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トランプ米国が動き始めた 

2017-01-25 13:10:44 | 市場創造
ヒット商品応援団日記No670(毎週更新) 2017.1.25.

トランプ大統領の就任演説後の反応であるが、米国内における自然発生的なデモに加え、口先介入によるペソ下落による経済打撃に揺れるメキシコを始めドイツや英国など主要各国で反トランプ運動のデモが270万人規模で行われたと報道されている。政権が変わるたびに反政権デモが行われるのは通例であるが、ここまでの規模は国際政治の素人である私も聞いたことがない。
トランプ大統領の就任演説を聞いた感想であるが、昨年12月「真逆の時代に向かって」というタイトルでブログに書いた通りの内容であった。140文字のツイートをつなぎ合わせた演説で、「オバマ政権」とは真逆の政策であると指摘をしたのだが、年が明け日本のメディアのトランプ評価もやっと「真逆」の政策が現実化されるのではという論評が増えてきた。ただ、新鮮味のなかった演説内容で気になったのが「アメリカファースト」の言葉とともに盛んに言われていたのが過去の米国の強さ・偉大さ・誇り・夢・・・・・・・を「取り戻す」という演説内容についてであった。いつ頃の、どんな米国を取り戻すのか、ということで、これからトランプ米国の「ディール・取引」の内容に関わるものであった。国際政治の専門家によれば「アメリカファースト」というキーワードが使われたのは1920年代の大統領選挙で共和党のウォレン・ハーディングが使ったキーワードであったと指摘していた。ちなみに、ハーディングのスローガンは「いつもに戻ろう("A return to normalcy”)」で選挙に圧勝した。その米国はいわゆる第一次世界大戦後の米国が「永遠の繁栄」と呼ばれる経済的好況を手に入れた時期である。鉄鋼を始めとした重工業の輸出、モータリゼーションがスタートし自動車産業が勃興する。ある意味「良き米国」「豊かな米国」を享受した時代である。そして、周知のように1920年代末にはウォール街大暴落を入り口にした世界恐慌が始まる時代である。
トランプ大統領がイメージする米国を「先祖返り」であると批判する専門家もいるが、ハーディング大統領がその後行ったブロック経済はトランプ米国の意志である保護貿易に酷似していることはいうまでもない。そして、そうしたブロック経済から第二次世界大戦へ向かっていく歴史を思い起こさせる。

ところで就任後、正式なTPP永久離脱、NAFTAの再交渉など今まで発言してきたことの実行段階へと進んできた。そして、為替や株式市場は就任演説が減税や公共投資といった政策の具体性を欠いたことから「トランプ相場」は落ち着いたようだ。東京の株式市場も円高、株安へと動いている。昨年のブログにも書いたが、加熱した「トランプ相場」の背景には減税と公共投資があると。更に、どこから財源を持ってくるのかという疑問符とともにである。
ところで1/23の日経新聞に面白い記事が載っていた。それは「「核心」米軍が債権者に敗れる日」という記事で、米国の財政状況は苦しく、ついに国防予算が国債利払いに追い越されるまでに至ったという内容である。つまり、減税や公共投資に必要な米国債の発行に対し買い手がつかないピンチにあるということである。そこでその買い手に日本をということは誰もが想像することである。既に昨年から米国債の一番の保有国である中国が米国債を売り始めている状況にある。トランプ大統領によるディール・取引が始まっているということが推測される。この取引には今まで言われてきた国境税のような関税をかける脅しや米軍の駐留費負担の増額、そうした中の一つに米国債の購入が入ってくるということである。勿論、TPPに代わる2国間貿易交渉でも多様なオプション(一律、品目別など)はあるものの高い関税がかけられることは必至である。そして、更に牛肉や米といった米国産商品の輸入拡大も当然迫られることになる。
1980年代から始まった日米経済摩擦を思い出すが、おそらくそれ以上の要求をしてくるであろう。当時、日本車をハンマーで打ち壊すニュース報道を思い起こし、あるいは米国内の自動車部品メーカーの部品を使えという要求もあった。今回はそれどころではない要求が始まると予測される。例えば、自動車であれば日本国内での米国車の販売数量が設定されるいわば「ノルマ」が課せられるような要求が出されるであろう。

トランプ大統領は就任演説の中で触れていた「忘れられた人々」である中西部の鉄鋼や自動車産業、白人労働者に復活を訴えて当選した。ビジネスマンであるトランプ大統領にとって、約束・契約した政策は実行されなくてはならない。民主主義社会で権力をとるのは世論調査ではなく、人々を投票所に行かせる動員力であることをビジネスマンとして熟知している人物である。こうしたトランプ支持層は低いとはいえ40%台も存在し、格差という不平等社会に対するルサンチマンを刺激することが最重要戦略となっている。だから、選挙中もこれからもこうした刺激を止めることはない。そして、その刺激ツールであるツイッターも止めることはない。それは権力を維持するためには不可欠な行動である。ある意味ネットメディアを使った直接民主主義と言えなくはない。それは就任演説でも述べられているが、権力をワシントンから労働者に取り戻すということの一つである。CNNをはじめとした既成のメディアをこれからも「敵」としていくことは言うまでもない。

いずれにせよ、トランプ米国が選挙公約を修正なしに実行するとすれば世界中が混乱することは必至である。NAFTAの再交渉が始まると報道されているが、米国への自動車輸入関税はゼロで、選挙中発言してきた35%にはならないと思うが、見直しされるのが域内での部品の調達率を定める「原産地規則」の見直しと言われている。そのポイントであるが、NAFTAでは乗用車の場合、部品の62.5%を域内で調達すれば関税が2.5%になる。そこで米部品メーカーが有利になるよう域内の調達比率を高める、そんな交渉が狙いであると言われている。こうしたルールの変更が今月末には話し合われると想定されている。そして、真っ先に影響が出てくるのが日本の自動車産業、部品メーカーである。ただこうした交渉テクニックではなく、本格的な国境税のような高い関税が実施されるようなことになれば、WTO違反であり、報復関税を招くなど貿易戦争に向かうこととなる。既にメキシコでは米国以外の輸出先の模索が始まっており、国民の消費レベルでは米国車の不買運動も始まっていると報道されている。

ただ、トランプ米国政府の主要人事が進んでおらず、政策の実行は大幅に遅れると言われている。また、共和党内部でも反トランプの議員はいるとも。上下院共に共和党が過半数を占めているが、数名の共和党議員が反対票を投ずれば政策は実行できないこととなる。
日本政府もそうした動きを見据えているとは思うが、日本と共に中国も貿易赤字の主要となる国であると名指しされているが、今のところトランプ米国からの赤字軽減のための「交渉」は見られない。いずれ表に出てくるであろうが、日本は中国の出方を踏まえて「交渉」すべきであろう。
「面従腹背」という言葉がある。うわべだけ上の者に従うふりをしているが、内心では従わないことを意味する音葉である。戦後日本は米国からの様々な要求に対し、根底にはこの「面従腹背」的な意志を持っていたと思う。米国従属との批判もあるが、敗戦国から少しずつ日本の国益ポジションを上げてきた70数年であったと思う。トランプ米国の誕生を機に、こうしたポジションから脱却し、正面から米国に向き合う時が来ているということだ。トランプ米国が最初に会う首脳は英国のメイ首相であると報道されている。米国と英国との自由貿易を柱とした新たなブロック経済圏ができるのではといった観測もあるようだ。また、為替も米自動車業界からドル高是正が要求されているとも。
トランプ米国がどんなディール・取引を求めてくるか、「真っ白な紙に絵を描く」ためにもじっくり見定めていくことだ。日本は周りを海に囲まれた島国である。地政学的にも古来から海道を通って多くの国と交流してきた歴史がある。渋谷のスクランブル交差点ではないが、コスモポリタンな国、それが日本である。スクランブル交差点が世界の観光地になったのも、外国人にとって「なぜ日本人はぶつからないのか不思議!」ということであった。そこにはぶつからない知恵や工夫があるということだ。トランプ米国の誕生は日本にとって変わることができる千載一遇のチャンスということだ。時にぶつかり、時に避ける自在な交渉がこれから始まる。そして、TPPというテーマが無くなったことは、一方では中国との関係を見直す時でもある。(続く)
ジャンル:
経済
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