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感染症の記事比較:old mediaのインフルエンザ報道

2010-11-07 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
マスコミ、大手メディア、既存メディアとか最近はいろいろな表現があるようですが、新しいメディアと対比して今回はold mediaと書いておきましょう。
古いことは悪いことではありません。その伝統にふさわしい良質な記事を期待しています。

さて。「集団インフルエンザ」についての記事です。

他でも集団事例はおきており、随時報告されていますが、今回は死亡例が6例。

インフルエンザにもっとも罹患するのは幼児~小学生ですが、インフルエンザで死亡するのは高齢者です。
インフルエンザでこどもがバタバタ死んだら大問題ですが、超高齢者や基礎疾患たっぷりの人では一定の死亡リスクが最初からあるというコモンセンスをもたなくてはなりません。

また、高齢者はインフルエンザや肺炎球菌のワクチンの効果があまり期待できない層でもあります(免疫力の低下)。

インフルシーズンには職員や見舞客も感染・発症したりしますし、ゼロリスクにすることはできません。職員が発症していないのにNICUで流行したりするのですから。

「何か対策をとらんのかっ」とかツバとばすひとたちがいます。

高齢者を若返らせることはできません。基礎疾患をなくすこともできません。ワクチンは100%きくわけではありません。

次のような条件を予算保証とともに提案をしていただきたいものです。

◆聖路加国際病院のようにすべての病室を個室にして(その代わり最低1日3万円はかかりますよ)
◆インフルエンザかなっ?と思ったら(体温○度以上と呼吸器症状)職員は仕事から離れて自宅待機でよい(かわりの人員に困らない)
◆集団でのリスクが嫌な場合は在宅がベター(家族からうつるリスクはありますが)

いずれにしてもゼロにはなりませんが。

例によって、医療機関を最初から悪くかこうという意図がミエミエのものもあります。

まず。今話題の朝日新聞。
http://mytown.asahi.com/areanews/akita/TKY201011060335.html

タイトルは「なぜ集団感染、病院側は「沈黙」 インフル6人死亡」です。

(病院の責任者は対応するといっているのに「沈黙」だなんて失礼な。インフルエンザは集団感染になりやすいんですよ。「なぜ」ってのがナゼですよ。集団生活です。保育園のインフル集団事例で「なぜっ」とかいいますか?)


「北秋田市綴子の病院で入院患者らにインフルエンザが広まり、49人が集団感染、お年寄り6人が亡くなった。院内の感染対策はどうなっていたのか。県が発表した6日、病院側は「責任者不在」を理由に経緯を明らかにしなかった。 」

(全体像を知っている責任者以外が答えたらまずいんですよ)

「 県によると、10月31日に80代男性が、今月2日には90代と60代の男性、70代女性の計3人が死亡。さらに4日に80代女性、5日に80代男性が相次いで亡くなったという。」

(この、・・という、ってなんでしょうね)

「国道7号沿いの鷹巣病院には6日夕、報道関係者が詰めかけ、病院側に説明を求めようとした。」

(たいへんなときに、迷惑ですね)

「 午後6時45分ごろ、病院職員からの依頼を受けて警察官が巡回に訪れた。病院内に入った警察官は、職員の話として「今日は責任者がいないので対応できない。明日朝には、院長が出てくるので、話を聞いてほしい」と報道陣に伝えた。 」

(真っ当です)

「病院のホームページによると、同病院は1967年の開設。精神科のほか、心療内科と内科があり、144床を備える。 」

(ということは、感染予防の自己管理が難しい人ばかりということですね。しかも重症度の高い高齢者をたくさん引き受けているわけです)

「健康推進課によると、インフルエンザは感染力が強いため、窓を開けておいただけでウイルスが入ってくることがあるという。今回の集団感染の理由を特定することは難しいが、見舞いに訪れた人や職員らによってウイルスが持ち込まれた可能性があるという。 」

(感染経路がわからないのがインフルエンザの特徴です。基本です。流行していないときどこに潜んでいて、なぜある時期から活発になるのかわかっていないんですから)

続きまして、河北新聞。
http://www.kahoku.co.jp/news/2010/11/20101107t43028.htm

タイトルは「病院でインフル集団感染 入院患者6人死亡 北秋田」

(事実だけ。いいですね)

「 病院関係者などによると、集団感染が発生したのは北秋田市綴子の鷹巣病院(医療法人社団博愛会経営、精神科など)。秋田県は病院名を公表していない。」

(発表することで公衆衛生上のメリットが特段ない場合、しないんですよ。隠すとか関係ないですから。地域によっては風評被害のほうが皆に迷惑が発生するのでは?)

「県健康推進課によると、死亡したのは60~90代の男性4人と、70代と80代の女性2人。6人は10月31日から11月5日にかけて、相次いで亡くなった。いずれも簡易検査で陽性だった。6日には発熱の症状があった80代の男性が死亡。県は「簡易検査では陰性だったが、感染の可能性を否定はできない」と説明している。

(キットの不確かさは昨年学びましたね)

「病院では10月27日、入院患者の80代女性が発熱などの症状を訴えた。簡易検査で陽性だったため、病院はすべての入院患者にインフルエンザワクチンを接種したほか、感染者を一つの病棟に集めて隔離し、面会の自粛を促したが感染は拡大。3人が死亡した今月2日、「49人がインフルエンザに感染し、入院患者4人が死亡した」と県北秋田保健所に報告した。」

(病院では上記のような対応が精一杯では。そして報告も早かったですね)

「秋田県は病院名を公表しなかったことについて「発表は県民に感染の注意を呼び掛けるのが目的。今回は公表する必要性がないと判断した」としている。」

(そのとおり)

はい、続きまして毎日新聞。
http://mainichi.jp/select/science/news/20101107ddm041040094000c.html

タイトルは「季節性インフルエンザ:患者49人が発症 6人死亡--秋田」

(去年の新型ももう“季節性”なんですよ~)

事実だけをたんたんと書いています。イイ記事です。
しかも、【田村彦志】と、記名記事です。責任ある記事を書くには必須ですね。

最後に読売新聞。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/akita/news/20101107-OYT8T00164.htm

タイトルは「集団感染 県、病院名公表せず」です。

(県が悪いとでもいいたいんでしょうか)

(このために書き出しがすごいです。病院名にわざわざカギ括弧がついています。朝日にだって<失礼!>ついていませんよ)

「「北秋田市綴子の医療法人社団博愛会「鷹巣病院」で、インフルエンザの集団感染が発生し、発症した入院患者6人が死亡したことが6日、明らかになった。県の発表後、病院からの事情説明を求めて報道陣が詰めかけたが、入り口は施錠され、職員からの説明は一切なかった。」

(関係ない人は病院に入ってきてはこまります。人権問題につながりますよ。取材はちゃんと病院の窓口を通して許可を得てからでしょう。)

「病院側は同日夜、北秋田署員を通じて報道陣に「今日は対応できる者が不在なので、7日朝に院長が説明をする」とのみ報告した。」

(それでOKですよ)

「一方、県は、「個別の病院名を公表することは風評被害を生みかねない」などとして、集団感染があった病院名を公表しなかった。」

(地域事情にあわせて対応するというのが原則ですから、いいんじゃないでしょうか。外部の人があれこれいう案件ではないですね。)

「鷹巣病院に入院している70歳代の母親を心配して駆け付けたという北秋田市の50歳代の男性は、「母親が無事なのかどうか、病院からは何一つ連絡がない。患者の家族にきちんと状況が伝わるような態勢を取るべきではないか」と話していた。」

(病院からは、急変や重体の場合は連絡がいきますが、問題ない場合は連絡しませんよ。「きちんと伝わる」ってなんですかね。病院名とか出して煽った人達は誰)

・・ということで、今後もウォッチしてまいりましょう。

みなさま、ぜひ定期的に地方の支局の記者さんをあつめて、感染症懇談会のような勉強会をするといいですよ(国立感染症研究所は月1回開催しています)。

常識外れな記事を書かれないために。サイエンスチェックとかないと記者さんもカワイソウですよね。

最近できた医療報道を考える○○の会はこういった記事にも対峙していくんでしょうか?
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1 コメント

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どんびろのつぶやき (どんびろ)
2010-11-08 22:49:11
こんばんは!
インフルエンザがまた流行ってきてるって。

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