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アメリカという特殊な国


今回の金融危機を「アメリカ資本主義の崩壊」とか「グローバリズムの終焉」などという向きも多いが、投資銀行に代表される超合理主義は、アメリカの土着の思想ではない。その「古層」には、合理主義を否定し伝統に回帰する保守主義が今も根強い。
独立革命で英本国と戦った人々には、国家権力に対する不信感が強かった。米国憲法の起草者たちが書いた『ザ・フェデラリスト』では、連邦政府が州を支配することに反対する人々を説得するために、州のような直接民主主義のほうが「多数の専制」に陥る危険が大きいと論じている。この意味でアメリカ民主主義の起源は、バーク的な保守主義に近い。そこにみられるのは、啓蒙的理性への懐疑であり、政府に対する不信である。
これに対して戦後、民主党政権のもとで合理主義的なリベラルが優勢になり、Affirmative Actionのような平等主義とケインズ的な介入主義が続いたが、1980年代のレーガン政権以降、保守主義が息を吹き返した。それがブッシュ(子)政権で過激化したのが、ネオコンである。しかし彼らの源流はトロツキストや民主党左派で、アメリカ的民主主義を戦争に訴えてでも世界に輸出しようとする発想は、世界革命を信じたトロツキーと同じだ。この意味でネオコンは、アメリカの保守主義の中では異端である。その影響力がピークに達したのが第1次ブッシュ政権だが、イラク戦争の失敗で壊滅した。
『追跡・アメリカの思想家たち』は、バークを「再発見」したラッセル・カークを出発点とし、レオ・シュトラウスやニスベットなどの足跡をたどり、アメリカの保守主義の原点をさぐったものだ。11人も取り上げているので、個々の思想家については「さわり」程度の記述しかなく、読み方もジャーナリスティックで哲学的な深みには乏しいが、日本であまり紹介されていないアメリカの保守主義についての入門書としては便利だろう。
もう一つのアメリカの精神的支柱は、キリスト教である。大統領選挙で妊娠中絶が大きな争点になるのは、アメリカ国民を動かす動機が欲望よりも理念であることを示している。これも建国の父のピューリタニズムの遺伝子が受け継がれているのかもしれない。数万人の信徒を擁してディズニーランド化した「メガ・チャーチ」や、ケーブルテレビで数百万人に伝道する"TV Evangelist"などは、キリスト教がアメリカの精神的なインフラになっていることを示している。
『アメリカの宗教右派』は、このわかりにくいキリスト教右派の実態を整理したものだ。著者によれば、教会はもとは政治とは無縁だったが、カーター政権で南部の福音派が政治的な発言力を強めたことをきっかけにして、共和党の中で宗教右派の発言力が強まったという。彼らの勢力が最大になったのも"born again"体験をもつブッシュ(子)大統領のときだったが、宗教右派に批判的なマケインが共和党の大統領候補になるなど、彼らの影響力も衰えている。
このようにアメリカは、よくも悪くも特殊な国である。彼らは英語以外の言語を知らず、パスポートの所持率は20%以下。海部美知さんもいうように、アメリカこそ「パラダイス鎖国」の国なのだ。そこで生まれたものがグローバルに見えるのは、彼らが英語とドルという標準を握っているからにすぎない。しかしグローバル資本主義によってローカルな秩序が破壊され、世界は原子的個人に分解されつつある。アメリカ的な生活様式が普遍性をもつようにみえるのは、彼らが200年前からこの孤独な世界に生きてきたためだろう。
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パラダイス鎖国=言いえて妙。独善鎖国は言いすぎですか。
空港で必要なのは免許証と航空券の予約だけで、国内線と国際線という区別もあまり感じておらず、国外に出るのにパスポートが必要と知らないないのでは?
茶々でしたm(..)m
留学者の数も少なそうです。私のアメリカ人上司は「なぜ日本人はこんなに留学好きなんだ。私は留学したいと思ったことなど一度もない」と豪語してました。高等教育はアメリカが世界一らしいからそれも当然なのでしょうが、海外留学率の低さがアメリカの知識層に及ぼすマイナスの影響も少しはあるんじゃないでしょうか。
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