私も違和感あったけど)。もともとOSI自体が観念的な分類にすぎないから、解釈が違っても実害はないし、さらにいえばOSIが唯一の分類基準というわけでもない。特に第5層から上は、ほとんどわける意味がない。

ただ、どう解釈しても「インターネット(TCP/IP)がクライアント=サーバ型」というのは明白な間違いです。
 
 
 
それも一つの解釈 (kazz)
2008-07-20 02:41:15
私は恐らく確実にTOMさんとは違う会社の人ですが、解釈としてはTOMさんと同じです。自社だけの狭い常識では、ないと思います。
NTTさんの解釈は、、違和感ありますねぇ。物理層ていうと私はイエローとかThinとかツイストペアとか光とか、ケーブル的なイメージですが。

インターネット=TCP/IP=end-to-end=peer-to-peer のような表現がありますが、インターネット≠TCP/IP(LANでもTCP/IPが使えます)ですし、TCP/IP≠peer-to-peer です。
TCP/IPはそれ自体を見ればむしろC-S的(Listen or Connect)です。実際にはその上で何を動かすかで、C-S型なのかP2P型なのかが決まります。

> ただ、どう解釈しても「インターネット(TCP/IP)がクライアント=サーバ型」というのは明白な間違いです。

現状のインターネット利用では、(トラフィックは占有してるようですが)P2Pの方が異端だと思います。
元記事微妙ですが、、一般家庭や企業ユーザから見たインターネットは、確かにC/S的なサービスの利用が主流で、インターネットがC/S(が主流)という解釈も納得できます。それも一つの解釈と思います。

でも、インターネットはクライアント=サーバ型だけってわけじゃないです。
いつも勉強させて頂いておりますが、思わず食い下がってしまいました。
 
 
 
OSIって (TOM)
2008-07-20 02:52:56
OSI(Open Systems Interconnection)ですから、企業間で異なる解釈をしていると異機種間で接続することとなんて出来ませんよ。
池田先生がおっしゃられているのは、NTT(旧電電公社)が富士通とNEC(とか電電系のメーカ)と作ったプロトコルを指していませんか?(これについては私も全く知識を持っていません)
少なくともOSI(OSI参照モデル)では、サーバは物理層には入れません。
>あなたの解釈はIBM(SNAベース)に近い。
OSI参照モデル自体がSNAベースで構築されていますから仰るとおりです。
>さらにいえばOSIが唯一の分類基準というわけでもない。特に第5層から上は、ほとんどわける意味がな
「今となっては」という前提をつければAgreeです。特に上位レイヤでTCP/IPがデファクトになった今は(それでもミドル屋5層は多少意識しますが)6,7層の差は無いでしょうね。

>どう解釈しても「インターネット(TCP/IP)がクライアント=サーバ型」というのは明白な間違いです。
仰るとおりです。
池田先生のか書かれた「クライアント・サーバー(以下C-S)システムは「LANとはまるで異なる」ものではなく、ほとんどすべてのLANはイーサネットというC-Sシステムである。」も明確な間違いです。
「クライアント・サーバー(以下C/S)システムは「LANとはまるで異なる」ものではなく、そもそもC/SとLANを比較していること自体がおかしい」
の方が良いと思います。イーサーC/Sをイコールにしているところは明確な間違いです。
 
 
 
前にも書いたように (池田信夫)
2008-07-20 07:29:00
重箱モードでいえば「そもそもC/SとLANを比較していること自体がおかしい」。この二つの概念は直交しているので、遠藤氏の「クライアント・サーバー型システムは、単なるLANとは思想的にまるで異なる」という発言は誤りです。「ほとんどすべてのLANはイーサネットというC-Sシステムである」という私の言明は、概念や思想の問題ではなく、事実としては間違っていません。C-Sで構成されていないイーサネットなんて、ほとんどありません。

「実際のウェブはサーバで運用されてるんだから、インターネットはC-S型でもいいじゃないか」という類のいい加減な議論をする人は、TCP/IPがなぜ中央集権的なサーバをもたないend-to-endで構成されたのか、本文にリンクを張ったDavid Clark et al.の論文を読んでください。これがインターネットの「思想」です。
 
 
 
訂正 (池田信夫)
2008-07-23 01:54:58
リンクを張った本文が訂正されたようです。

ただ、やはり「半分権型」のC/Sと「自律分散型」のE2Eの違いは明確にしてほしいところですね。特に今後cloud computingに発展する方向は、E2Eの延長上にあるわけです。これに対してNTTのNGNは、インターネット全体をサーバ中心の集権型に引き戻そうとしている。私は後者の方向は失敗すると思うので、この違いは重要です。
 
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