白石勇一の囲碁日記

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まさかの一手

2017年05月17日 23時59分59秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
昨日のコミについての記事は、不正確な部分があったので修正しました。
厳密には各団体それぞれが違うルールを持っています。
しかし、多少ルールが違っても、普通に打つ分には何ら問題が無いというのは、囲碁の懐の広いところかもしれませんね。

さて、本日は幽玄の間の間で目撃した驚きの一手をご紹介します。
中国の甲級リーグ、廖元赫四段(黒)と江維傑九段の対局です。



1図(テーマ図)
昨今は実証主義の棋士が増えています。
従来なら「この形ではこう打つ一手」「ここでこう打たなければみっともない」と考えられていた場面でも、とりあえず本当に駄目なのか確認するのです。
白4の手などは、正にそんな姿勢の産物と言えます。
ツケにはハネよ(伸びよ)と格言にある通り、黒3のツケにそっぽを向いたような白4には、棋士なら誰でも違和感を感じたはずです。
しかし、考えてみると実は理に適っている・・・近代はそんな手が増えました。

この白4に対し、ノータイムで黒Aとハネたくなりますが、それは上手く行きません。
そこで、次に思い付く黒Bを筆頭に、黒C~F、あるいは手抜きなど、様々な打ち方が試みられました。
極め付けには、日本の若手によって黒G(!)という突拍子も無い手まで打たれ、しかも一時期は世界中で流行しました。
しかし、流石にもう考えられる手は大体出尽くしただろうと思っていましたが・・・。





2図(実戦)
黒1と2線にツケました!
実証主義もここまで来たかという感じです(笑)。
雰囲気としては1図黒Gに似ていて、本当の狙いのための準備工作ですね。
常識的には良さそうな手に見えませんが・・・。





3図(実戦)
黒2のハネには、白3のハネ出しが返し技です。
それで黒が良くないのですが、本図では黒△と白1の交換があり、これが何らかの役に立つと見ているのでしょう。
具体的には黒8の後、白Aには黒Bかその周辺に打ち、白△が動きにくい姿になります。





4図(実戦)
そこで白1と下辺を守り、黒2から左辺を分断する分かれになりました。
下辺で黒1子を取られた形ですが、これは囮だったということです。

この後白Aと切って乱戦になりましたが、あまり黒が上手く行ったようには見えませんでした。
下ツケ自体は流行る手ではなさそうですが、こんな手まで考える探求心には脱帽です。
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