幸福宮殿メルヘン切符

一枚の物語切符から幸せ行きの力が生まれる大人のセラピー短編童話
  ~希望号発車~

263話 「弱気なタンポポ」

2017-04-20 | 2017~新作
「童話が好き、だから書く」

            を 力にして

              「自分の物語」を紡いでいく

         263話  
 


「弱気なタンポポ」


「さあ、私の子供たちや、飛んでいきなさい。」
タンポポのお母さんは、綿毛をふう~と一吹きしました。
すると、それを待っていたかのように、青や黄色や赤いマントに
身を包んだそれぞれの風達が、雲に乗ってやってきました。
この風達は、草花の胞子や花びらを目的の場所に運んでいく
風達でした。
すい~すい~と、タンポポの綿毛をすくいあげると、それぞれのマントに
くるんで飛んでいきました。
末っ子のポポちゃんは、
白い風に乗って定めの場所へと運ばれて行きました。

それから数日後のことでした。
ここは都会のある場所、小さな声が聞こえてきました。
「なんで私がこんな場所に。何にもないじゃん。
周りは固い石ころ、これでは根っこも出せやしないわ」
それはタンポポの綿毛の末っ子のポポちゃんの声でした。

ポポちゃんは選ばれて都会のアスファルトの裂け目に運ばれたのです。
「おやおやどうしたの?。根性タンポポの綿毛さんよ」
それはポポちゃんの隣の雑草の声です。
なんと、コンクリの小さな裂け目から小さな葉っぱをにょきっと出して
頑張っていました。

「あんたはね、これからここで頑張ってしっかり根を張り芽をだして、
黄色い花を咲かせるのさ。ほれ、見てごらんよ。道行く人がわしのほうを
みていくじゃろ。あんたなら、もっともっと見てくれるだろうよ」
それを聞いていたポポちゃんは、
「そんなのいや。わたしはね、こんな場所で咲きたくないの。」
「何をいうの。この場所こそが、タンポポに似合った場所、この厳しい
生きることも不可能場所だからこそ、人間たちが元気をもらうのさ。
凄いことなんじゃよ。あんたは幸せもんさ」

じいっと聞いていたポポちゃんは、寂しそうな声で、
「私は根性タンポポなんて言われなくてもいいの。
もっと自分の気持ちを大切にしたい。
お姉さんたちはみんな里山や、小学校や、川原に行ったわ。もういや!」
「こまったのう。どうすればいいかのう・・・」
隣の雑草おばさんも困ってしまいました。

それからのポポちゃんは絶望のあまり、まいにち毎日泣きくれました。
ひとしずく、ふた雫と涙があふれて雑草おばさんを包んでいきます。
「なんとかせんと・・・。私まで辛くなっちまうではないか」
雑草おばさんはコンクリの隙間から出ている葉っぱをおもいきり揺らしました。
(黄色い風さんきておくれ~黄色い風さん聞いてくれ。黄色い風さん
かなえてやっとくれ)
雑草おばさんの小さな声が風に運ばれて飛んでいきました。
都会の空気の隙間を縫うように里へ里へ~~と流れていきました。

ほどなくすると、
黄色いマントを羽織った季節の風が雲に乗ってやってきたのです。
「黄色い風さんよ。お願いだ。
このタンポポの綿毛を里山に連れて行っておくれでないか。
運命に逆らうようだが、かわいそうでな。
まいにち毎日泣き暮れておってな」
これを聞いた黄色い風は、ポポちゃんをすい~と救いあげると、
マントの中に入れて、去っていきました。

それから数日、ある一軒家の軒先から子供の声が聞こえてきました。
「まま~タンポポさん咲いたよ。とってもきれい。ママも見て」
「あらあら、こんな玄関に。きれいに咲いたわね。」
「わたし、お水あげよっと」
ある家の玄関先の庭には、かって、
都会のアスファルトに置かれたあのポポちゃんの
姿がありました。
黄色い風はポポちゃんの気持ちを理解して、ポポちゃんの一番気に入った場所に
おいてくれたのでした。

「弱音は負けでも不幸ではないの。自分を生きることが最も尊い生き方なのよ。
 頑張ることや、根性だけが立派なことではないんだから。来年は、
私の子供たちが、この庭に、一面のタンポポを咲かせるわ・・・」

                               おわり。
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