猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

イラク総選挙続報―米国の中東民主化構想第一歩

2005-12-17 08:38:52 | その他各地域情勢
 15日に行われたイラク国民議会選挙の続報をご紹介する。あわせて『イラク総選挙は高投票率―イラク情勢は少しずつ好転か』もご覧いただければ幸いである。この選挙で注目される点は、何といってもスンニ派の大変な高投票率である。スンニ派といえば、ご承知の通りサダム体制下での主流派であり、シーア派などの他の勢力を抑圧し、米軍の駐留に強行に反対するためにその一部はテロ支援すらして、1月の総選挙をボイコットするなど、新生民主イラクの安定を脅かす存在になりかねなかった。しかし、元来少数派であることに加えて、これ以上ボイコットやテロ支援をして国政の場からはじき出されることは得策ではないと判断した結果、今回の高投票率に繋がったことは明白である。また、イラクの安定化が彼らの持論である米軍の早期撤退に繋がることも理解してきたに違いない。さらに、米国がスンニ派との宥和政策に踏み出したことも大きいようだ。例えば、シーア派支配下の内務省内の監獄に投獄されていたスンニ派勢力を解放し、シーア派を主体とする複数の特殊部隊を解散させたという情報がある。
 今回の選挙で過半数を制する勢力がないことから「イラクの政局は混迷へ」などと煽る日本の一部マスコミの報道もあるが、反米に凝り固まるあまりの「希望的観測」の要素が大きいのではないか。
 さて、ブッシュ大統領は、当然のことながら、この選挙を「民主化に向けた画期的な出来事だ」と高く評価した上で、イランやシリアなどに対する「よい見本になる」と述べ、中東諸国に与える影響の大きさを指摘した。実際、アラブ各地のメディアもかなり好意的な報道ぶりである。16日のサウジアラビア英字紙『アラブニュース』は「暴力ではなく平和が、虚無主義ではなく交渉が、偏狭ではなく友愛が勝利した」と述べているし、エジプト紙『アル・アハラム』も「この地域が待望してきた民主主義の推進につながる」と評価している。やはり、ブッシュ大統領の、米国はアラブの民主化を達成するという戦争目的の第一歩に到達したという主張もあながち見当はずれでもない。ただし、先日も指摘したとおり、イランは楽観視するのが困難な国であると思う。
 さて、このような動きになってくれば、次は日本外交はどうすべきかが問われてくる。イラクでは自衛隊を派遣して新生イラクと友好関係を築くための礎となったことは間違いない。今後は、事態が沈静化するにつれて自衛隊だけでなくて幅広い復興支援を展開していくべきであろう。これは、日本の得意とする分野である。アラブ各国は親日的な国が多い。イラクを日本の中東におけるプレゼンスの橋頭堡とすべきであろう。


「統一イラク同盟」優勢 国民議会選、高投票率
 【カイロ=加納洋人】十五日に投票が行われたイラク国民議会選挙(定数二七五、任期四年)の開票作業が十六日、本格化した。一月の総選挙をボイコットしたイスラム教スンニ派地域でも高い投票率が伝えられており、結果判明後は、最優先課題である治安の安定のために、武装勢力を抱えるスンニ派勢力を巻き込んだ新体制づくりができるかどうかが焦点となる。
 公式な投票率は発表されていないが、フランス通信(AFP)は十六日、選挙管理委員会関係者の話として、登録有権者数約千五百五十万人のうち千百万人以上が投票し、投票率は70%を超える見通しだと伝えた。一月の総選挙の58%、十月の新憲法承認の国民投票の63%を大きく上回る数字で、選挙制度がイラク国民に次第に定着しつつある傾向がうかがえる。
 特に、スンニ派地域では、駐留米軍と武装勢力の衝突が繰り返された中部ファルージャで推定投票率が85-95%に達しているほか、中部ラマディで75-80%、フセイン元大統領の出身地のティクリートでも83%に達する見通しという。
 イラク戦後、スンニ派は、米軍を中心とした多国籍軍の駐留に強く反発。同派過激派がテロ攻撃を繰り返してきた。さらに、同派は戦後の「イラク民主化」の政治プロセスへの参加も拒んできただけに、本格政権を樹立する今回の選挙で同派が参加した意味は大きい。
 ロイター通信がイラク全土で五百人に対して行った出口調査では、シーア派宗教政党を中心とした連合会派「統一イラク同盟」(UIA)が中部や南部のシーア派地域で幅広い支持を獲得してリード。世俗勢力を結集したアラウィ前首相率いる「イラク国民名簿」が都市部を中心に支持を広げ追う展開となっている。
 スンニ派地域では、同派三派からなる「イラク合意戦線」やアラウィ氏(シーア派)の世俗主義会派が支持を集めたもようだ。
(産経新聞) - 12月17日5時1分更新

[イラク国民議会選 米大統領「画期的」と評価]
 ブッシュ米大統領は15日、イラクの国民議会選挙が大きな混乱もなく終了したことについて、「民主化に向けた画期的な出来事だ」と高く評価した。ホワイトハウスに、米国内で投票した在米イラク人を招いた席で語った。1月の総選挙をボイコットしたイスラム教スンニ派勢力も参加したことで、高い投票率が見込まれることに関しては、「イラク市民の勇気に祝意を表したい」と語った。さらに、今回の選挙は、イランやシリアなどに対する「よい見本になる」と述べ、中東諸国に与える影響の大きさを指摘した。(ワシントン 有元隆志)
(産経新聞) - 12月17日5時1分更新


☆もしよろしければ、Blog●Rankingをクリックしてランキングに投票お願いいたします。


最新の画像もっと見る