あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

炎の陽明学 - 山田方谷伝

2016-05-23 14:09:07 | Weblog

 毎月第4日曜日の午前9時より1時間、井戸書店では『大人の人間学塾』と称して、人間学の書籍を1冊、参加者で輪読し、その感想を述べ合うイベントを開催しています。第10回目の昨日の課題図書は『炎の陽明学 -  山田方谷伝』(矢吹邦彦著、明徳出版社)でした。

 山田方谷と言ってもなかなか知られていない人物ですが、幕末の備中松山藩の財政再建を一気に成し遂げた人物です。10万両(現在の貨幣価値で300億円)の負債を、7年で払拭し、逆に10万両の余剰金を作り上げました。

 農家の倅として生まれた方谷は、山田家の再興のため、子どもの頃から勉学に励み、神童と呼ばれるほどになりました。しかし、14歳で母が亡くなり、1年後には父も失い、家業を継ぎます。彼の才を惜しみ、藩主坂倉勝職(かつつね)が二人扶持の奨学金を出し、学びの道に戻りました。その後、京都遊学、江戸では昌平黌に学び、佐久間象山と並び塾頭になった。

 藩主が坂倉勝静(かつきよ)になり、抜本的な藩政改革を推し進める中で、山田方谷に元締役及び吟味役を拝命し、藩の財務一般を管轄することになりました。大なたを振るう改革は

 〆睫馨態の藩士への公開(表高5万石に対し実石1万9千石、10万両の負債状態)

 大坂蔵屋敷の廃止、自力で米の売買を行う

 信用を失った藩札を公前で焼き払い、新しい藩札を発行

 の瞭發ら取れる砂鉄で備中鍬を製造販売、その他特産品も開発

 ゲ宍乕雹里某慧蝶発を奨励

 η戚韻砲茲詛席疾を新設、欧米の新兵器の導入

と、幕末の薩長土肥列藩のさきがけのような存在となりました。

 彼の思想のベースは陽明学。「致良知」と「知行合一」の陽明学を、「誠」と解釈し、「言ったことは成す」を真髄と考えました。

 しかし、藩主坂倉勝静は筆頭老中となり、幕府の中枢のため、官軍に攻めたてられたが、方谷による無血開城により、方谷は隠居の身になります。

 明治新政府は彼に大蔵大臣就任を依頼しますが、頑なに断り、農夫と塾長として田や人を耕しました。

 彼こそは代表的日本人に加えてほしい。時代は違うとはいえ、1000兆の負債を抱える日本は彼の生き様を参考に財政再建に努めてほしいと思います。地元である備中高梁市では、方谷をNHK大河ドラマで取り上げる運動を行っており、この時代に彼の功績を国民に観てもらう必要があると考えます。

『炎の陽明学 -  山田方谷伝』(矢吹邦彦著、明徳出版社、本体価格3,300円)

 

 

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縁は苦となる苦は縁となる

2016-05-19 17:25:04 | 

 帰省した次男坊が、「大阿闍梨って知ってる?」と訊いてきたので、「塩沼亮潤さんか?ほとんどの本は読んでるよ。これが新刊や。」と言って、『縁は苦となる苦は縁となる』を差し出しました。

 塩沼亮潤さんは大峯千日回峰行満行の大阿闍梨。吉野・金峯山寺1300年の歴史で二人目の達成者。その模様を書いた、『大峯千日回峰行 修験道の荒行』(春秋社)を読むと、あまりの過酷さに驚いてしまいます。驚異の荒行をやり遂げられた大阿闍梨だからこそ、仏の道を説く言葉は平易で心に沁み込みます。その中から私の胸を打った二つの文章を紹介します。

 「本来いらない『とらわれ』を捨てることにより、初めて大切な何かに気づくことができます。古来、手放すことが大切だといわれ続けてきたのは、私たちがさらにもう一つ成長するためなのでしょう。」

 人は欲があり、執着します。しかし、捨てる勇気があれば、欲も減退し、自身の目指す道も見え、生き方もシンプルになります。あれもこれもと思わずに、いまここに集中することが必要です。

 「そもそもお釈迦さまの教えである人生の真理とは、野に咲く花のように、あるがままに生きること。そして、よりよく生きることの考えかたなのです。植物は人に見えない根の部分では淡々と努力をして、天に向かってきれいな花を咲かせています。けれども自分の姿を見せびらかしたりしません。」 

 地位や名誉、肩書、権力に目がくらみ、本来するべきこととは違う生き方になっている人がいます。生きているあるがままの姿こそが美しい。それを知れば、余計な背伸びもしなくなります。

 深夜テレビ番組「クレイジージャーニー」に出演された塩沼亮潤大阿闍梨を見た次男坊は、自宅の書棚にあった『大峯千日回峰行 修験道の荒行』(春秋社)を持って帰りました。

『縁は苦となる苦は縁となる 』(塩沼亮潤著、幻冬舎、本体価格1,100円)

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青い記憶

2016-05-18 16:22:56 | Weblog

 『青い約束』を読んで感動をおぼえて、新刊の『青い記憶』も読んでみました。ちなみに『青い約束』のここでの紹介は以下をお読みください。

http://blog.goo.ne.jp/idomori28/e/866ba64114cc242d526785a3976fe228

 悪性脳腫瘍と診断された父・周輔は息子・希一へ、手紙という形態で彼の青年時代を包み隠さず語る小説。周輔は絵を描きたい一心で東京芸大に2度受験するも失敗し、早稲田大学商学部へ入学します。しかし、絵への思いは捨てられず、大学を休学して、パリの美術試験予備校へ留学。高等師範学校に通うオルガとパリで出会い、恋に落ちる。彼女との毎日は幸せの連続でしたが、彼女が元恋人との関係を考え直すところから、周輔のパリでの生活も狂いが生じ、絵の才能の頭打ちから、帰国を決意します。ここから周輔はどん底に叩きつけられる事件に遭遇します。

 最後の30ページで事件の真相が明らかにされますが、人生の悲哀はいつどこで遭遇するかわかりません。だからこそ、一日一日を大切にしたいと考えながら読了しました。

 父から息子への手紙には、人生訓めいた言葉が書かれています。

 「本当に確信があったうえでの決断なら、逃げ道を作らないまま運悪く挫折しても、自分を納得させることができるだろうから、人生を大きく壊すことにはならないだろう。そんなときは逃げ道を作ることは力の分散になり、せっかくの進路を妨げることにもなりかねない。強い確信を抱けるかどうか。それを正しく感じ取れるかどうか。すべてはそこにかかっているのかもしれない。」

 「今、病気になって改めて感じたことなんだが、生きているということはただそれだけでも、神様からごく限られた時間だけ与えられた、かけがえのないプレゼントだ。僕らはだからこそ、それを宝石みたいにきれいなものにしていかなければならない。」

 生きる指針を常に抱いて、息子たちに語れる父になりたい!

『青い記憶』(田村優之著、ポプラ文庫、本体価格640円)

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LINEで子どもがバカになる

2016-05-07 16:40:03 | 

  私立中学受験の塾で国語を教える著者・矢野耕平氏は子どもたちの日本語運用能力に違和感を感じ、本書を著しました。「読解力」や「論理的思考」は問題ないが、「語句・慣用句」に弱くなっている。その原因を探ると、第一はLINEです。

 二人、もしくは数人のグループでの閉鎖的なコミュニケーションのため、表現が稚拙(心情表現ができない=フィーリングプア)であり、わかり易さを優先するために比喩ができず、スタンプや絵文字利用で原始人化(原始人は洞窟に絵を描いていた。答案用紙に絵文字が登場する?)し、自動変換や予定変換のため同音異義語や同訓異義語がわからず、短文入力のため接続語は消え去るなど、日本語を表現することは非常に難しくなっています。

  第二は核家族化です。敬語が使えないだけでなく、両親が共働きのため、1人で留守番する時に手にするのがスマホになってしまっています。

  第三はタワーマンションです。外に出れない、窓が存在しない家に住むために季節感が育たず、自然に対する知識も机上だけになり、虫や花に対して思いが働かないために、言葉が貧弱になっています。

  第四は、そんな子どもたちに英語教育です。母語が確立していない状態で、会話主体の英語教育はどぶに金を捨てるようなもの。「英語を解釈する際には、日本語で考えることが必要」なのに、これではどの言語も習得できない日本人を生み出す教育となります。

  このような子どもたちに求められる日本語教育は「ことばにじっくり立ち止まり、熟考する姿勢を育んでいくこと」としているが、そこには日本語を使える大人たちの存在が必要になります。しかし、その大人たちもスマホに依存する傾向が強くなっています。私は子どもたちのデジタルへの接触は制限し、LINEなどで子ども同士でコミュニケーションをとるのではなく、日本語を駆使できる大人が子どもの国語力にレベルを下げずに語り合い、少しでも多くの日本語表現のシャワーを浴びるべきだと考えます。非常に難しいこととは言え、このままであれば、さらに読書人口が減るのではないかと危惧します。

『LINEで子どもがバカになる 「日本語」大崩壊』(矢野耕平著、講談社+α新書、本体価格840円)

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コーヒーが冷めないうちに

2016-05-07 15:54:25 | 

 「あの時、ああすれば良かった」、「なんであんなことを言ってしまったのだろう」、「相手は何て考えていたのだろうか?」と後悔や思案することは多々あります。もう一度、その場面に立ち返って、自分の言動を正したり、相手の気持ちを訊くことができたらなぁと想いますよね。この小説では、それができる、つまり過去に戻れる喫茶店「フニクリフニクラ」がストーリーの舞台です。但し、非常にめんどくさいルールが5つあり、過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけという極めて短時間。

 4つの短篇が用意されており、過去に戻る3つのストーリーと、逆に未来に進む物語はどれも感涙のものばかりです。私自身が一番感動したのは第四話『親子』この喫茶店で働く妊婦の話です。喫茶店「フニクリフニクラ」に勤める計(けい)が喫茶店のマスターの時田流(ながれ)の子を宿しますが、計は元来心臓が弱いため、出産時、母子ともに健康である可能性は低いと医者には告げられます。計は自身の子どもがどうなっているのか知りたくて、10年後に身を置いてみました。ここからの内容は本書に譲りますが、最後に著者が言いたかったことが書かれています。

 「現実が変わったわけじゃない。(中略)過去に戻って変わったのは『心』。」

 過去に戻ろうが、未来へ進もうが、そこで知ったことで「心」を変え、変わらない現実に対して凛として生きていけるのですね。

『コーヒーが冷めないうちに』(川口俊和著、サンマーク出版、本体価格1,300円)

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世界中のトップエリートが集う禅の教室

2016-05-02 18:07:03 | 

  昨日、京都国立博物館で「禅 心をかたちに」を観てきました。禅の歴史、そして、禅の思想を伝える書画に圧倒されました。難解だとされている禅ですが、本書で頭にあったもやが消え去りました。

  著者は妙心寺春光院副住職で、マインドフルネス講師でもある川上全龍氏。アメリカの大学で宗教学、心理学を学び、帰国後は春光院で英語での座禅の教室を開き、多くの外国人が参禅に訪れています。アメリカのグーグルでは、禅、特に瞑想をトレーニング化した「マインドフルネス」を取り入れた人材育成をしており、その影響から禅に注目が集まり、マインドフルネスそのものが逆輸入されています。

  それでは、なぜ、今、禅なのか?リーマンショック後、欧米の企業エリートが則していた実践主義や勤労主義、また個人の自己実現を進めることが利己につながり、全体の幸せに貢献しないことがわかり始めました。利他や共感を生むために、禅の思想や実践に触れる必要が叫ばれました。禅は

 1.座禅や瞑想で、心を落ち着かせ、自己認知力や思考の客観性を鍛え、 

 2.あるがままの状態を把握するために、主観を排す

という二面にて解説されています。心身を整え、主観を排し、物事をありのままに見ることができれば、新たなる創造性が発揮できます。執着に直結する固定観念の除去こそが禅のツボであり、ステークスホルダー全員の幸福が醸成されます。

『世界中のトップエリートが集う禅の教室』(川上全龍著、石川 善樹・協力、KADOKAWA,本体価格1,600円)

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崖っぷち社員たちの逆襲

2016-04-29 15:15:06 | 

 リアル書店はずっと苦境の波の中に泳いでいます。色々な手段を講じても答えが出ない。デジタル、インターネット通販、コンビニなどに攻められるばかり。書店経営者やリーダークラスに対して、変革のヒントを本書では提示してくれています。

  まずは、数字に詳しくなれ!決算書の見方は最低理解せよ!

  次に、人の本質を学べ!当店の人間学にあたります。

  そして、ビジネスの基礎、マーケッティングを応用せよ!

  買う人も売る人も人間であればこそ、現代の人はいかに考え、行動するかをしっかりと知ることが先である。私自身も店のスタッフに口酸っぱく言っているのが、

  「目の前の人が抱く期待や予想を超えたことを行い、喜んでもらえ!」

  「モノではなく、ヒトにフォーカスせよ!」

です。モノに引っ張られることなく、お客様であるヒトに視点を移せば答えは自ずと見えてきます。ベストセラーや注目の商品も必要ですが、自店に来られるお客様が誰であるかを見定めて、モノを揃えることが重要です。

  「今の街の本屋に求められているのは、『売り方・売り先・売るもの』を抜本的に変えてゆくイノベーション」

であるのは間違いなく、これはどんな企業も同じ。一歩先、いや半歩先の変革を考え続けていくべきですね。

  本書に対して2点指摘して終えます。掲載されていた「社会人の基礎知識」は取り外しの出来るとじ込み付録にしたら、どのページを読んでいても参考に出来たかなぁと思います。もう1つは蛇足ですが、インターネット通販大手「インジス」というのは、本国にある「ミシシッピー」という名にしたら良かったのに・・・。

『崖っぷち社員たちの逆襲  お金と客を引き寄せる革命──「セレンディップ思考」』(小島俊一 著、WAVE出版、本体価格1,500円)

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日本人が最強の脳を持っている

2016-04-29 14:46:30 | 

  加齢型しかないと思っていた認知症には、スマホやパソコンへの依存が原因の「IT型認知症」が増えてきています。8つある脳番地が有機的に働いてこそ、健康な脳ですが、「ネット、スマホ、パソコンといった記憶の代替装置に依存することで、扁桃体や海馬の働きが他の脳番地と連動しないために起こる」認知症は年齢に関係ありません。老若男女の人がこの認知症への可能性を持っています。

 スマホやパソコンを捨てる勇気のある方は大丈夫ですが、仕事や生活上必要とされる現代人に対して、著者の加藤先生は

 「日本人らしい文化」や「日本人らしい生活」へ回帰せよ!

と言われています。「手間暇をかけることが脳には大切」とし、脳への「和トレーニング」を28あげています。例えば、メールやメッセージ、Lineでの情報の交換が当たり前ですが、あえて「便りを書く」などは、案件のことを直接書く以前に時節の挨拶、相手の健康を尋ね、その上で案件を書き、最後には相手への心遣いまで文章に込める。面倒だと思うと、脳は劣化し、認知症への道を辿ることになります。

  日本らしさに立ち返るには、時間の観念を明確に変える必要があります。また、便利よりも不便を愛する気持ちも兼ね備えないといけません。やはり、相手への「仁」、思いやりをいかに大切にするかに関わってきます。

『日本人が最強の脳を持っている』(加藤俊徳著、幻冬舎、本体価格1,100円)

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まく子

2016-04-19 17:41:47 | 

  温泉旅館の息子・慧は小学校5年生。学校で「せいきょういく」を受け、大人への階段を登ろうとしている。しかし、女子生徒の含めて、身体は徐々に大人になろうとしているが、慧は大人になりたくないと思っている。

  同じクラスに転校生がやってきた。慧の旅館に住込みで働く母さんと一緒にやってきた「コズエ」は「まく」のが好きな女の子だった。街にある常盤城の石垣からは石粒を撒き、旅館の庭には水撒きをした。そして、石垣で撒きながら、慧に話す言葉は大人になることを拒否したい慧に響いてくる。

 「慧や地球上のものは、その粒を与えあいながら生きてる。変化する粒を、それぞれ与えあいながら。」

 そして、そのことは誰しもの身体が記憶していること、つまりはそれこそが魂だと口走る。何だか哲学的だが、これこそが本当のことであり、だから成長していくのだろう。11歳の子どもたちに本質を語らせる西さんはすごいなぁと感じた。

『まく子』(西加奈子著、福音館書店、本体価格1,500円)

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笑いと治癒力

2016-04-16 15:39:45 | 

  落語を趣味にしている私としては、笑いの効能は素晴らしいんだということが前面に書かれていると期待して読みましたが、ちょっと意外でした。不治に近い難病である膠原病に対して、笑いも駆使しながら、自らの自然治癒力を信じて闘病した記録が記されています。

 本書で感じたことは、

 1.健康であろうと病気に罹ろうと、医学的な知識は持つべきである。特に、人間の身体のことは知って損はない。

 2.病気になれば、闘病という名の「生への意欲」は高めなければならない。

 3.人間の心身の再生能力は計り知れない力を持っている。

です。さらには、お笑いを愛するものとしては、 「思いっきり笑うということは、戸外に出る必要のない体内ジョギングの良法」にためにも、落語に精進します。

『笑いと治癒力』(ノーマン・カズンズ著、松田 銑訳、岩波現代文庫、本体価格980円)

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