北方謙三『楠木正成(上・下)』中公文庫、2003年6月25日初版発行
○あらすじ(文庫裏面より)
ときは鎌倉末期。幕府の命数すでに無く、乱世到来の兆しのなか、大志を胸にじっと身を伏せ力を蓄える男がひとり。その名は楠木正成―――。
街道を抑え流通を掌握しつつ雌伏を続けた一介の悪党は、倒幕の機熟するにおよんで草莽のなかから立ち上がり、寡兵を率いて強大な六波羅軍に戦いを挑む。己が自由なる魂を守り抜くために!北方「南北朝」の集大成たる渾身の歴史巨篇。(上より)
潰えれば、死。壮絶なる覚悟を抱き決起した楠木一党は、正成の巧みな用兵により畿内各地で幕府の大軍を翻弄。ついには赤松円心、足利高氏らととともに京を奪還し、ここに後醍醐帝の建武新政が成就する。しかし―――。
大志を貫くも、過酷な運命によって死地へと赴かざるを得なかった悪党・楠木正成の峻烈な生き様を迫力の筆致で描く歴史巨篇。(下より)
☆----------------------☆
流浪してはじめてわかりましたが、家があり村があるというのは、人にとって大切なことです。ひと時、懐を潤すより、帰る家や村があることが大事だと、いまははっきりわかっています。上・p60
人には、秋(トキ)というものがある。その秋を得るまでは、待つのが賢明でしょう。上・p128
やると言ったら、最後までやるかどうか。人の性根は、そういうところから見えてくる。上・p206
生きながらの死より、闘って散るほうを私は選ぶ。上・p249
勝つのだ。勝つために、俺は全知全能を絞ろう。いま、楠木が戦をやらねばならん理由はない。しかし、いまやっておかぬと、少しずつ締め上げられ、やがて悪党でさえもなくなっていく。俺は、それを拒むと決めた。悪党として、生き延びる。さもなくば、闘って散る。上・p259
大将が危険に踏み込む。それで、負ける戦が勝てるかもしれないのだ。相手にしているのは、幕府だぞ。いまのままで、勝てるわけがあるまい。 下・p11
商いの勝負はな、どうやって相手の懐を空っぽにしてしまうかなのだ。銭がない、物がない。相手をそんなふうにしてしまえば、商いでは勝てるのだ。下・p30
力があって、見落としても問題なかったものが、力が落ちていっても、同じ見方しかできない。実際に負けるまで、わかりはしないのだ。下・p33
男は夢を追って闘うのではないか。闘うなら、おれはそうなのだ。夢の半分も、掴めはしないだろうと思う。しかし、追う。追うことで、俺は生ききったと思えるようなきがするのだな。 下・p60
長い間、私は諸国を興行して回り、民の表情にこそ真実があると、身をもって知りました。下・p87
いまをおいて、命を燃やす時はないのだ、祐清。ここを耐え抜けば、わずかだが勝利の光は見える。なんとしても、十万を超える大軍を、畿内にひきつけなければならん。下・p90
男は、心の中がどうであれ、雄々しく闘えればいいのだ。下・p118
前の戦にこだわってはならん、貞範。次の戦のことを、いつも考えるのだ。下・p172
「尊氏殿。この世には、めぐり合わせというものがある、とそれがしは思います。すべては、めぐり合わせがさせることでしょう。」
「正成殿は、すべてをそう思い切ることができるのか?」
「しなければならない、ということでございましょうな。思い切らねば、いつまでも妄執が残ります」下・p226
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○あらすじ(文庫裏面より)
ときは鎌倉末期。幕府の命数すでに無く、乱世到来の兆しのなか、大志を胸にじっと身を伏せ力を蓄える男がひとり。その名は楠木正成―――。
街道を抑え流通を掌握しつつ雌伏を続けた一介の悪党は、倒幕の機熟するにおよんで草莽のなかから立ち上がり、寡兵を率いて強大な六波羅軍に戦いを挑む。己が自由なる魂を守り抜くために!北方「南北朝」の集大成たる渾身の歴史巨篇。(上より)
潰えれば、死。壮絶なる覚悟を抱き決起した楠木一党は、正成の巧みな用兵により畿内各地で幕府の大軍を翻弄。ついには赤松円心、足利高氏らととともに京を奪還し、ここに後醍醐帝の建武新政が成就する。しかし―――。
大志を貫くも、過酷な運命によって死地へと赴かざるを得なかった悪党・楠木正成の峻烈な生き様を迫力の筆致で描く歴史巨篇。(下より)
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流浪してはじめてわかりましたが、家があり村があるというのは、人にとって大切なことです。ひと時、懐を潤すより、帰る家や村があることが大事だと、いまははっきりわかっています。上・p60
人には、秋(トキ)というものがある。その秋を得るまでは、待つのが賢明でしょう。上・p128
やると言ったら、最後までやるかどうか。人の性根は、そういうところから見えてくる。上・p206
生きながらの死より、闘って散るほうを私は選ぶ。上・p249
勝つのだ。勝つために、俺は全知全能を絞ろう。いま、楠木が戦をやらねばならん理由はない。しかし、いまやっておかぬと、少しずつ締め上げられ、やがて悪党でさえもなくなっていく。俺は、それを拒むと決めた。悪党として、生き延びる。さもなくば、闘って散る。上・p259
大将が危険に踏み込む。それで、負ける戦が勝てるかもしれないのだ。相手にしているのは、幕府だぞ。いまのままで、勝てるわけがあるまい。 下・p11
商いの勝負はな、どうやって相手の懐を空っぽにしてしまうかなのだ。銭がない、物がない。相手をそんなふうにしてしまえば、商いでは勝てるのだ。下・p30
力があって、見落としても問題なかったものが、力が落ちていっても、同じ見方しかできない。実際に負けるまで、わかりはしないのだ。下・p33
男は夢を追って闘うのではないか。闘うなら、おれはそうなのだ。夢の半分も、掴めはしないだろうと思う。しかし、追う。追うことで、俺は生ききったと思えるようなきがするのだな。 下・p60
長い間、私は諸国を興行して回り、民の表情にこそ真実があると、身をもって知りました。下・p87
いまをおいて、命を燃やす時はないのだ、祐清。ここを耐え抜けば、わずかだが勝利の光は見える。なんとしても、十万を超える大軍を、畿内にひきつけなければならん。下・p90
男は、心の中がどうであれ、雄々しく闘えればいいのだ。下・p118
前の戦にこだわってはならん、貞範。次の戦のことを、いつも考えるのだ。下・p172
「尊氏殿。この世には、めぐり合わせというものがある、とそれがしは思います。すべては、めぐり合わせがさせることでしょう。」
「正成殿は、すべてをそう思い切ることができるのか?」
「しなければならない、ということでございましょうな。思い切らねば、いつまでも妄執が残ります」下・p226
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