ヒット商品応援団

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インバウンドビジネスの今

2016-10-15 13:18:12 | 市場創造
ヒット商品応援団日記No661(毎週更新) 2016.10.15.

先日大阪・ミナミの寿司店で訪日外国人に対し、過剰なまでのわさびを入れ「外国客への嫌がらせ」といった差別批判がネット上に書き込まれTVにも取り上げられ話題となった。更に、南海電鉄の難波発関西空港行き空港急行の車内アナウンスで「本日は外国人のお客さまが多く乗車し、ご不便をお掛けしております」としたことから、外国人への差別ではないかと、これまた話題となった。関西、特に大阪はインバウンドビジネスには力を入れており、訪日外国人が急増していることもあって、こうした訪日外国人への理解の無さが表へとやっと出てきたということだろう。

既に1年ほど前から訪日外国人の日本への興味、更にはその消費は大きく変わってきていると指摘をしてきた。訪日外国人とひとくくりにはできないが、その共通していることは日本人のライフスタイルへの興味で、普通の日常の生活、食事、住まい方、おしゃれ、娯楽や趣味、・・・・・・・・・私たちにとっては至極「普通」「当たり前」であることへの興味関心で、特にそのディテールについてである。
その象徴が「わさび」で、韓国人や中国人ばかりでなく、欧米人にとっても関心が高い香辛料である。ましてや寿司店で使われるすりおろしの生わさびなどは香りも良く、わさびを多く入れて欲しいと注文するのは至極当たり前のこととしてある。こうした「好み」はリピーターになればなるほどより強く出てくる。そうした「好み」はわさびだけでなく、和がらしや山椒、七味もそうであり、日本人の使い方とは少し異なる使い方になる。結果、リピーターの日本土産は何になるのか、こうしたチュウブ入りのわさびや和からしになるということである。つまり、何回か日本に来て、街を歩き、食べたり飲んだり、日本人と会話したり、そうした経験の中から「これはいいな」「自分に合っているな」・・・・・・そうした「好み」が鮮明になって来たということである。生魚をご飯にのせて食べるなどと敬遠して来た握り寿司も、ここまで進化して来たと理解すべきである。

南海電鉄の「差別アナウンス発言」も同じようなことで、悪意あってのことではないと思う。東京では成田エクスプレスには荷物用のスペースが用意され、羽田行きのモノレールも同様である。訪日外国人の団体旅行の場合はどうしても仲間だけで行動するため騒がしくもなり、外見には傍若無人に見えるだけである。日本人が海外旅行した最初の頃を思い出せばわかるはずである。
しかし、あまりの訪日観光客の多さに少々辟易する日本人も出て来たことは事実である。京都の友人から京都観光の「今」を伝えてくれている。京都市が行なった調査によれば、日本人客の満足度が低下しており、その最大要因は「混雑」にあると。「人が多い、混雑」13.8%、「交通状況」11.4%、ゆっくり観光できないという理由である。結果京都観光全体に占める日本人客と外国人客の内訳はわからないが、宿泊客に限れば2015年は外国人客は133万人増えた一方、日本人客は112万人減ったことが明らかになったと。京都下鴨神社や東京浅草寺も必ず訪れる観光地であり、まあ仕方のない観光地であると理解すれば良いのだ。訪日外国人観光客のリピーターが進化しているように、日本人観光客も進化したら良い。東京観光に来た友人や知人を案内する場合は、例えば浅草案内であれな横丁路地裏ではないが、六区界隈は昼間も空いているし、更に夜の浅草もまた味わい深いものである。

つまり、中国の国慶節も爆買いもあまり話題になることもなく、インバウンドビジネスも今やっと真正面から見つめる入り口に来たということである。その良き事例が東京谷根千にある旅館「澤の屋」であろう。1982年に日本旅館としていち早く外国人の受け入れを開始し、今や宿泊客の約9割が外国人という「澤の屋旅館」であるが、都内の中小旅館と同様ビジネスホテルへと顧客は移り苦境に陥った時期があった。その澤の屋がいかにして訪日外国人客の高い評価を得たかである。訪日外国人受け入れ転換時は大分苦労されたようだ。英語も都心のホテルスタッフのようにはうまくない、たどたどしい会話であったが、それを救ってくれたのが家族でもてなす下町人情サービスであった。そして、重要なことは澤の屋だけでなく谷根千という地域全体が訪日外国人をもてなすという点にある。土産物店や飲食店だけでなく、日本固有の銭湯もである。グローバル経済の中の観光、それは日本ならではの固有な文化ビジネスであると理解しなければならないということだ。

つまり、インバウンドビジネスにも文化ビジネスであることをより鮮明にするような外国人客の観光行動が出て来ている。それは書道や武道といったいわゆる伝統的な日本文化だけでなく、日本の生活文化の理解を得るための観光行動の一つに「市場巡り」がある。日本人は何をどう食べているか、その集積場所である市場で実感したいという観光である。それは東京であれば築地市場巡りであり、京都であれば錦市場である。京都新聞では「越境する食と人」というテーマで”錦市場、飛び交う外国語”と書き、今や京の台所は日本人客より外国人客の方が多い、そんな状況であると伝えている。日本の理解、日本文化の理解はまずは「食」から、その集積されている市場を巡れば理解が深まるということである。
一方、そうした訪日外国客の「好み」をどう把握するのか、市場の側も模索していると報じている。例えば、豆菓子店では「中国客は黒豆をヘイトうと呼び、米国客はそら豆」を好み、鮮魚店では「中国客はうなぎを好み、欧米人は鱧」を好むといったようにその背景を模索している。また鰹節は日本固有の出汁をとる調味料であり、ほとんどの外国客は驚くという。また、日本人客も外国客も一様に好むのが「わらび餅」であるとも。

このように消費現場ではより明確な外国客の「好み」の解明が進んでいるようだ。まだ外国客へのアンテナを張っており様子を見ている段階と思うが、こうしたインバウンド市場とは異なるのではと思いがちであるファストフードビジネスでも同様な動きも始まっているようだ。例えば、ラーメンから日本そばへと外国人客の好みの広がりを見せてはいるが、うどんまではと多くの人は考えている。しかし、讃岐うどんの丸亀製麺は少し前にうどんのトッピングにタルタルソースの「とり天」導入に外国人モデルに使った TVCMをオンエアしていた。その後の売り上げ成功度合いはわからないが、一つのアプローチであろう。これも外国人客の「好み」の進化がどの方向に広がり、深まっているかを見極める段階へと移っている。訪日した最初は渋谷のスクランブル交差点や自販機に驚いたが、やがて渋谷の街に好みのラーメン店を探し、食べ放題も体験。今や日本人の日常にまで入り込んで来たという段階である。(続く)
ジャンル:
経済
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