あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

最強の働き方

2017-05-24 17:49:55 | 

  昨日は近畿ブロックトーハン会楽市楽座に参加しました。楽市という名の商談会で、「ムーギー・キムさん 最強の本の売り方」というトークイベントがあり、これも何かの縁と思い、聴講者となりました。その前に著書を読まないと失礼と判断し、『最強の働き方』を前日に読了しました。 

  グローバルエリートとして、香港、シンガポール、フランスなどで働いて、上司から叱られたり、アドバイスを受けたことを一冊にまとめた、ビジネスマンの教科書です。仕事の基本から自己管理、心構え(マインドセット)、リーダーシップ、自己実現まで網羅しており、生き方の手引書の態まで成しています。

  昨日の講演でもおっしゃられていた通り、どこの国のビジネスマンが読んでも納得する普遍的なことを知的に、また読めば自己肯定感が芽生えるように、ユーモアも交えて書かれています。誰が読んでも楽しめるようにイラストなども細部にこだわり、まさに新人からビジネスマンまですべての人が手に取ってもらえるようになっています。

  私自身が一番感銘を受けたメッセージは「会社にレガシーを残す-あなたが会社を去っても、会社に残るものは何か?」、すなわち、「ビジネスパーソンなら給料をもらっている以上、自分がやるべき仕事で目標を達成するのは当然である。それができたうえで、追加的に『どんなレガシーを組織に残せるか』がライバルに差をうける重要なポイントになる。」です。さらには、

「レガシーを残す生き方」

を読者に問うていることが本当に素晴らしい。働いている間だけでなく、自分の人生におけるレガシー、遺産は何かを突き詰めると、生きる目的も明確になり、豊かな人生を歩めるのでないでしょうか?東京五輪でどれだけレガシーが残こせるか?の前に、自身を振り返ってみましょう!

『最強の働き方』(ムーギー・キム著、東洋経済新報社、本体価格1,600円)

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より少ない生き方

2017-05-22 16:50:13 | 

  ミニマリズムに関する本もこれまで数多く読んできました。『必要十分生活』『物欲なき世界』『最小限主義。』『モノやお金がなくても豊かに暮らせる。―もたない贅沢がいちばん』『ぼくたちに、もうモノは必要ない。 ―断捨離からミニマリストへ―』など、このブログでも発信してきました。モノが溢れた豊かな物質社会でいかにモノを少なくすることで良き人生を送れるかが書かれてあったと思います。

  しかし、本書はモノを手放すことで得られるメリットも書かれているが、まずは、

「自分の『目的』を定めよ!」「自分にとっての理想の人生について、真剣に考えよ!」

という自らの人生の理念構築をすることをスタートラインにしています。人それぞれに異なる生きる目的に則したシンプルな生活を目指すこと、すなわち、「いちばん大切にしているものを最優先にして、その障害になるものはすべて排除すること。」であり、その結果、「誰もが適正量のものを持ち、そのおかげで最高の人生を生きられるようになる」のです。 

  ミニマリズムもブームではなく、一人の人間としての哲学の現象として各人に定着することが、自身の人生を豊かにし、さらには素敵な世界につながってくるのでしょう。

『より少ない生き方 ものを手放して豊かになる』(ジョシュア・ベッカー著、かんき出版、本体価格1,500円)

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楽園

2017-05-18 16:39:41 | 

  祖父からのはがきがアパートのポストに投函されているのを発見し、なんとも奇妙な物語が綴られます。その文面には

「お前に引き継いでもらいたいものがある。」

と書かれ、バイト生活の30歳男の圭太は遺産でもくれるのかと、祖父が住む、南国の植物が生い茂る廃村を訪れます。引き継いでもらいたいのは、「ウィジャヤクスマ」、日本名「月下美人」という花の栽培でした。すぐに引き返すはずが、「花が咲くまではここにおれ」と言われ、奇妙な共同生活が始まります。

 花を引き継ぐことは、祖父の人生を引き継ぐことであり、太平洋戦争時に南方戦線での記憶がこの花の中に込められているのです。人の記憶の中に自分が存在する限りは、命のバトンタッチをすることになり、自分のルーツを知ることにもなります。書き残すよりも、脳内に残る話し言葉で伝承する、いかにも古代風ではあるが、祖父の想いは廃村の空気よりも重く、祖父にとっては楽園の継承こそが生きた証しだったのではないでしょうか。

『楽園』(夜釣 十六 著、筑摩書房、本体価格1,200円) 第32回太宰治賞受賞作。

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夢をかなえる読書術

2017-05-15 13:17:30 | 

  「本を汚せば汚しただけ、あなたの人生はひらけていく」と帯にある文章は全く同感ですね。知識の源の一つである本は、著者の伊藤さんにとって、「考えるための素材」。私も常々言っているように、読書でインプットをして、親からいただいた貴重な脳で思考を巡らし、文章やクチコミ、行動などへのアウトプットするためには読書は必要不可欠です。アウトプットあってのインプットであることは、意識的に吐くことから始める呼吸法と同じだと考えます。そのためには受け身ではなく、主体的に知識を獲得していく姿勢や習慣を持たなければなりません。

  読書術の一端は、「スマホに取られすぎている」時間を自分に取戻し、読書時間を確保することが一番大切ですね。誰もが意味もなく、時間潰しとして、スマホを触っていますが、スマホを触ることにより、主体性は失われ、受け身に成り下がっています。この時間を夢をかなえるための時間に変えていくだけで、人生は大きく彩りを帯び始めるでしょう。

  最後に、本を読む意味について、次のように言及されています。

「本を読むことは、魂を鍛えることになります。なぜなら、『魂を磨く』とは、『自分との対話』『人との対話』を深めることだから。本を通して、人は自分の内面と向き合い、著者と対話して、自分を成長させていく。」

  読書は単なる知識吸収のためだけにならず、考えるベースです。考えれば、自身の価値観も変貌し、さらに改良された自分になります。その意味では読書は心の成長ドリンクです。

『夢をかなえる読書術 』(伊藤真著、サンマーク出版、本体価格1,300円)

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本を守ろうとする猫の話

2017-05-13 17:32:56 | 

 『神様のカルテ』の夏川草介さんの新刊です。今回は夏木書店という町の小さな古書店が舞台です。高校生の夏木林太郎は、幼い頃に離婚した母と暮していたが、母も早逝し、祖父と共に生活をしていたが、その祖父が亡くなるところからこの物語は始まります。

 トラネコのトラが突如登場し、豊富な本の知識と、祖父に叩き込まれた「本の何たるか」を持ち合わせている林太郎に力を貸してもらいたいと願い出ます。まず、第一の迷宮は「閉じ込める者」。より多くの本を読む人に価値があるとし、5万冊の蔵書を持つ男と対面します。

 「ただがむしゃらに本を読めば、その分だけ見える世界が広がるわけではない。どれほど多くの知識を詰め込んでも、お前が自分の頭で考え、自分の足で歩かなければ、すべては空虚な借り物でしかないのだよ。」

という祖父の言葉を思い出し、この迷宮を突破します。

 第2の迷宮は「切りきざむ者」。読書研究所に赴いた林太郎は、効率的に読むために、エッセンスだけを本から切り抜く学者と闘います。

 「本を読むことは、山に登ることと似ている。ときに一行一行を吟味し、何度も同じ文章を往復して読み返し、頭をかかえながらゆっくり進めていく読書もある。その苦しい作業の結果、ふいに視界が開ける。長い長い登山道を上り詰めた先に、にわかに眺望が開けるように。」

と説く、祖父の言葉はここでも活かされます。 

 第3の迷宮は「売りさばく者」。世界一番堂書店という名の出版社は、何かを伝えるために本を出すのではない、売れる本を出版することに躍起になっています。

 「僕だって、本屋が儲からなくてもいいだなんて思っていません。儲かることと同じぐらい大事なことがあることを知っているつもりです。」「本には心がある。人の思いが込められ、大切にされ続けた本には心が宿るようになる。」

という林太郎の思いが、この迷宮も駆逐します。

 最後の迷宮では苦労三嘆するも、

 「本は人を思う心を教えてくれる」「人を思う心を教えてくれる力が本の力」

という、人間が生きていく上での本の在り方を問うて、このストーリは締め括られます。

 現在の出版界や本の置かれる環境を課題として、本来の姿を導こうとする林太郎と猫は我々への応援団かもしれません。林太郎の祖父や林太郎が悟ったように、本の力を十二分に知り、その力を主体的に使う自分を作り上げることを訴えてくれました。私たちは一人では生きれない、先人たちの生きた証しを受け入れて、幸せな人生を歩まなければなりません。

『本を守ろうとする猫の話 』(夏川草介著、小学館、本体価格1,400円)

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リーダーの教養

2017-05-09 18:19:12 | 

 リーダーにはどういう教養が必要か?本書では教養という名のリーダーシップが何か?また、その発揮の仕方を解説しています。

 リーダーの教養は「成果につながる教養」であり、「頭の教養だけでなく、心の教養も必要」です。つまり、知識に重きを置かず、いかなる名著であろうとも自分が判断し、洞察し、実行まで落とし込めることこそが重要です。インプットだけでなく、評価できるアウトプットを持たなければなりません。そこで、

「立志と実行」

と言い切っています。また、

「教養とはつまるところ『生き方』の問題」

と喝破している点は、我々の日々の生き様こそが「心の教養」に根付くものでしょう。何も求めず、できることをやり続ける、真摯な力をもつこそがリーダーです。

『リーダーの教養 』(佐々木常夫著、ポプラ社、本体価格1,500円)

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スマホ断食

2017-05-08 17:19:23 | 

  『検索バカ』、『ネットで「つながる」ことの耐えられない軽さ』と、藤原智美さんの著作は必ず読んでいます。今回も、ネット断食を経験して、さらなるネット社会批判を痛切に書いていらっしゃいます。この本のここだけは知っておきたい一文は

 ネット社会とは「個が個を意識できる」、言葉を変えれば「あなたがあなただけでいられる」時間を剥奪する社会です。自分自身に向けて言葉を発して、自分で答えをだす自力の知的活動を、非効率で時代遅れのように侮蔑するような傾向すらみられます。ネット世界とは自己の内面の深みに達するような思考が非常にむずかしい世界です。

です。

 『ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか? 不便益という発想』

 http://blog.goo.ne.jp/idomori28/e/25de720a3f261068d7e403d5f385a26b

でも書いたように、『何も「しなくてもよい」から「させてくれない」状態になり、流されるまま』の自分を発見することが多いかと思います。ネット、SNSの濁流にもまれて、自己を省みる暇さえ与えてくれません。「便利さが、想像力や思考力を奪いさる」のだからこそ、

 「孤独の時間が人生を豊かにする」

ことを念頭に置いて、自分自身の思考する時間を確保しなければなりません。

 他にも、自分自身の個人情報がいつも間にかに統合され、利用されていることや、匿名性を求めるネット社会の特性がリアルの個人を変貌している点など、生きていく上で少なからず危険性を感じずにはいられません。その意味でも、スマホ断食は正常な人間性を取り戻すうえで必要になってくるかもしれません。身体のダイエットだけでなく、デジタルのそれも考える必要がありますね。

『スマホ断食 ネット時代に異議があります』(藤原智美著、潮出版社、本体価格1,200円)

 

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さなとりょう

2017-05-04 17:43:30 | 

  ありえない設定で坂本龍馬暗殺犯を探し出す歴史ミステリー。龍馬の女性関係では必ず登場する佐奈とおりょうがまさかの遭遇でこのストーリーは転がり始める。二人の性格があまりに正反対なのが物語を興味深くし、勝海舟、山岡鉄舟、西郷隆盛、中村半次郎など幕末の歴々の人気人物が脇を固める。フィクションながらも薩摩の動向はノンフィクションの色を呈し、謎の解明を実際にやってもらいたいと思えてきます。

  私は龍馬が袖を振った佐奈が最後の最後に、彼の愛情の深さを知る締めくくりに満足を覚えました。佐奈の心情からもハッピーエンドでしょうね。

『さなとりょう』(谷治宇著、太田出版、本体価格1,600円)

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植物はなぜ動かないのか ─弱くて強い植物のはなし

2017-05-01 14:54:16 | 

 動物は自分の意思で動ける一方、植物は動けないから「弱い」存在と思っていましたが、それは下手な先入観でしかなく、本書で植物の命のダイナミックさを知って、尊敬します植物さま。

 その理由①植物の進化のスピード

 地球環境に酸素とオゾン層が形成され、海の緑藻類がコケとして陸上し、生息環境を拡大します。シダ植物も現れ、それにあわせて、両生類から植物を餌とする爬虫類が進化し、その一部が恐竜となります。恐竜は裸子植物を食料としますが、裸子植物は食べられまいと巨木化していき、恐竜も比例的に巨大化していきます。

 発芽するのに1年は必要な裸子植物は、被子植物に進化し、体内で受精する安全性と、発芽までのスピードを短縮する能力を獲得します。つまり、確実に子孫を残すことと、恐竜との競争に打ち勝つために、環境変化への対応能力としての世代更新スピードを持つことにより、その速さに追いつかない恐竜は滅亡の道を歩みます。

 世代更新スピードの短縮は「死」を早めることになり、『「老いて死ぬ』という行為自体が生命の進化の過程で自ら創り出したもの、「死」は地球上に生まれた生命が創り出した発明品である」という見解に驚愕しました。禅で言われる、「いま、ここ」の感性は自らの命の発露ですね。

 その理由②子孫の誕生のための技術

 植物で美しいと人間が思う花は、植物にとっては虫をおびきよせる技術です。花粉を風に飛ばす風媒花では、受精確率が低いので、昆虫、特に蜂に蜜を与える代わりに、花粉を蜂の身体に付着させ、他の花へ蜂を飛ばすことにより受粉確率を向上させる共生の術は、人間学でいう「他利」「植福」です。鳥やサルなどには果実を提供し、種を別の地に播いてもらうために、熟した果実の色を赤にして目立たたせるのも、お店の看板と同じです。

 その理由③動かない植物の生存能力

 動かない特性である「固着性」を持つ植物はCSR戦略という方法で生息地を得ています。

 CはCompetitive競争型は、戦ってでも生息地を勝ち取るタイプです。

 SはStress toleranceストレス耐性型で、その環境に耐えるタイプであり、最後のRはRuderal 攪乱適応型と呼ばれ、環境変化に臨機応変に対応するタイプになり、この二つは戦わずして、生息地を獲得します。SならびにRは植物自らが変化し、その環境に適応する「可塑性」を持っています。「逃げることなく、環境を受け入れて自分自身を変える」ことは人間が生きていく上でも重要な要素です。「ナンバー1になれる場所を見い出さなければ生存することができない。オンリー1とは自分が見出した自分の居場所」であり、特に雑草などの逆境に負けず、子孫を残すパワーは、我々も素直に学ばなければなりません。

『植物はなぜ動かないのか ─弱くて強い植物のはなし』(稲垣栄洋著、ちくまプリマー新書、本体価格820円)

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とりつくしま

2017-04-24 14:27:15 | 

  既に口コミで人気になっている短篇小説。あの世に行って、「とりつくしま係」に面談し、未練のあるモノに取り付き、現世に戻れるフィクション。落語好きの私にとっては、六代目桂文枝(桂三枝)さんの『生まれ変わり』を彷彿とするような設定で非常に楽しい。

  『生まれ変わり』では現世に戻るまでのやり取りが面白いのですが、『とりつくしま』では戻ってからのストーリーが感動を呼びます。特に、「ロージン」や「日記」、「白檀」など、自分の死後、自分に関わる人たちがどうなっているのか、あるいは最愛の人の自分に対する情愛がどうなのかを知ろうと躍起になります。どの作品も落語のネタになると言ってしまえば、著者の東さんには申し訳ないですが、肩の力を抜いて気楽に楽しく読めます。

  読了後の感想は、自分は何に取り付きたいかを考えてしまいますね。そうすると、創造力が広がりますし、今世でしっかりと自分の思いを伝えようと決心させます。

  『とりつくしま』(東直子著、ちくま文庫、本体価格600円)

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