感染症診療の原則

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決めつけない(解決から遠ざかる)

2016-02-07 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
何か健康問題がおきたときに、医師ならば発症までの経緯、発症後の変化についての情報聞き取り、診察をし、必要な検査を行い、時に治療薬への反応をみながら適切な対応を実施/変更していくことおで問題の解決をはかります。

このような訓練は6年間の基礎訓練と、試験合格後にはじまる数年間の研修の中で身につけ、他者の生命や健康に責任を負う仕事を重ねていく訳です。

健康の問題は誰にでも身近にあるものですが、多くの場合、このような訓練や情報をもっていない人たちです。

たまたま家族や身近なところに、親切に教えてくれる専門家がいるかもしれませんが、必ずしもそのような保証がありません。
自分で調べるとなると友人、本、インターネットあたりからの情報収集になりますが、その情報が新しく、正しく、自分や家族の健康問題にフィットするものなのかの判断が難しいという状況もあります。

市民のリスク認知については、Slovic先生らの解説が大変参考になりますが、イメージしやすいもの、つい最近の話、新規性の高いもの等にはリスクを感じやすく、また「リンクさせて考えやすい」というバイアスが生じます。

●●に違いない、と考えたあとは、それを補強するような情報を集め始めるので(確証バイアス)ますます●●に違いないとなっていきます。「極端」な場合、自分と異なる意見は無視、忠告は批判や否定と受けとられ、罵ったり人間関係がこじれたりすることもあります。
(そしてそれまで時間と労力をかけて主張していたものをひっこめるのは勇気や決断が要ります)

健康問題を解決するのがゴールであったはずなのに、自分が考えた●●説でなくてはならない、そのための言説集めや他人の批判まではじまると、健康問題が置き去りになります。大人が自分の病気について自己責任でやっているなら「そうですか・・・」となるのかもしれませんが、お子さんの話だったり、そもそも他の健康の話の場合、責任は誰にあるのか?厳しく問われることになります。

決めつけないで、時間の経過、前後関係など情報をていねいにとっていく、1つ1つの検査からわかることを大切にする、ということで今週届いた「感染症学雑誌」(日本感染症学会の学会誌)にあった埼玉の事例を紹介したいと思います。

「最初はSFTSを疑い疫学調査と遺伝子解析により国内感染デング熱と確定された症例」です。

2014年8月にSFTSかもしれないと医療機関から保健所に相談が入ります(第一報を入れた医師が素晴らしい)。海外渡航歴のない10代の男性は頭痛、発熱、発疹、筋肉痛、嘔吐、下痢、目の痛みの症状。
8月9-10日にキャンプに参加し山にいたということがわかります。
SFTSの潜伏期間を6-14日なので、11-12日に山で感染したとすると8月16日之発症は早いのではないか?と考えます。ダニでのウイルス感染の検査も陰性。この結果がでた8月27日に厚労省が国内デング例を発表。
その後の精査でデング熱ウイルスが検出されます。
再調査を行うと、山に行く前に代々木の施設にでかけていたことが判明、とのことです(すばらしい)。


いっぽう、デング流行キャ—!とパニックになっていたときに、「代々木にいた」「蚊にさされた」「発熱、発疹」でデング熱疑いで受診した30代男性が風疹だったり、「新宿にいて発熱、下痢、頭痛、発疹、筋肉痛」で受診したデング熱疑いの20代男性が急性HIVだったり。

デング熱の紹介状でデング熱かも、、と語る本人を前に、「ところでこの1カ月以内にコンドームをしない性行為はなかったですか?」と、「ワクチン接種歴は?」と聞いたり検査を考えた医師が素晴らしい。

流行情報は大変参考になるのですが、可能性はたったひとつではないこと、別の感染症かもしれませんし、重複した感染(A+B、A+B+Cなど)かもしれません。

自分のストーリーでそれにつながる情報だけを並べていくと、解決からは遠ざかるかもしれません。
様々な可能性を医師とともに考えられるといいですね。

ドクターGが一般向けの番組として(当初の予想をこえて)受け入れられ楽しまれ評価されているのを見て、
「医師にはなるべく情報を伝えた方がいいんだな」とういことも広まるのではないかと思っています。
(homeroomの皆様ありがとうございます)
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