ヒット商品応援団

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「脱デフレ」を終えた消費生活 

2017-04-23 13:13:29 | 市場創造
ヒット商品応援団日記No676(毎週更新) 2017.4.23.

4月に入りセブンイレブンが値下げの発表をし話題となったが、イオンは昨年からPB商品の値下げをし好調な業績を上げている。その業績を踏まえ、イオンの岡田会長は決算発表の記者会見で「脱デフレは大いなるイリュージョン(幻想)であったと断言し政府が目標とする脱デフレ政策を批判した。こうした値下げについては既に昨年夏のユニクロの値上げ失敗についても同様で柳井社長の決算会見で明らかになっている。そして、周知の通り良品計画も今年から衣料品を中心に大幅値下げに踏み切り、そして今回のセブンイレブンやイオンの追加値下げ発表である。さらに言うならば、少子化時代にあって大幅利益増を果たしている西松屋も低価格戦略を取っての好業績である。

こうした「値下げ」の背景には、当たり前のことであるが一部の大企業、特に輸出企業にとっては収入も増え消費も活況を呈してはいるが、このブログの読者は周知のことだが、多くの生活者にとっては収入は増えず、「価格」とその「満足度・効果」、いわゆるコスパの結果としてしか消費には向かわない。結果として、家計支出は連続12ヶ月マイナスとなっている。それでも限られた消費支出の中で「目一杯」楽しむ暮らしを目指している。そこにいるのは賢明な消費者である。単なる節約家としてではなく、ハレとケの例えではないが、暮らしにメリハリをつけた消費生活を送っている。

政府にとって「脱デフレ」は経済政策の目標であり、スローガンを降ろすわけにはいかない。しかし、生活者にとって「デフレ」によって生活が成り立っていることに素直である。この「素直さ」に対し当然小売業は敏感に反応する。セブンイレブンが日用品の価格をドラッグストアやスーパーの実勢価格に近づけることによって少しでも売り上げを伸ばすことができればと値下げに踏み切ったわけである。このように小売業だけではなく、ユニクロのようなSPA型の専門店もやっと一息つけることができた日本マクドナルドも、「実勢」と言う消費者の意向を探り、そこに知恵やアイディアを込めてメニューを作り、時に値下げもする。

家計支出の内容変化を見ていくと、値下げの実像が見えてくる。実はその家計支出の変化であるが、1970年代までは食費の占める支出が高く、次第に娯楽や衣料といった選択消費の比率が増え、1990年代に入りバブル崩壊によって娯楽や衣料への支出が縮小する。それでも1997年までは収入が増えていくが、以降10年間で年間100万円もの収入が減少する。この収入減に即応する形で多くのデフレ企業が誕生する。
2000年代ではどうかと言うと、生活のあらゆる領域で「価格破壊」が進行する。2000年代半ばにはその象徴でもある「100円ショップ」やドンキホーテのような新業態が急成長していく。そして、2010年代へと入っていくのだが、この間家計支出の中の一番の変化は「情報への支出」であった。通信費といったカテゴリーになるが、インターネット回線費用やスマホ利用の費用が全家計支出の12~14%、食費の24%につぐ支出にまで膨らんだ変化である。こうした背景から格安スマホが生まれたのだが、電力自由化同様、通信大手三社の回線を使う制約下ではそれほど大きな「格安」にはならなかった。

こうした家計支出の中で大きなウエイトを占めるのがやはり「食費」である。特に、バブル崩壊後は家庭内調理の内食化進み、外食もデフレ時代の旗手と言われた吉野家や日本マクドナルドのように低価格メニューが広く顧客支持を得る。更に、リーマンショック後には、「わけあり商品」が続々と市場に現ることととなり、更には家電調理器具の進化やCookPadの浸透によって、ある意味豊かな食が得られるようになった。数年前の一時期、外食産業は一斉に新メニュー導入による価格改定、あるいは値上げを図ったが、「顧客」によって全て敗退することとなった。

ところでバブル崩壊以降20数年、立場によって表現は異なるが、「低成長時代」の代名詞として「脱デフレ」が目標となった。それまでの高度経済成長期との対比からすると、ある意味「成長第一主義」からのソフトランディングがうまくいった国であるとも言える。これは皮肉でもなんでもなく、バブル崩壊後の日本の失業率を見れば一目瞭然である。
他国はどうかと言えば、例えば現在フランスでは10%前後となっており、ニュースにもなっているスペインの失業率は26%を超え、若年層の失業率は60%と高く、暴動すら起きかねない社会不安が渦巻いている。EUの優等生であるドイツはどうかと言えば4%台となっている。日本の場合は平均3%台といった水準で、ちなみに2017年2月度の完全失業率は2.8%である。
低成長ではあるが、失業率を見る限りソフトランディングに成功した唯一の国であると言えなくはない。恐らく、高度経済成長期にある中国もこうした日本の事例を参考としながらソフトランディングを目指していることだろう。

バブル崩壊以降、俯瞰的に消費生活を見ていくと、「価格」を軸にしながら、消費者と企業のキャッチボールが交わされ、企業の側に多くの「イノベーション」が生まれた。例えば、ユニクロの場合は製造を中国という海外に拠点を置き販売は日本という、いわゆるSPAというイノベーションであり、あるいは吉野家や日本マクドナルドのメニューもまたチェーンオペレーションにおける製造&調理のイノベーションによる大幅なコストカットによって美味い・安い・早いファストフードが実現した。一方、消費者の側も収入に見合ったそれこそ身の丈消費を実践してきた。しかも、ハレとケのようにメリハリのついた消費生活であり、そうした中で断捨離ではないが、新たなシンプルライフも生まれた。ライフスタイル的表現としてはクオリティ・オブ・ライフ(Quality of life)となる。低成長の中のクオリティ・オブ・ライフである。

冒頭の「脱デフレ」ではないが、言葉を変えれば高度経済成長というイリュージョン(幻想)から離れることとは、バブル崩壊後のソフトランディングした後の「日本」を考えていこうということである。日本の消費者が賢明であるというのは、マスメディアがいうデフレマインドとは異なり、「京都の知恵」ではないが、生活を豊かにする工夫・アイディアを自ら創り出し、消費を創る企業の側もそれに応え、それこそ身の丈にあった消費生活を送っているということである。京都は海から遠く、地場の農産物も少ない。京都のニシンそばではないが、北海道から海路運ばれてきた身欠きニシンをもどし使った独自のそばを作ったように。そうした意味で、消費者の生活は知恵や工夫のあるクオリティライフへと進化しており、既に「脱デフレ」を終えている。つまり、それまでの「量」や「回数」といった豊かさから、目的・費用・好みに応じたより自分にあった生活革新へと転換してきたということである。

そして、課題はソフトランディングした後の日本経済であるが、その前に生活者が「量的生活」から転換したように。従来の量的な成長概念から離れることが必要である。そのためにも「脱デフレ」といった概念を捨てることから始めるということだ。捨てたら、多くの諸条件にとらわれることなく、新しい日本の創造へと向かうことができる。既に進化している生活者のQuality of lifeに対し、Quality of Nationとでも表現できるような国づくり・グランドデザインということである。言うまでもなくクオリティライフデザインを目指し、コスパという価格認識を踏まえたクオリティプライフ、クオリティ商品・メニュー、クオリティサービスのイノベーションがこれからも続くことであろう。その先にQuality of Nationがある。既に「脱デフレ」を終えた消費生活 の時代にいるということだ。(続く)
ジャンル:
経済
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