白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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広瀬初段ー田中二段戦

2016年11月13日 23時59分59秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で中継された、広瀬優一初段(黒)と田中伸幸二段の対局をご紹介します。

広瀬初段は、今年入段したばかりの15歳です。
最近の若手は強いと言われますが、私もよく新初段に負かされます。
広瀬初段にも、つい最近負かされました。
10歳年上でNHK杯出場経験もある田中二段相手に、広瀬初段がどう戦うか注目していました。



1図(実戦白94)
白△とハネられた場面です。
左上の黒が生きていないので、黒AやBが最初に浮かぶ手ですが・・・。





2図(実戦黒95~白100)
実戦は、黒1の切り!
しかし、白2、4で右上の白は生きていますし、白6と打たれて左上の黒が苦しい形です。
黒は一体、何をしようというのでしょうか?





3図(実戦黒101~白114)
白14まで、左上の黒が閉じ込められました。
ここで手を入れて生きるようでは、黒は何をやったのか分かりませんが・・・。





4図(実戦黒115~白122)
黒1、3の眼取り!
これが広瀬初段の狙いでした。
白8となって、白AとBの脱出が見合いなので、この白は捕まらないように見えますが・・・。





5図(実戦黒123~黒129)
ここで、黒1の切り!
黒7までと進んで、逆に黒AとBを見合いにしました。
2図黒1の切りは、この両睨みを目指した一手だったのです。






6図(実戦白130~黒137)
白1と、要の白4子を助けましたが、黒2から大石を取りに行きました。
黒8まで、Aの所のコウに持ち込んでいます。
結果、黒はこの白を仕留める事に成功しました。
広瀬初段、遠大な構想で優勢を築きました。





7図(実戦白222)
終局直前、白△と打った場面です。
白が首を差し出した状況ですが、ここですっきり介錯しないと格好悪いのです。
黒、どう打ったでしょうか?





8図(失敗図)
黒1は白8まで、Aの所のコウになります。
これは失敗で、白を無条件で取らなければいけません。





9図(実戦黒223)
黒1と、1線に置いたのが鮮やかな手筋です!
これで白の粘りを封じ、無条件で取る事ができます。
持ち時間のない状況ですが、流石によく読めていますね。





10図(変化図)
白1には、当たりをかけずに黒2と打つのがポイントです。
黒4まで、白は上下どちらからも黒のダメを詰められない、「押す手無し」です。
実戦は違う進行でしたが、やはり手にはなりません。
程なく白が投了する事になりました。

自分が負けた相手というのは、何となく応援したくなります。
相手が棋聖にでもなれば、自分が負けても仕方がないと言えますからね(笑)。
広瀬初段の活躍を期待しています。