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人外の人-3

2007年04月17日 | 歴史
日本の古代は、中国側の史料に正口(せいこう)という奴隷がいた。中国への貢物にされたりした。
稲作と鉄の農具器の普及によって各地に土豪が成立するが、その成立を支えたのは奴隷制であったろう。ついに大和政権が成立して律令国家ができるとさまざまな(ぬひ)身分が法制化した。

奈良朝のとき、仏教の影響から四足獣の肉を食うことが国法によって禁じられた。同時に、この国禁は皮革をつくる人々を差別するようになった。貴族の道具を製作する必要上、皮革職人は殺生禁止の国禁から例外として外されたが、外されたことが「人」としても外される結果になり、国禁には仏教という宗教的背景があるため、その差別は深刻になった。

降(くだ)って室町期に入ると下克上による慢性的な動乱がつづき、指導も理論も革命意識もないながら、上代の制などは根こそぎ消えた。が、まばらに残った。
たとえば大和一国は長く興福寺、東大寺といった上代的権威が領主化しており、室町期動乱の中でも本質的にはその影響を少なくしか受けなかったため、制も多分に温存された。

秀吉の天下統一は兵農を分離させただけでなく、兵を上に置き、農を下に置いて階級化した。
徳川幕府は、この階級化をさらに厳密化した。
社会の階層を士農工商の順に分けたが、かつて武装していた在郷の富農、中富農層には室町的一階級意識がなお残っており、身分下降させられた意識をもち、不満があった。その不満をなだめるためにその下をつくる必要があった。えた・制という凄惨な差別体制が固まるのは徳川中期前後からである。

徳川幕府を支える核は米と身分制であった。
武士の身分制は、米の多寡で区別される。その米をつくる農民も、自家の米の生産高によって村落内で階級がきまる。畑のみの農民ははなはだしく差別された。米こそ尊卑の有力な基準であった。
米と無縁の職業の多くは差別された。とくに皮革をつくったり竹細工などをする者は稲作のできない土地に住まわされ、移動と転職、通婚の自由を奪われ、その身分はきびしく固定化された。

徳川時代は、制度をつくりそれを踏み固めることに費やされた。とくに身分制度の確立がその踏み固めの核といってよかった。人間を差別することによって秩序づけようというのがその政治原理でであったが、同時に諸大名に対する統御もこの原理を用いた。譜代大名には小さな石高に甘んじさせた。その代わり幕政参与権という重要な資格と名誉を与えたが、外様大名は幕政から疎外した。しかし大きな封土を許した。ともかく差別は精密機械のように巧緻で千差万別の格の相違をつけ、相互に力を殺ぎ合わせて秩序原理に参加できるようにした。
                      『胡蝶の夢』司馬遼太郎著より

                      [ 「囲内」につづく ]


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2 コメント

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お初ですvv(*´ω`*)bヨロシクね (彌娑)
2007-05-28 22:45:10
トラックバックが送られてきていたので来ました(*´∀`*)
ヨロシク(*・∀・)从(・∀・*)デス♪
(彌娑)さん へ (iina)
2007-05-29 17:39:35
「胡蝶の夢」でiinaとからみました。
むつかしい夢をご存知ですね。
iinaは、司馬遼太郎著を読んで知りました。
読んだ「胡蝶の夢」には普通の人間になりたかった浅草弾左衛門が描かれていますが、
コチラの詩では人間否定とは正反対の趣であります。
ブログの妙です。
こんどは、もてあそばれぬ強い自己の詩も拝見したいiina~。
http://blog.goo.ne.jp/ichityanlove/e/e5a28e88f86b96593afb191fbd97ab34

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