幸福宮殿メルヘン切符

一枚の物語切符から幸せ行きの力が生まれる大人のセラピー短編童話
  ~希望号発車~

筆箱バス 発車オーライ

2017-05-13 | 2017~新作
「童話が好き、だから書く」

       を力にして

          「自分の物語」を紡いでいく

   

       266話 


「筆箱バス」



「さあ、出発進行。あれれ・・・?」
その言葉に、
「まだだよ。だって、車輪もないじゃん」
鉛筆に言われた筆箱、
「そうか、これじゃあ動けないや。どうしようか」

筆箱に言われた鉛筆はしばらく考えていましたが、
筆箱から出ていくと、コロコロコロと、転がしてきたものは、
ペットボトルのキャップ、
「これが君の車輪だよ。これを、前と後ろに付けてと」
筆箱に4つの車輪が取り付けられると、なんとなくバスらしくなってきました。
お父さんが小学生の時使っていたものをもらった、ひろしの大切な筆箱です。

「さあ、発車オーライ」
その言葉にバスはクルクルっと回転してしまいました。
「まだ駄目だよ。ハンドルがないじゃん」
消しゴムの言葉に、また、バスは考え込んでしまいました。
「ちょっと待っててね。あれならいいや」
しばらくして消しゴムはハンドルらしき丸い物を抱えてきました。
「これこれ。ひろし君の食べ残しのおかしさ。ポテトリングスナックだよ」
「うん丸い。いいハンドルになるね」
待っていた筆箱は、嬉しそうに取り付けました。
「うん、これでよしと。出発進行だ。少しガタがきてるけど頑張っていこう」
「筆箱バス発車オーライ」「出発~」

消しゴムと鉛筆の言葉に筆箱バスはゆっくり走りだしました。
筆箱はひろし君の苦手な科目を何とか好きになれるようにしようと、
勉強しに行ったのです。

「ぶぶ~筆箱バスが通ります。停車場はどこですか・・・」
「あ、あれだ!」
消しゴムの言葉に遠方を見た鉛筆が叫びました。
見ると、前方に、「算数のバス停」と書かれた看板が。
「算数のバス停だ。まずは、ここで勉強だね」
バスから降りた鉛筆はひろしの苦手な算数の勉強をするためにバスから
おりました。
しばらくすると鉛筆が「そろばん」に連れられて戻ってきました。
「これで算数はばっちりさ。次へ行こうよ」


「筆箱バス、発車」
消しゴムの言葉で筆箱バスは走っていきました。
ごとごと、ころりころり、ことん・・・。
「ぶぶ~筆箱バスが通ります。停車場はどこですか・・・」
「あ、あれだね。今度は何だろう」
筆箱バスが近くにいくと、「理科のバス停」と書かれています。
たぶん前の算数のバス停のそろばんに聞いたのでしょう、そこには、
「試験管」が待っていました。
「じゃあ行ってくるね。」
鉛筆が試験管に案内されていきました。
しばらくして戻ってくると、
「これで実験器具の扱い方はひろし君が一番さ」と、ニコニコです。
バスも嬉しそうに、「よかったね。じゃあ、次に行こうや」


また筆箱バスは走り出しました。
がらがらごとんころころころと走ります。
「筆箱君さあ、今度は何を勉強するの」
消しゴムの言葉に
「もう一つだよ。ええと、ひろし君の苦手の科目は・・・あ、あれだ」
みると、次の停車場に「音楽のバス停」と書かれています。
ここでも前の試験管に聞いたのでしょう、音楽のバス停の前には
「オタマジャクシ」が待っていました。
案内されて音楽の教室に行った鉛筆が戻ってきました。
なんとなくリズミカル、そう、音楽の勉強をしたからでしょう。
「ひろし君も、これで楽譜の読み方はばっちりだよ」
「よかったね。さてと、つぎは・・・?」
筆箱バスの言葉に、鉛筆と消しゴムもきょとんと。
「そうか、もう、これでいいんだ。ひろし君の苦手な科目は
 全部マスターしたからね」
「じゃあ帰れるんだ。次元内に帰ろ」
二十五時間<5次元時空>の終わらない内に帰らないと、
筆箱バスは消えてしまうのです。
「筆箱バス、帰還しま~~す」
筆箱の合図で、筆箱バスはひろし君の家に向かって帰っていきました。


その後のひろしくんは?。
もちろんもう苦手科目はありませんよ。
小学校の教室の窓からそっとのぞくと、ひろし君が楽譜を見ながら
タクトを軽やかに・・・。
耳にはあの鉛筆がしっかりと挟まれていました。
そう、鉛筆を耳に挟むのが、ひろし君の癖だったのです。
ふと見ると、教室の窓のレールにオタマジャクシが、
ひろし君を見ていました。
きっと、筆箱バスに乗ってきてしまったんでしょう。

筆箱は今は静かに夢の中・・・。

                           おわり。


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