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人権という迷信
きのうの記事がわかりにくかったようなので、少し補足しておこう。「基本的人権」を信じる人にとっては、人権を売買するというのは許しがたい発想だろうが、そんな不可侵の重大な権利が「生まれながらに万人に等しく与えられている」というのは、根拠のない迷信である。そもそもこれは事実の記述なのか価値判断なのかも不明だ。
事実としては人が遺伝的に人権を持って生まれてこないことは明らかなので、これは「政府が人々に人権を与えるべきだ」という価値判断だろう。しかし生まれた瞬間に、すべての人に同じ権利を政府が賦与すべきだという根拠はどこにあるのだろうか。こうした自然権の概念の欠陥を最初に指摘したのは、エドマンド・バークである。彼はフランス革命の掲げた人権(human rights)の絶対化を批判してこう書く:
権利とは、定型的な契約のテンプレートを実在的な対象として表現することによって契約手続きを簡素化する技術である。これはプログラミングでいえば、特定の関数(契約)の集まりを標準化し、オブジェクト(権利)としてカプセル化するのと似ている。権利を法律として実装して変更不可能にすることは、契約を繰り返し利用可能にし、効率的に執行する上では便利だが、それ以上の意味はない。
経済学はこの点について自覚的で、たとえば所有権は、すべての出来事(contingency)が事前に特定できる完備契約の世界では存在しない(これは実はマルクスと似ている)。それが必要になるのは、契約で想定した以外の出来事が発生した場合に、それを処理する残余コントロール権を特定の当事者に事前に与えることによって、彼が投資水準を最適化するためだ。したがって事前に当事者の合意が成立していれば、どんな権利を設定してもかまわない。
たとえば「年俸を2倍にする代わりに私をどんな企業に転売してもかまわない」という契約でもいいし、逆に「雇用は保障してほしいが賃金はいくら下げてもいい」という契約でもかまわない。こうした契約の自由度を上げることによって労働市場の柔軟性を高めようというのが労働契約法だが、団体交渉権の独占を失うことを恐れる労働組合の政治力によって形骸化されてしまった。
著作権にしても労働基本権にしても、本質的には定型的な契約にすぎず、絶対不可侵の自然権ではない。それは法律として絶対化されれば国家によって強制されるが、本源的にはバークもいうように慣習によって形成されるものだから、実態にあっていなければ変更するのが当然だ。規制強化や権利のインフレによる官製不況を逆転させるには、まず人権という迷信から覚めることが必要だろう。
追記:コメントで教えてもらったが、週刊ダイヤモンドの元編集長が「正社員のクビを切れる改革」が必要だと論じている。
事実としては人が遺伝的に人権を持って生まれてこないことは明らかなので、これは「政府が人々に人権を与えるべきだ」という価値判断だろう。しかし生まれた瞬間に、すべての人に同じ権利を政府が賦与すべきだという根拠はどこにあるのだろうか。こうした自然権の概念の欠陥を最初に指摘したのは、エドマンド・バークである。彼はフランス革命の掲げた人権(human rights)の絶対化を批判してこう書く:
私は、各個人が国家の運営において持つべき権限、権威、指揮などを文明社会内の人間の本源的直接的な権利に数えることを拒否する。私の考察対象は文明社会の人間であって、これは慣習(convention)によって決定さるべき事柄である。[・・・]統治機関は元来、それからは全く独立して、格段に明晰で抽象的な完成の姿で存在するごとき自然権のために形成されるものでは決してない。(『フランス革命についての省察』上、p.110〜1)このように「知的財産権」や「プライバシー」を絶対化する人々の主張は、バークによって200年以上前に否定されたものだ。人はどんな権利も生まれながらにもってはいないし、特定の絶対的な権利をもつべき先験的な理由もない。
権利とは、定型的な契約のテンプレートを実在的な対象として表現することによって契約手続きを簡素化する技術である。これはプログラミングでいえば、特定の関数(契約)の集まりを標準化し、オブジェクト(権利)としてカプセル化するのと似ている。権利を法律として実装して変更不可能にすることは、契約を繰り返し利用可能にし、効率的に執行する上では便利だが、それ以上の意味はない。
経済学はこの点について自覚的で、たとえば所有権は、すべての出来事(contingency)が事前に特定できる完備契約の世界では存在しない(これは実はマルクスと似ている)。それが必要になるのは、契約で想定した以外の出来事が発生した場合に、それを処理する残余コントロール権を特定の当事者に事前に与えることによって、彼が投資水準を最適化するためだ。したがって事前に当事者の合意が成立していれば、どんな権利を設定してもかまわない。
たとえば「年俸を2倍にする代わりに私をどんな企業に転売してもかまわない」という契約でもいいし、逆に「雇用は保障してほしいが賃金はいくら下げてもいい」という契約でもかまわない。こうした契約の自由度を上げることによって労働市場の柔軟性を高めようというのが労働契約法だが、団体交渉権の独占を失うことを恐れる労働組合の政治力によって形骸化されてしまった。
著作権にしても労働基本権にしても、本質的には定型的な契約にすぎず、絶対不可侵の自然権ではない。それは法律として絶対化されれば国家によって強制されるが、本源的にはバークもいうように慣習によって形成されるものだから、実態にあっていなければ変更するのが当然だ。規制強化や権利のインフレによる官製不況を逆転させるには、まず人権という迷信から覚めることが必要だろう。
追記:コメントで教えてもらったが、週刊ダイヤモンドの元編集長が「正社員のクビを切れる改革」が必要だと論じている。
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となっており、これは労働の有無とは関係ありません(働かざるものも喰う) 。
自然人は法人と異なり生命体である以上一度死ぬと二度と生き返ることは無いからです。
もちろん「最低限」の保証であって、何も皆そこまで落ちたくないのも事実でしょう。が、昨今の状況を見ると「まずい食事」と「汚い部屋」でさえ求める人々すべてに用意できない我が政府は憲法に反する犯罪者集団ということになります。私は決して社会保障や生活保護のことを言っているのではありません。
貧富の差など関係無しに(もちろん金持ちは遠慮するでしょうが)日本国民は望めば最低の食住を享受する「権利」を持っているということです。
一年契約社員を三回三年契約更新すれば正社員にしなければならないという改正です。
このため外国企業は二年で更新を打ち切ったり、契約社員をなくしたり、企業自体が撤退したりして、中国人の雇用機会は返って減少しました。
ただ、こうした「最小国家」の上にどういう法秩序を構築すべきかについては二つの考え方があります。ケルゼン的な実定法主義では、すべての法制度はフィクションなので、その論理整合性に正統性の根拠を求めるが、バーク的な自然法主義では慣習(コモンロー)に正当性を求める。
前者がフランス革命からロシア革命に至る悲惨な歴史をもたらしたことはバークの予言したとおりですが、バーク的な保守主義では、既存の慣習が根本的に状況にそぐわなくなったときも、ピースミールな改良しかできない。これが「イギリス病」で、晩年のハイエクが逢着したジレンマです。彼は最終的にはバーク主義を放棄して議会制度の改革に取り組み、彼の思想を実行したサッチャー政権は「保守革命」と呼ばれました。いまだに「ピースミール社会工学」とかいっている自称保守主義者は、こういう問題を認識すらしていない。
雇用やベーシック・インカム(負の所得税)などについて、池田さんの意見と同じ路線の内容がざっくりとわかりやすく(ややチャラい文体ではありますが)書かれているように思いましたのでご紹介します。
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51448768.html
契約の文言をすべて理解してサインするのは、労力とある程度の専門性が必要です。
相手の無知に付け込んだ非人道的な契約を排除するために、生命に関わることなど「基本的」なものに限定して保護するのは理解できます。
もちろん、パターナリズムも行き過ぎると問題ではありますが。
それにしても・・・
おお、池田クン、いいこと言うじゃないか。ねぇ、今度ボクと対談しようよ。――西部ススム(冗談)
契約理論というものの存在を教えていただいて感謝しております。今後ともよろしくおねがいします。
(生存権について)
>これは労働の有無とは関係ありません(働かざるものも喰う)
残念ながら我が国の憲法は、第27条の勤労の義務規定と相まって、「働く能力とその機会があるにもかかわらず、働かない者は、生存権の保障が十分に及ばないなどの不利益な扱いを受けることも仕方がない」という解釈を受けています。
ブログの記事やコメントの趣旨とは少々はずれますが、念のためコメントをしておきます。
http://diamond.jp/series/tsujihiro/10013/
池田先生が言うような政策は、一体どうすれば実現できるのでしょうかね??
そして今ある定義は古すぎて時代にそぐわないか、もしくは拡大しすぎているものもあると。
問題は権利の存在と定義がセットになってフィックスされてしまっている所であって、そこをアンバンドルしようということですね。
権利そのものは存在するけど、生まれながらに絶対的に与えられたいわば専売特許はない。
また権利の定義は時代によって流動する必要があると。
今再定義が必要なのは経済に関わる部分だ。
概ねこう理解しました。
ソフトウェアの比喩がありましたがOSの歴史を想起します。
現在のシステムはドライバにバグを抱えたモノリシックカーネル上に成り立っているといった所でしょうか。
システム全体がクラッシュする前にバグフィックスかカーネルを変更する必要がありますね。
さしあたって知財ドライバには顕在化した大きなバグがあり障害になっています。
こんなことは自明の理で、今さら論じるまでもない。ところが八代尚宏氏などがそういう意見をのべると、すごい政治的な反発があるので、恐くて誰もいえない。当ブログでいうしかないのでしょう。
てことは究極的な答えは共有ということ?
でも物理的にすべてを共有するのは難しいのでその枠組みが必要。
最低限のルールは基本的人権というよりも基本原則か。
意味不明で抽象的すぎるな。
本題とはずれているかもしれない。
慣習が変わるのは、最初は個々のバランスシートでの試みに始まると思います。そこが適応に成功すると、手法が他のバランスシートに伝播する。
かなり過激なことも長い時間を掛けて社会は取り込んでしまうと思います
ところが、わが国の官僚のなかには左翼的な考え方をする人が多く、「人権」と言う言葉に敏感に反応し、人権侵害などの問題があれば、喜んで規制と処罰を含んだ法律を作りだします。この傾向は未だに続く悪弊で、人権関連の法律だけでこれまでどれだけの税金が使われてきたことでしょうか。おそらく何十兆円と言う額ではないかと思います。
左巻き官僚はバーグの言葉をかみしめるがいい。
この論を、知識のない者にも理解しやすく解説した参考書、あるいはwebサイトなどをご紹介いただけないでしょうか。よろしくお願いします。
社会主義者は誰にも人権が100%あるなんて考えていないでしょう。すべては相対的と考えるのが彼らの哲学ですから。例えば、かれらの理論では、社会主義を実現する段階ではプロレタリア独裁が不可欠となりますが、これは資本家階級を搾取し、弾圧し、再教育する過程です。それがないと、反革命によって社会主義が破壊されるからです。ここでは権利は平等ではありません。
「官僚のなかには左翼的な考え方をする人」
一応形式的には新憲法は基本的人権を謳っています。(現実にどれだけ実現可能かどうかはともかく)人権擁護という考え方を官僚は知っておく必要があります。そうでないと困る。
他方で、官僚は官僚という地位を既得権として擁護しようとします。税金の無駄遣いであるかを問わず、とにかく仕事になりそうなことなら何でもやり始めます。常にそういう材料を探しています。「今年はこれをやりました。予算を取りました。だから、来年も予算を取ります」というのが基本です。
人権侵害で困っている人がいたら、それに対する対策に予算を使って仕事をするかもしれません。そのうちのどれだけが有効かは知りませんが。しかし、これは彼らが左翼だからやっているのではありません。左翼が人権擁護の妄想に取り憑かれているからではないのです。なぜなら、人権関連以外でも、官僚は同じような行動様式を取っているからです。役立つこともあるかもしれないが、ご指摘どおり、ムダもすごく多い。ムダが多いのは官僚が左翼的思考に染まっているからでも、フランス的合理主義の信者だからでもありません(合理主義者だったら、もっとムダは少なくなってるはず)。現在の行政機構自体に問題があるのです。
一体何をもって左翼とするのかを明確にする必要があります。また、何でもかでも左翼のせいするのが正しい、というわけでもありません。
もし、大きな政府を生む傾向のある(アメリカの民主党などの)リベラリストのことを「左翼」だといわれるのなら、理解できないことはありません。彼らの政策は、同じようなムダを生むかもしれません。(というか、官僚に利用される危惧あり)。ただ、そこまで左翼の範囲を広げた場合、前述の理由から、社会主義者(=共産主義者)はその「左翼」とは一緒にはできなくなりますね。
一言二言話すと、鳥肌が立つ。
米国民主党やオバマにそれを感じます。
日本には、冷戦の敗戦で押し黙った左翼が多いです。
けれども、こういう状況になると死体を好む蛆虫のように湧いてきます。
僕はパソコン通信時代から日本のマルクス主義風土を糾弾し続けてきました。
これからも続けます。
彼らの言っていることは嘘です。
小倉さんが反論を書いてますね。法学的には「正しい」のかもしれないけど、法学的常識に安住しすぎてる。
呆れたのは、解雇問題をめぐる二つのエントリー
http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2009/01/post-add2.html
http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2009/01/post-0a23.html
もうちょっとできる人なのかなと思ってたけど、典型的弁護士(法学者)でした。経済学の初歩的知識がない人間がこういう感覚で経済政策に発言しているのはぞっとしますね
ただ、屁理屈言ってみました(;´・ω・`)ゞごめんなさい
フランス人権宣言の基になった、アメリカの独立宣言を見れば、
より明確に"God"という概念を記述しており、人間が平等な理由の根源も
"created"という表現をわざわざ使って、神によって平等に作られたからであると
宗教的な根拠付けで正当化しているわけですから。
特に、神の下の平等を強調するのはピューリタンだからという側面もあると考えます。
カトリックへの対抗上。
日本では天賦人権説なんて名称で、明治時代に紹介・導入されてますが、
本来はこれは神賦と訳すべきでしょう。ただ、それでは、非キリスト教的な
日本社会には受け入れられないので曖昧に誤魔化したのだと思います。
日本的な価値観というと、仏教や神道に由来する、動物も植物も万物全て等しく
尊厳を持つという考え方で、その前提の中では、ある程度の差別や格差や支配は
受容されていた気がします。
これは人間だけ特別視するキリスト教的価値観と折り合わない。
ただ、上のコメントにもあるように日本においても人権の概念は、
人道を守るために慣習的に有効な役割を果たしているという点には同意です。
根拠がないというべきなのは国民・国語・国家の概念でしょう。何らかの人類普遍に適用される理念を全くなしでヒトが歴史を営むのはある程度の困難さを伴うでしょう。一方日本人・日本語・日本国といった枠組みがなくても歴史の存続が可能なのは自明なわけで、人権的なものよりもはるかに遺伝的構造からの無根拠さは高いです。
>一方日本人・日本語・日本国といった枠組みがなくても歴史の存続が可能なのは自明なわけで
これこそ妄言だろう。歴史とは書かれた物語に限らず、それまでの文化・科学・学問の積み重ねも含む。
日本人を構成する要素が消えるだけなら、他国民として生きられるかも知れないが、世界中の歴史が消滅したら、人は原始時代に逆戻りする事こそ自明。
人権は、そうした歴史的概念の中で生まれた一つの改変可能な思想に過ぎない。
たしかにそんな根拠はどこにもないわけですが、方実証主義にもとづいて、政府による私有権や生存権の制限を合法化してきた経験から言えば、政府による法の支配を認めてしまわないためには、戦略的に自然権を認める方向で権利を主張する方が良いでしょう。法実証主義というのは、政府によるあらゆる行為(私有財産権の制約を含む)を免罪する法制度に可能性があるという意味で、リバタリアンがとるべき思想ではないと思います。共産主義的・全体主義的な政府の正当化に荷担することにつながりかねません。
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