オリンピックのトリビア

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古代ギリシアのオリンピック・スタジアム

2015-08-09 | オリンピック
 
 
見出しの写真は、「汎アテーナイ競技祭」のスタジアム(スタディオン)。
紀元前に作られ 紀元後二世紀に大理石で改修されたスタジアム(スタディオン)、
第一回近代オリンピック(1896)の主会場となったスタジアム(スタディオン)です。



オリンピック・スタジアムの中には、

2000年以上前から存在するものがあります...

さて問題です。

次にあげるのは 2000年以上前から存在する

オリンピック・スタジアムのある町の 航空写真です。

それぞれの 町の名前は 何でしょう...



1.古代オリンピックのスタジアムがある 町の名前は...?

大きな地図はこちら



ヒント:

千年以上にわたって 四年毎に開催された

古代オリンピック(「オリュムピアー競技祭」)の開催地

近代オリンピックで 1936年に開始された 聖火リレーの 聖火の採火地




解答例:

ギリシアの オリュムピアー(ολυμπια)


オリュムピアーのスタジアム(スタディオン)は、
紀元前に作られた、4万人以上の観客を収容するスタジアムです





2.第一回近代オリンピック(1896)の会場となった 古代のスタジアムがある 町の名前は...?

大きな地図はこちら



ヒント:

同盟市からも多くの人を集めた
古代ギリシアの祭「汎アテーナイア」の開催地

第一回近代オリンピック(1896)の開催地

第一回近代オリンピック(1896)で開始された競技
マラソン(μαραθον)のゴール地点の町

cf.このスタジアムには 2004年
  オリンピックの女子マラソンで
  野口みずき選手が 一位で駆け込みました

スタジアムの入口からは、陽の沈む方向に
アクロポリスのパルテノン神殿などが見えます




解答例:

ギリシアの アテネ(アテーナイ αθηναι)


アテーナイのスタジアム(スタディオン)は、
紀元前に作られ 紀元後二世紀に大理石で改修された、
4万人以上の観客を収容するスタジアムです





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(解説)


競技祭(αγωνεσ) > 競技場(αγων) > スタディオン(σταδιον)


□競技祭(αγωνεσ アゴーネス) > 競技場(αγων アゴーン) について

αγων(アゴーン)という語は
αγορα(アゴラー:集会 広場 cf.αγειρω 集める)の類語で
「集まって 技や 議論や 商品を 遣り取りする 広場」という意味の言葉



オリュムピア競技祭が 複数形(ολυμπιακοι αγωνεσ)
(読み : olympiakoi agōnes オキュムピアコイ 「アゴーネス」)なのは 繰り返し開催されるから

(同じ場所オリュムピアで 四年毎に 千年以上にわたって 繰り返し開催されてきたオリュムピアー競技祭)
  cf.近代オリンピックで 受け継がれなかった要素(「同一の場所で開催される裸祭」という要素)
    因みに「裸祭という要素」についてはこちらも参照

ギリシア地域では各地で
様々な競技祭が定期的に開催されましたが、
そのなかで 最も最も歴史と威信のあるのが オリュムピアーの競技祭


この「オリュムピアー競技祭(ολυμπιακοι αγωνεσ : olympiakoi agōnes)」を引き継ぐのが、
今日の「オリンピック競技会(jeux olympiques, olympic games)」




□スタディオン(σταδιον)について

競技場(αγων 集まりの場)の核となるのが スタディオン(σταδιον)

上のふたつのスタジアム(スタディオン)の 印象的なデザイン その細長いデザインは

古代のスタディオンが 競技祭の根本競技「スタディオン走」の為に デザインされていることによります


「スタディオン走」とは 1スタディオンの直線を駆け抜ける競技
各オリュムピアー競技祭は スタディオン走優勝者の名前を付けて呼ばれました。
(近代オリンピックの各大会が 開催都市名を付けて呼ばれるように)

スタディオン(σταδιον)とは ギリシアの長さの単位

 1σταδιον = 600 ποδεσ(600 足(靴):足(靴)のサイズの600倍)
  スタディオン  ポデス

歩くときに 靴を継ぎ足すように歩いて行くと
一歩に一秒かけて測ったとしても、600秒(10分)程で実測できる長さです



さて ここで問題です。

オリュムピアー競技場のスタディオンは
今日使われているメートル法で192メートル程だそうです
実測した人の足(靴)のサイズは何センチメートル程でしょう...




 解答例:1足は... 192m/600足 = 0.32m = 32cm

また一般に 足のサイズの6倍は
体1つ分(身長 = 腕を横に伸ばした長さ)なので、

 1スタディオン(1σταδιον)とは 体 100個分(100尋(広))の 長さとも言えます

オリュムピアー競技祭のスタディオンは
神ゼウスと人間女性の子 ヘーラクレースさんが実測したとも言われているので

そうだとすると、
神と人の子 ヘーラクレースさんの
足(あるいは靴)のサイズは32cm程、
身長は192cm程 ということがわかります...


オリュムピアー競技祭のスタディオンは、

初めは仮設だったようですが
(競技祭毎に 10分程かけて 1スタディオン(1σταδιον)を測って、スタートとゴールに線を引けば良い)

その後、選手用の1スタディオン(1σταδιον)の走路、
多くの観客を収容する土手、選手 審判 入退場用の土手のトンネル等がセットになった
今日も生き続ける 常設のスタディオン(σταδιον)が作られました


「スタディオン走」の為に 「1スタディオンの直線」を確保する
オリュムピアーの「スタディオン(σταδιον : stadion)」を引き継ぐのが、
今日のオリンピックの「スタジアム stadium(ローマ訛りの綴り...)」



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(以下 詳細解説)

□「オリュムピアー競技祭」のスタディオンの衛星写真解説

写真のスタジアムは
紀元前4世紀改修のバージョンを引き継ぐもの

大きな地図はこちら



近代オリンピック競技会(近代オリュムピアー競技祭 jeux olympiques, olympic games)の祖、
古代ギリシアのオリュムピアー競技祭(ολυμπιακοι αγωνεσ)

オリュムピアの中心には神々の王ゼウス(ζευσ)の神殿、
その上にはゼウスの正妻の女神ヘーラー(‘ηρα)の神殿

女神ヘーラー(‘ηρα)の神殿の左側には 選手たちの練習場

 ・ギュムナスィオン(γυμνασιον 体育 練習場:裸(γυμνοσ)で練習するのでγυμνασιον)

 ・パライストラー(παλαιστρα 格闘技 練習場)


練習場の左に接して 木々に囲まれて 南北に流れる クラデオス(κλαδεοσ)川は
(川沿いに下に手繰っていくと名前が書かれています)

古代オリュムピアーの左下で
東西に流れる大河アルペイオス川(αλφειοσ ποταμοσ)と 合流

 (*)船による人や物の大量輸送や
   飲水等の給水が 可能な 水辺の聖域オリュムピアー

    cf.二世紀、クラデオス川からの 大理石の給水施設等も
      (アテーナイのスタディオンを大理石化した
      富豪学者 ヘーローデース・アッティクスさんによる)


オリュムピアーの競技祭は、

初めは ゼウス神殿/ヘーラー神殿のある神域(αλτισ)内の 仮設の競技場で、

後に 神域の右側にある「オリュムピア競技場(αγων ολυμπιασ)」で開催

 ・スタディオン(σταδιον (1スタディオン走(σταδιο-δρομοσ)を始めとする 人間のみの競技の競技場))

 ・ヒッポ・ドゥロモス(‘ιππο δρομοσ 馬走:スタディオン下辺にあった 広大な 馬絡みの競技の競技場)



□ドイツ国と オリュムピアー発掘略史

1700年台 独 ヴィンケルマンさん等のオリュムピアー発掘構想

1832年  オスマン国からのギリシア国の独立

1875-1881年 独 クルティウスさんの発掘

 →オリュムピア遺跡復元模型展示や 報告書の発行等
  (クーベルタンさんによるオリンピック復活の動力源に)

1896年 オリンピックの復活(於 アテネの汎アテーナイアのスタディオン)

1936年 独ベルリンオリンピック
    (映画 ラジオ中継 テレビ中継 + オリュムピアー発の聖火リレー(torch relay 松明中継))
    独 オリュムピアー発掘再開(オリュムピアーのスタディオン全体の発掘)



□「汎アテーナイア」祭のスタディオンの衛星写真解説

写真のスタジアムは富豪の学者
ヘーローデース・アッティクスさんが総大理石化した
紀元後二世紀改修のバージョンを引き継ぐもの

カタカナでは大抵「パナシナイコ スタジアム」と表記されます
(現代ギリシア語「παν αθηναικο σταδιο (汎アテーナイのスタディオン)」)

大きな地図はこちら



汎アテーナイア(παν αθηναια)とは
アテーナー(αθηνα)女神を讃えて 毎年開催される アテーナイ(αθηναι)最大の祭
四年に一度 大祭「大 汎アテーナイア(τα μεγαλα παν αθηναια)」を開催


イーリーソス(ιλισοσ)川の水辺に位置する
汎アテーナイア(παν αθηναια)のスタディオン

スタディオンの上を 右上から左下に通る道路が
(今日地下化されてしまっている)イーリーソス川のおおよその流路...


地図の左側を手繰っていくと
パルテノン神殿やアテーナー(αθηνα)女神を祀るエレクテイオン等のあるアクロポリスの神域
アテーナイのスタディオンは 神域アクロポリスの麓にあることがわかります


□富豪の働き者ζαππας (zappas)さんの資金による
 近代ギリシアの国内版オリンピア競技祭開催/アテーナイのスタディオン復元 略史

二世紀   富豪の学者ヘーローデース・アッティクスさんが アテーナイのスタディオンを総大理石化

1832年   オスマン国からのギリシア国の独立

1856年   第一回近代ギリシア国内版オリンピア競技祭の運動競技を アテーナイ市内の公園で開催

1869-1870年 アテーナイのスタディオン発掘/修復

1870年   第二回近代ギリシア国内版オリンピア競技祭で アテーナイのスタディオン使用

1875年   第三回近代ギリシア国内版オリンピア競技祭で アテーナイのスタディオン使用

1888/9年  第四回近代ギリシア国内版オリンピア競技祭の運動競技を 体育学校で開催

1896年   アテネオリンピックで アテーナイのスタディオン使用

2004年   アテネオリンピックで アテーナイのスタディオン使用


// 関連記事
// 古代ギリシアの競技祭(オリュムピアー / デルポイ / ネメアー / コリントス地峡 / アテーナイ)
// 古代アテーナイ市のスタディオン建設手続き(槇氏のスタジアム論考の補足)
// 東京オリンピックスタジアム 2016/2020
// 木造の大規模建築 : 東京2020スタジアム




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