幸福宮殿メルヘン切符

一枚の物語切符から幸せ行きの力が生まれる大人のセラピー短編童話
  ~希望号発車~

月見草の歌

2017-05-19 | 2017~新作
童話が好き、だから書く」

       を力にして

          「自分の物語」を紡いでいく

   

           267話 




今回は童話というより、どこか遠いところの昔話みたいになりました。
とわいうものの、おじいさんとおばあさんの物語は今までにも
創作はしていますが。
むつかしいところは、老人の会話の言葉でした。
老人って<自分もそんな年ですが、言葉は若いころと同じですがね>
どんな言葉ではなすんだろう・・・今どきの普通の言葉では何か
物語的になりませんので、昔話に使われる言葉にしてみました。
内容が現代でなければ何処かの、昔のお話しと思うことで、納得
できそうに思います。

さて、新聞の短歌欄で「月見草」の作品を見て、
月見草ってどんなはななんだろう・・・?と、調べるうちに、
物語にしてみたくなって、創作した作品です。
月見草は6月から9月ごろの花で、夕方咲くのですが、その時は
白色ですが、それから夜半に薄いピンク色に変わり、明け方近くに
淡い紫色になってしぼむそうです。
そう、夜の花なんですね。
月見草はお月様の光に包まれて、何を想うんでしょうか。
想いが募っていくにしたがって花の色も変化していくと考えると
なんとなく情感がわいてきます。
月見草に想いを巡らしてましたら、物語が浮かんできました。



「月見草の歌」


残暑が厳しいこの季節でも、日が沈む頃には山稜から降りてくる
小さな風が涼しさを感じさせる。
おっとりした気持ちがじんわりと、ゆうげを囲む二人に忍び込んでいく。
静かなしずかな山里に、もうすぐ秋の便りが届けられる頃でした。

「なあ、ばあさんや、また、しのぎやすい季節がやってくるだ」
「ああ、そうだやな。毎年のことだ]
「中秋のお月様に今年もお願いしてみるだ」
里山に住むおじいさんとおばあさんは、行く末の短いことを考えると、
昔、出て行ったきり戻らぬ一人娘のことを思うのだった。
そんな二人の希望は、毎年、中秋の満月にお願いすることでした。
お月様がその時に向かって、少しずつすこしずつ丸くなっていきます。

あと数日で満月になろうとする、ある夜のことでした。
きらめきをまき散らす星たちの間を、一条の青い光に守られて、おじいさんと
おばあさんの軒先にふわりと舞い降りたものがありました。
それは雑草に紛れたと思うと、しばらくすると、するするすると枝を
伸ばし、雑草を押しのけて際立ちを見せたのです。

そうしているうちに、夜も明け、いつものように朝が訪れました。
おじいさんとおばあさんはその日の満月の日のお供え物を用意するために、
自分たちの育てた作物の収穫に。
立派に育った作物に感謝の念を忘れないおじいさんとおばあさんでした。
夕暮れの訪れにいつものように満月に備えると、二人はお月様を眺めながら、
お願いをするのでした。
「お月様、娘はどこにいるのかのう。元気でいるかのう」
「お月様、わしたちも先のない年になってしもうた」
二人の言葉は、寂しく夜のしじまの中に吸い込まれていきました。

その夕方のことでした。
天空から舞い降りた一本の草から、真っ白な花が一輪咲いたのです。
お月様の煌々と照らす光を浴びて、時の経過の中に、ピンク色から
薄紫へと色を変えていきます。
そんな時間の中に、やがて明け方近くになると、すう~と玄関の
扉が開けられ、一人の女が入っていきました。
女はしばらく二人の枕元に座っていましたが、柔らかな光が扉から
差し込むと、音もなく去っていきました。

いつものように起きてきたおじいさんとおばあさんは驚きのあまり、
しばらく、正座のまま動けませんでした。
寝床の片隅に、見るも鮮やかな薄紫の振袖が飾られていたのです。
月見草の雪のような真っ白な花が一面に咲き乱れています。
「ばあさん、何としたことか、この美しさは・・・?」
「いや、ほんとうに、きれいだのう」

二人は思いました。娘がかえってきたのだと。しかし、お月様のすること、
この夜にしかできないことを考えると、夜明けに帰って行ったんではないか。
おじいさんとおばあさんは娘が元気でいることを信じ、お月様に感謝
するのでした。

おばあさんがいつものように外に出ると、軒先に見慣れない一輪の花が
見えました。
それは、紫色の花びらを柔らかくまとった月見草の花でした。
おじいさんを呼んだおばあさんは、その月見草を、しばらくの間
見つめていました。
すると、ぽろっと紫の花が落ちました。
おばあさんは何を思ったか、その花びらを拾おうと月見草の下を
探しましたが、見つかりません。

おじいさんとおばあさんは家の中に入っていきました。
昨夜の出来事を確かめるために寝床にいくと一瞬足を止めました。
あの、紫の振袖が消えていたのです。
思いました。
お月様のお力で帰ってきた娘は、帰って行ったんだと。
この不思議な一夜の出来事は、おじいさんとおばあさんの願いを
叶えてくれたのでしょう。

数日の後、おじいさんとおばあさんは旅立っていきました。
時の経過の中に、二人のいなくなった家も朽ち、やがて跡形も消えていきました。
しかし、おじいさんとおばあさんと一夜をともにした月見草が、
毎年、中秋の満月の夜に、多くの雑草の中にひと際背を伸ばして
鮮やかな白い一輪の花を咲かせたのでした。

月見草の花々が、満月の光の中に、夜風にさらさらと波のように揺れて・・・。

「おじいさん、今年も咲いてくれたのう]
「娘が舞っているようだな。おうおう、なんともうれしい姿や」

                           おわり。


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