感染症診療の原則

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CRS/CRI と その周辺

2013-09-15 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
米国では2012年に「3例」先天性風疹症候群の子どもが把握された、というMMWRレポートがありました。
母親は流行国生まれの移民。
3例について、どのように診断がついたかの詳細が紹介されています。
Three Cases of Congenital Rubella Syndrome in the Postelimination Era ― Maryland, Alabama, and Illinois, 2012

CRS Case report, Pediatric On call

こちらはナイジェリアの経験。
Congenital rubella syndrome: pattern and presentation in a southern Nigerian tertiary
World Journal of Pediatrics

Abnormal Development - Rubella Virus



今回の日本での風疹の流行で、影響を受けた妊婦/赤ちゃんはいったいどれくらいいるのでしょう。
2012年から、すでに18例となっているCRSの報告。もちろんこれがすべてではなく過小評価になっていることは間違いありません。

今回のアウトブレイクでも、不顕性感染(母親が自分の風疹罹患に気づいていない)例もあります。

医師が心臓疾患(動脈管開存、肺動脈狭窄、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症 等)から、風疹感染を疑って検査して気づいたケース。
医師ではなく母親が赤ちゃんの目の異常に気づいたケース。


過去の数字も過小評価です。
「子どもが通う学校には同年齢に同じような子(母親が風疹に罹患)がいる」「なぜ他の子どもはCRSとされていないのか?」
保護者の方のコメントです。

そこでの正確な把握と、障害を持って産まれてきたお子さん達が発達/学習上の対応が遅れないように支援することが急務です。

CONGENITAL RUBELLA SYNDROME AND EDUCATIONAL PRACTICE: Neurobiological Influences and Intervention illustrated by a case


当事者による支援活動も始まりました。

9月14日 47ニュース 「風疹撲滅へ臨時接種を」 子どもの疾患で患者会
http://www.47news.jp/CN/201309/CN2013091101001787.html

11日の厚生労働省での要請行動では、高校生が「風疹で障害をかかえた人たちが、これから産まれてくる赤ちゃんのために支援を依頼している。そのことを理解してほしい」といったことをお話されたそうです。

患者会のブログでは、その時の様子が報告されています。



医療関係者でも、妊娠中の風疹罹患による影響を説明できる人は多くありません。

こちらの教育部門によるFact sheetにある、早期に把握される問題と、少し遅れて把握される問題の整理が参考になります。
コロラド州資料


学習や発達をサポートするためには、聴力障害、白内障、心臓疾患、精神発達についての早期のアセスメントが重要とされています。

『沖縄疾病史』には精神心理発達判定、教育別判定の記載があるそうです(amazonでみたら10万円・・・)
(原先生、上原先生に教えていただきました。ありがとうございました。)




数として先天性風疹で一番多い障害は聴力障害だといわれています。
つまり、小児の耳鼻科の先生の協力が不可欠です。

参考になる資料がありました。

■沖縄県医師会 2007年 「乳幼児・小児の難聴~早期発見・治療の必要性~」

聞こえと言葉の発達情報室 


0歳児の聴力障害をどうやって把握し、必要な医療につなげていくのか。
こちらがとても参考になりました。

■日本産婦人科医会 新生児聴覚スクリーニングマニュアル

しかし、現在全ての子ども達がスクリーニングを受けているわけではないです。

■京都大学医学部付属病院 耳鼻咽喉科 小児人工内耳の現況と重要性

『お母さんの声が聞こえる ~人工内耳の子どもたち~』 (制作 テレビ長崎)

人工内耳(人工臓器 2009年)

子どもと補聴器(ろう学校.com)

バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センター



過去の経験から学ぶところも大きいです。

1965年 以前の琉球地方における先天性風疹症候群(感染症学雑誌 第45巻 第2号)

■オーストラリア「CRS 25年後」A TWENTY-FIVE-YEAR FOLLOW-UP OF CONGENITAL RUBELLA
Lancet 1967年12月

忘れられた沖縄風疹児3 そして彼らは発見された!

まさに「発見」だったそうです。

平成医新 先天性風疹症候群(昭和39年) 


■小児感染免疫 2008年 日本の風疹・先天性風疹症候群の疫学研究―偶然との出会い―

BLOG 134)命の樹ー随想 先天性風疹の沖縄での多発の発見

私の小さなセレンディピティ“風疹の物語” 植田 浩司先生(西南女学院大学)



先天性白内障について。

日本小児眼科学会 「先天性白内障」
"原因として常染色体優性遺伝、染色体異常、子宮内感染(風疹、トキソプラズマ、サイトメガロウイルスなど)のほか、さまざまな全身疾患・症候群に伴って起こるものもあります。"


難病情報センター 「先天性白内障」
"年間約200例の新規患者が発生している。1/3に眼合併症が、1/4に全身合併症をともなう。72%に手術が行われているが、視力発達の感受性が高い時期に行われたのが1/3であり、早期発見が十分になされていない"


心疾患について。

SEASONAL INCIDENCE OF PATENT DUCTUS ARTERIOSUS AND MATERNAL RUBELLA
AMA Am J Dis Child. 1952;84(2):199-213

Rubella Syndrome―Cardiovascular Manifestations and Surgical Therapy in Infants
Calif Med. 1966 November; 105(5): 340–344.

An update on cardiovascular malformations in congenital rubella syndrome
Birth Defects Res A Clin Mol Teratol. 2010 Jan;88(1):1-8.


Congenital rubella syndrome and left pulmonary artery sling
ERJ February 1, 2012 vol. 39 no. 2 495-49

Congenital rubella syndrome with viral esophagitis


Gregg's congenital rubella patients 60 years later



海外でも風疹の影響を受けて視力や聴力の障害のある人たちの支援活動や当事者活動があります。

Deafblind International
http://www.deafblindinternational.org/network_rubella.html

The Helen Keller National Center
http://www.hknc.org/Rubella.htm

The Sense
http://www.sense.org.uk/content/rubella



遥かなる甲子園 (双葉文庫)
双葉社



廃校の夏―難聴児たちの甲子園 (講談社文庫)
講談社
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