中国の南方で現在店舗設計を行っている。
今回の依頼主は中国在住12年、
日本式の美味しいパンを提供している店主から。
本来設計業務は日本と変わらないくらいの額を設計費していただいているのだが、今回の店主とはお付き合いも深く、費用は実費程度に抑えて店主のために協力している。
中国での店舗設計は何より運営を司る店主との打ち合わせが重要だ。
日本はスタッフのそもそもの質、モラルの共通認識、会社への帰属意識、未だに残る「あ・うん」的な意識などの要因から、店舗運営が海外でのそれに比べて確実に容易である。中国では特に、日本人のもつ細やかさや規律(これは良い点であると私は思っているのだが)についていけなくすぐ辞めてしまう輩が多い。なので、すべての実権を握る店主との打ち合わせが欠かせない。そうでないと設計なんて本当に絵に描いた餅になってしまう。
設計がうまくできたとして、問題はその次の施工の工程だ。
中国の良くある施工の見積もりというのはトリッキーである。
ちゃんと見積もると100万元するであろう内装工事だったとしても、
例えばそれを30万元で施工可能、と見積もりしてしまう。
店主からすると、100万元対30万元で工事内容が同じであれば
確実に安い方に頼んでしまいがちだが、それには大きな落とし穴がある。
施工会社はまず安い金額で施工契約をしてから、
早速工事に取り掛かる。
だがしかし、進み始めてしばらくすると途中で工事が止まる。
なぜ工事を止まったのか、店主が問いただすと、
設計図に書いていない内容があり、施工できないという。
設計図に大体の内容が書いてあったとしても、
非常に詳細の内容に言及し、いちゃもんをつける。
詳細の内容が追加工事分として請求され、
しかも壁や床の下地など見えない部分で手を抜かれ、
施工品質の減退と先の追加工事により、
施工会社は大きなを生み出す。
結果、合計工事金額は100万元を大きく超えることになる。
見えない見積もり部分や施工内容をうまく利用した罠。
これだからこそ、知り合いに頼むということ、
おつきあいのある業者との付き合いを維持すること、
友好関係を保ちながら信頼関係を築きあげる、
そのような日々の交流が大事になってくるのだ。
これは中国に限ったことではなく、
もちろん日本でも同様のことではあると思うのだが、
人や会社が多い中国では特に大事な心持ちと思います。