白石勇一の囲碁日記

ほぼ毎日更新、囲碁棋士白石勇一六段のブログです。
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名人戦第7局・封じ手予想

2016年11月02日 19時06分56秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日、名人戦第7局が始まりました!
開幕から高尾紳路挑戦者の3連勝で、一気に決まるかと思われましたが、そこから井山裕太名人が3連勝!
とうとう最終局まで来ました。
果たして、名人位の行方はどうなるのでしょうか?

それでは早速、1日目の模様を振り返っていきましょう。
なお、この対局は幽玄の間にて、柳時熏九段の解説付きで中継されています。
また、ニコニコ生放送でもご覧頂けます。



1図(実戦白20)
白△まで、流行布石です。
また、白〇と序盤でノゾキを打つ手は「アルファ碁」流ですが、高尾九段が打ったのは意外です。
恐らく右辺の変化で、具体的に役に立つという研究があったのでしょう。
この後は黒Aと打って、上辺を広げたくなる所で・・・。





2図(変化図)
このように進む碁が、世界戦などで数多く見られます。
正直言って見飽きているので、がっかりしかけたのですが・・・。





3図(実戦黒21~白22)
なんと、ここですぐに黒1の曲がり!
前図白4のケイマとの差は大きく、確かに絶好点ではあります。
しかし、白2に先行されるのが見え透いているので、敬遠する棋士が殆どです。





4図(実戦黒23~白28)
そして、さらに黒1以下、後手で白3子を取っていきました。
(この分かれについては、週間碁10月31日号で解説されています)
井山名人、前局の足早作戦から一転、重厚な打ち回しを見せています。
同じ棋士が打っているのに、全く違う展開になるとは面白いですね。
白6まで、見た事のない布石になりました。





5図(実戦黒29~黒37)
ただし、手厚いだけでは、碁に遅れてしまいます。
黒1、3で下辺、黒5で上辺を打ってから、さらに左上に入っていきました。
井山名人、一転して足早作戦を展開しています。

なお黒5でAと、左下の黒を補強する手は、悪手ではありません。
しかし、プロレベルでは敬遠されます。
右下の絶対に死なない黒石から、さらに地を増やす形になってしまうからです。





6図(変化図)
実戦は「ツケ切り」でしたが、ツケから黙って黒1と引く手の方が、広く知られているでしょう。
白6までの進行が想定されますが、ここで気がかりな点は、黒の構えには隙間が空いている事です。
白Aあたりに入る余地があり、眼を作るスペースを確保しにくいのです。





7図(変化図)
実戦の黒1と切った手は、黒7までの図を目指しています。
前図と違って黒3の点に黒石があり、黒のスペースが広がっています。





8図(実戦白38~白40)
白としては、黒の思い通りにはさせたくありません。
白1、3と強硬に対応しました!





9図(変化図)
ここで黒1、3とあっさり決め、黒5までとなれば穏やかな分かれになります。
この図の評価は、6図と7図の中間ぐらいだと思います。
私が黒なら「程々」の分かれに満足し、こう打ったでしょう。





10図(実戦黒41~白46)
ところが、ここで黒は1、3と、正面から戦っていきました!
素直な打ち方なのですが、白4、6がぴったりで、黒苦しい形に見えます。
次に黒Aと切るしかありませんが、相当大きなコウ立てが必要です。
この形は、稀にプロの実戦に現れる事がありますが、大抵の場合は黒がコウに勝てる前提があります。





11図(実戦黒47~黒51)
しかし、実戦は白がコウに勝つ事になりました。
白4までの形は黒がかなり酷く、余程の事が無ければ白良し、というのがプロの常識です。
しかし、井山名人はあえて常識に挑戦しました。
井山名人の考えを察するに・・・。

①元々、左上は白石の多い場所で、黒が不利な戦いは避けられなかった。
実戦は黒が全部取られたが、戦いは終わらせる事ができた。
②左下は白地になる可能性が高く、カカりっ放しの黒2子も、白に攻められる可能性があった。
実戦は左下の構えを突き破り、逆に攻める立場に回っている。
③総合的には、互角なのではないか?

こんな所ではないでしょうか。
しかし、そうは言っても左上の形を作るのは勇気がいります。
井山名人以外には、なかなか打てないでしょうね。
善悪はさておき、最終局でこんな思い切った決断ができる事に驚きです。





12図(実戦白52~黒63)
一方的に突き抜かれただけでは白もつらいので、白1と黒を切り離して反撃しました。
難解な戦いで、幽玄の間でも、柳九段が大量の図を出していた場面です。
合計数100手に及びますから、対局者なら1000手ぐらいは読んだのではないでしょうか?

井山名人が選んだのは、黒12までの進行でした。
この黒12は「モタレ攻め」で、白が受けていると、要石の白3子を取ってしまいますよ、という事です。





13図(変化図)
取られるのが嫌だと、白1と逃げるのは黒の思う壺です。
黒2、4を利かされ、左辺の白がぺちゃんこになってしまいます。
せっかくの左上の厚みが働かなくなります。





14図(実戦白64~黒69)
実戦は、白1、3と強く対応!
黒6となって、白3子は動けませんが・・・。





15図(実戦白70~白78)
黒8まで取らせ、白9に回りました。
なるほど、黒は3子を取りましたが、やや内側に籠っている感じもします。
白、柔軟な打ち回しを見せました。





16図(実戦黒79~白82)
黒1は大きな手ですが、白2と重厚な押し!
黒地の広がりを制限しながら、中央の白模様を広げた手ですが、ここを打つなら足早にAとケイマする棋士が多そうです。
押しとは、いかにも高尾挑戦者らしいですね。

黒3と打たれ、下辺の黒模様の広がりが気になりますが、構わず白4!
「下辺を囲うならどうぞ」と言っています。
これでいけるという、高尾挑戦者の自信を感じます。





17図(実戦黒83~黒87)
黒1と、右辺の白にプレッシャーをかけて、揺さぶりにいきました。
受けるのは悔しいようにも感じますが、高尾挑戦者は迷わず白2、4と、がっちり守りました。
やはり、形勢に自信を持っているようです。
両者の判断が一致しての事かは分かりませんが、井山名人が黒5と、再度揺さぶりをかけた所で封じ手となりました。





18図(封じ手予想)
封じ手は、白1でしょう!
9割方当たる自信があります。
残りの1割は白Aで、Bの方はまず無いでしょう。
格言にあるように、「ツケコシ切るべからず」です。
ただ、前回前々回の件があるので・・・信用は無さそうですね。

現在は落ち着いた局面になっていますが、突如激しい戦いが起こる可能性も否定できません。
これからどんな展開になるのか、楽しみですね。
明日もぜひご覧ください!
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