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HIV感染は退職をすすめる根拠になりません

2010-05-02 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
日本で3番目に新規HIV症例報告の多い愛知県で、病院の看護師が退職をすすめられた、というニュースがありました。
記者は双方からコメントをとっているようです。
HIV感染理由に退職勧奨 愛知・病院側は否定 4月30日 47ニュース

HIVに感染している医師も看護師も薬剤師もこれまで通り勤務をしていますし、上司に相談をしている人も多く、個人情報保護などに配慮も行われています。

HIVや肝炎ウイルスに感染している医療従事者への対応については、2010年3月に米国のSHEAをUpdateしました。
このUpdateの概要はインフェクションコントロール2010年春季増刊『臨床ですぐ使える感染対策エビデンス集+現場活用術』に書きました。


記事を細かく見てみましょう。

「看護師は「病院幹部から看護師としては働けないと言われ、退職強要と受け止めた」と話している。病院側は「退職を求める意図はなかった」と、退職勧奨を否定している」

これで裁判をすると100%病院が負けます。
過去には「解雇」での訴訟が何件かあります。


「医療現場向けのガイドラインは策定の必要性が指摘されてから15年以上たっても整備されておらず、国の不作為が今回のような問題を引き起こす一因となっている。」

ここまでいえるかは疑問です。「差別はイケナイ」などという曖昧な表記でHIVのことだけ書くと、いまどきかえって偏見を助長します。


「その際、病院側は本人に断らずに採血検査をし、HIV感染の疑いが判明。翌日、看護師は別の医療機関で詳細な検査を受け、感染が確定した。エイズは発症していない。」

本人の意識がはっきりしているときに同意なく検査はできません。
意識不明で、そのときHIV感染の鑑別がその人の救命や健康回復メリットが上回る場合、検査はやむをえない、というあたりがコモンセンスのラインです。

ELISA検査は働いている病院で、WB検査を他の病院でやったということですね。


「その際、看護師は治療後の職場復帰に支障がないことを明記した診断書を示したが、、、」

施設の責任者が判断に迷う場合は、この診断書のドクターに電話をして助言を仰ぐなどすればよいわけですが・・・。


「HIVは輸血や性行為を介し感染するが、日常生活では感染しない。適切な治療を受ければウイルスが激減して発症を抑えられ、米国などでは感染後も勤務を続ける医療関係者は珍しくない。」

日常生活では感染しませんが、欧米でも医療行為上は管理が必要と考えられており、産業医やマネジメント部門への報告、定期健診、感染管理手技を定期的に確認するなどの基準は設けられています。・・ということが記事で不足している情報です。

米国などでは、ではなく日本でも、と書けばよかったのに。


感染に気づいていない人のほうが多いといわれていますので、わかった人だけ騒ぐ意味がないことも施設や責任者・担当者が考えなければいけないことです。
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